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卓球部ですが何か  作者: ENTER
一章 天夢の野望
9/10

第九話 革命

革命といえばフランス革命ですよね…

王政から共和政への大きな転換点ですよね。

受験生!絶対出るから覚えとけよ!

しばらくの間、天夢は言葉を発することができなかった。自分の兄が引退した後に、そんなことが起きていたなんて。そして海人にそんな悲しい過去があったなんて。とても信じられなかった。


「アイツはそんなとてつもなく重いモン背負ってたのか…」 


「いや〜ずっと喋りっぱなしで疲れましたよ〜あっ、店員さん!チキンとコーラ追加でお願いします!」


「お前はどうしてそんな話した後でもそんなテンションでいられるんだよ…」


「さて、天夢君、どうしましょうか?この話を聞いて、何かいいアイディアは思いつきましたか?」


「…まだはっきりとしたプランは流石に浮かばん。でも…やっぱりアイツに何かガツンと言ってやらなきゃいけない、ってのだけはよく分かった。このままの部活のやり方を続けても、部長のためにも、桜東のためにもならない。絶対に…」


「…ん、もうこんな時間ですね…」


「じゃあここでお開きと行こうか。ご馳走様でした。」

「ご馳走様でした!」


 二人は夜道を自転車で駆け抜けていった。ライトアップされた桜が美しく二人を包み込んだ。


「じゃあ、また明日な。」


「はい!おやすみなさい!」


 (…明日…。明日だ…。決着をつけようぜ部長さん…)


 そして次の日はやってきた。

 

「えー今日やるのは、古典文法の基礎の基礎!動詞の活用です!大事ね〜ここ大事よ〜!さて、三年間忘れないように、3年分声に出して覚えちゃいましょう!まずは四段活用動詞!例えば行く、だね!どう変化するか、みんなで言うよ!せーの、か〜き〜く〜く〜け〜け〜

 いいね!もういっちょいこうか、せーの、か〜き〜…」


 天夢も一応真面目にこんなことをやりながら、考えていることは勿論あのことであった。どうしたら海人の心に響く決定的な一打を加えられるか。それは天夢の国語力が試されるところでもある。

(それにしてもこの女教員、やたらテンション高いんだよな…やっぱ昨日やって分かったけど、テンション高い女苦手なんだよな… いやいや、俺は何を考えてるんだ、しっかりしろ!)


 そうしてすべての授業を終え、掃除もして、卓球場の目の前までやってきた。一つ、二つ、深呼吸をする。


「おねがいします」


 強くドアノブを握りしめ、扉を開けて、いつものように、いや、いつもよりずっと凛と言葉を発した。

 視線を卓球場の中で滑らせ、その中に目標ターゲット=海人 の姿を捉えた。

 真っ直ぐ前を見据えながら、天夢はゆっくり、ゆっくり、歩き出した。


「部長。…話がある。」


 無言で天夢を見つめ返した海人は、いつも通り穏やかだったが、その瞳には言葉で言い表せない覚悟の色が映っていた。


「アンタの妹さんから聞いたぜ…俺はアンタがそんなに悲しい過去を背負ってるなんて知らなかった。そんなに重いモンを背負ってるなんて知らなかった。そこは悪いと思ってる。でも…アンタはそれで良い訳がないだろ?そんなに卓球が大好きで、強くかったアンタが。俺の兄貴みたいに、この桜東の卓球を変えようとしたアンタがっ!

 …だから…もう一度立ち上がってくれよ!俺たちに力を貸してくれよ!もう一度…アンタの叶えたかった夢の続きを、一緒に追いかけさせてくれねえか?」


 「…ふざ…ける…な…

 …ふざけるな!簡単に言いやがって!どんな思いで、この決断をしたと思ってるんだ!この…卓球部を…桜東の卓球部を潰したんだ!その全てを背負う覚悟をしたんだ!それを…そんなに簡単に変えられてたまるかよ!」


 いつも優しげな笑みを浮かべていた海人がまるで別人のようだった。しかし、内容とは裏腹に、か弱い子供の悲痛な叫びのようにも聞こえた。


「じゃあ聞くぜ部長…アンタは卓球が好きか?」


「っ…」


「部長、アンタは桜東の卓球部は好きか?」


「…やめ…ろ…」


「答えるまでもないよな?聞くまでもないよな?そんなの、この卓球場の中での姿を見てりゃ一目瞭然なんだよ!

 アンタは、桜東のために戦った。そして桜東を守ろうとした。とんでもない責任感を感じて、ここまでやってきたんだと思う。でも、もうその必要は無いんじゃないのか?自分の心にいつまでも枷を付け続けなくても、いいんじゃないのか…?」


 卓球場のなかに、ほんの数秒、沈黙が走る。しかし、天夢には、永遠のものに感じられた。海人のなかに封じ込められていた暗く冷たい闇をはっきりと感じた。飲み込まれてしまいそうだった。しかし、これを受け止められなければ、海人の前に立つ資格はないと思った。

 闇の中に、うずくまる海人がいた。泥のような闇を掻き分け、進んでいく。海人の中には一欠片の光があった。それに手を伸ばして、伸ばして、伸ばして、伸ばして…

 触れた瞬間、世界は光に包まれた。意識は現実世界に戻ってきていた。そして海人が口を開くのが見えた。


「ずっと辛かった…苦しかった…逃げ出したかった…ただ何も考えずに卓球していたかった…普通に大会に出て…仲間と一緒に頑張りたかった…でも、自分はそれが許されないと思っていた…お前は…許してくれるか…?俺の過去を…」


「何を許せっていうんだ!最初ハナっからお前は何も悪いことなんかしてねぇっ!しいていうなら勝手に罪悪感を感じてかってに自分の殻に閉じこもってたことくらいだ!お前は…お前はっ!、卓球、したいんだろ!?」


「…っ……ふっ…ふぅ…

 そうだな…君の言う通りだな…

 …お前ら…それでもいいか?」


 海人は先輩たち―恐らく三年生―に向けてこう言った。

 三年生達は、黙ってうなずいた。三年間、海人の姿を見てきたからこそ、余計な言葉は必要なかった。


「大和…天夢君…だったな。君には感謝するよ。では、頑張ってくれ、期待してるよ」 


「ああ、一緒に頼むぜ部長!」


「いや、そういうわけにもいかないんだ」


「えっ?おいおい、冗談はやめてくれよ!あんだけ泣きっ面晒して、まだ抵抗する気か?」


「違うんだ…俺たちの代はもう、大会には出られないんだ…」


「えっ?…なんで…?」


「もう、地区大会の締切は、過ぎてしまっているんだ。まさか出ることになるとは思ってなかったからな…だから、俺たちの代は、大会には出ない。でも、その日までは部活をするよ。そして君たちをみっちり鍛えてやろう。」


「そうか…わかった…。先輩たちの意志は、俺らが継がせてもらう。ガッツリ頼むぜ部長!」


 そういって、固く握手を交わした。

 革命は、やっと始まったのだ。

 


さあ!これでよーやっとまともに卓球してもらえますね!ぶっちゃけ、卓球してるとこを言葉で説明するのはめっちゃ面倒くさいです!面倒と言うか、「伝わんのか…?コレで…」という疑心暗鬼に陥ってしまって辛いです。でも…伝えたいんじゃあ〜

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