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17「人海戦術で宝探し」

「十三、十四、十五人か。――あとの二人は?」


 人差し指でタヌキ耳を数えたあと、オリバーがラッセルの耳元で声を張ると、ラッセルもオリバーの耳元で大声を出して答える。


「一人は夜勤、もう一人は受験勉強」

「あぁ、そう。それは、そっちを優先しなきゃ駄目だな」

 

 カーテンの隙間から夕陽が差し込む明るく開放感のある広い部屋の中には、事務所員の他に、年齢も性別もバラバラながら、一様にタヌキ耳をした十五人の青少年たちが一堂に会している。その誰もが大人しく寛いでいるわけではなく、ジャッキーと一緒になってはしゃぎ回ったり、メアリーに次々と質問を投げかけたりと、部屋の中は騒々しい有様になっている。

 そこへ、ミカン箱程度の大きさの小振りな段ボールを抱えたオオカミ耳の女が姿を現し、その箱の角でオリバーの背中を突きながら声を掛ける。


「いやに賑やかだけど、託児所でも開いたのかい? ――ご所望の品だ」

「似たようなものだけど、俺に保育士は務まらねぇよ。――サンキュー。これで全部か?」


 振り返ったオリバーが段ボールを受け取って足元に置くと、女は、廊下を指差しながら言う。そのベクトルの先にある開いた扉の向こうでは、ジョージが爽やかな笑顔を浮かべながら台車の側に立っているのが見える。台車の上には、女が持ってきた箱と同じ箱が、十五個ほど積み上げられている。それを見たオリバーは、思わず大きく息を吐く。

 

「ハァー。すごい量だな」

「怖気づいたかい?」

「まさか。やりがいを感じて、燃えてきたところだ」

「なら、良い。言っておくけど、凶悪犯罪者のプロファイルは、本来は禁帯出資料なの。明朝までに返しなさい」

「協力してくれないのか?」

「配達料を取るわよ?」

「運送、ご苦労さまです。どうぞ、ゆっくりお休みください」

「まったく。犯人を割り出せなかったら、良い機会だから探偵を辞めなさい」

「辞めて、どうするんだ?」

「さぁ。手始めに、ベビーシッターのアルバイトでもすれば? 私は、これで帰るから」

「おつかれさま。夜道は気を付けろよ、お嬢さん」

「私を襲うような野郎は、何人だろうと容赦なく返り討ちよ。お邪魔しました」


 そう言って、女は勝気に振舞いながら部屋をあとにし、途中でジョージに会釈を返してすれ違い、廊下の奥へと消えた。

 それを見送ったあと、オリバーは口の横に両手を当て、部屋中によく通るバリトンボイスを響き渡らせる。


「全員、ちゅーもーく! 今から、所長の俺が、諸君に指令を授ける」


 声に気付き、その場に居る全員が言動を止めてオリバーのほうを向くと、オリバーは、台車を指差しながら、胸を張って威厳たっぷりに説明する。


「諸君を集めたのは、他でもない。ここにあるプロファイルの山から、我が探偵事務所に火を放った不届き者を捜しだしてもらいたいからである。いいか? その人物の特徴は、白髪で燃えるような紅い色の瞳をしたオオカミ耳の男だ。繰り返す。白い髪で、紅い瞳の、オオカミ耳の男を捜すんだ。最も早く見つけた者には、あのジョージ氏が、特別な褒美を出すと言っている。事件捜査は一刻を争うものであるから、みな、心して取りかかるように。指令は以上だ。それでは、はじめ!」


 オリバーが号令を出すと、タヌキ耳の青少年たちは、おしくらまんじゅうしながら我先にと台車の周囲に群がり、一人一箱ずつ持って行く。

 その様子を見て、オリバーが満足げに大きく頷くと、足元にある箱を開け、中に入っている黒いファイルを順に検めはじめた。

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