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21:職場を召喚してみよう

「……召喚のレベルも上げれば、ダンジョンのレベルが上がるかしら。これを機に必要なものをまとめて召喚をしてしまいましょう。防犯グッズとか撃退用具とか」


 前の世界の武器があれば、少々過激だけれど馬や蛇をやっつけられるかも……と思ったら、チリが身を乗り出してきた。


「ダメですよ、モエギ様。前世で実際に見たことのない物体は呼び出せません。精米機やら何やらは、以前モエギ様のお祖父様やお祖母様宅で見たことがあるから呼び出せたのです。テレビや映画やネットなどで見たものはダメですよ?」

「毎回思うけど、あなた、怖いくらいに私の情報を知っているわね。じゃあ……前世のトラップや、武器は呼び出せないということ?」

「ええ、呼び出せません。直に目にしたものでないと」


 保険として平原側にコンクリート壁を設置しようにも、相手が天馬なので効き目がないという。そして、避難シェルター系も現物を見たことがないという……


「そうなの、困ったわね。最悪、車を呼び出して逃げる他ないのかも。ん? 実際目にしたものなら、何でも呼び出せるの? 建物とかも?」

「そうですよ、モエギ様。しかし、記憶があやふやだと失敗する恐れがあるので、きちんと思い出せるものを呼び出してくださいね」

「それなら、外に家を建てたりも出来るわね。洞窟の入口だけでも塞いじゃいましょう」


 整備の際に入口も綺麗になり、ものを置きやすい形になっていた。

 その手前に、自分の働いていたカフェの入っている建物を呼び出してみる。仕事場の建物なら、内観も外観も覚えているので大丈夫だろうと思ったのだ。

 ちなみに、こちらで召喚を行っても、複製されたものが来るので日本の建物に影響はないようだ。


「あれ、スマホ画面に店の絵とダンジョンの絵が出ているわね」

「家など大きなものは、マップ機能で設置場所を選べるようになったのです」

「そうなのね。それじゃあ……」


 カフェの裏口が洞窟の入口に繋がるようにスマホのレイアウトをいじって設置した。

 スマホのマップ機能は、かなり便利である。


「じゃーん! いい感じに建物が設置できたわっ」


 このカフェ、キッチンの設備がかなり整っている。これは、料理が楽しくなりそうだ。


(収穫できる野菜の種類は限られている上に、調味料がなくなりそうだけれど……ん?)


 ふと目についたのは、キッチンの片隅にある米袋だ。他の場所にも、常温保存のタマネギやニンジン、ジャガイモなどが置かれていたり、飲料水やコーヒーのペットボトルが置かれていたりする。

 いつも、ストックとして置いてあったものだ。


(こ、これは……カフェの中身も、そのまま来ちゃった? 私の記憶にある光景だから?)


 棚の中には調味料やパンもそろっており、冷蔵庫を開けてみると他にも野菜や果物、牛乳などが入っている。いつもストックしてあるので、冷凍庫もバリエーション豊かだ。


(うほーっ! これは、いい感じ!)


 期せずして、新しい食材をゲットできてしまった。ラッキーである。今日は豪華な食事が作れそうだ。

 残りの呼び出しで、住んでいたマンションの平面駐車場と近所のスーパーを呼び出してみる。

 これで、日用品類も、しばらくなんとかなりそうだ……と思ったら、思いの外抜けがあった。


(なるほど。失敗するって、こういうことなのね)


 今回の例で言えば、三階建てフロアのほぼ全部がらんどうだ。

 スーパーの二階には衣類が置いてあったはずなのだが、丸々空白地帯になっている。

 老人向けの服が多かったので、あまり行っておらず、馴染みが薄かったせいだろう。バックヤードも、もちろん空白だった。意外と見ていない場所があったみたいだ。

 よく覚えている一階の入口付近と、三階の日用品コーナーの一部だけは忠実に再現されていた。


(しっかり見ていない場所は、再現できないから空白になるわけね)


 召喚:レベル5(三回限り、前世にあったもの(無機物)を一つ呼び寄せることができる。体力10・気力20消費する)


 ホームセンターの電動ノコギリや釘打ち機でも呼んでみようかと思ったが、異世界の魔法を使える相手には効かないだろう。


(混ぜるな危険の洗剤類で毒ガスを発生させるのは微妙よねえ。ハンマー、シャベル、鎌、鉈、斧……軽いものでないと扱える気がしないわ)


 なるべくなら物騒なことはしたくないし、武器を持ったところで素人がモンスターに勝てるはずがないのでは……と気付いた。

 なので、とりあえずホームセンターを丸ごと呼んでみる。空白地帯が多いが、使えるものが多少はあるはずだ。

 平面駐車場には、軽トラと軽自動車が一台ずつ置かれている。

 チリ曰く、異世界では車の鍵がなくても乗れるとのこと。ただし、それは他人にも乗られる恐れがあるということらしい。ガソリンは、もちろん無限だった。


(というか、召喚ってまだまだ使えそうね。早くダンジョンのレベルを上げて結界を使えるようにしてしまいましょう)


 防犯カメラやドローンなどを呼んでみる。

 カルロ用のスマホも準備しようかと思ったが、チリが「スマホは創世神様の恩恵なので、モエギ様以外は使えません」と説明したため断念した。


「ねえ、召喚って……この先も色々呼び出せるのよね?」

「そうですねえ、創世神様の気が変わらないうちは」

「それは良かったわ」


 とりあえず、私はレベル上げのために出来ることを片っ端からやっていった。


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