第1章4話迫り来る火の玉
俺は必死で逃げていた。前へ、前へと必死で。
俺の頭のすぐ横に、拳大の火の玉が飛んで来て、耳元の髪をチリチリと焦がし、爆音とともに通り過ぎて言った。
なぜこんなことになったのか。時間はわずか数十分前にさかのぼる。
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一回戦目を余裕のよっちゃんでクリアした俺は親友、寺内浩介の試合を見ていた。
浩介の戦っている相手は、水谷 凛。確か職業は消防士だ。この職業は、使用者本人に強靭な肉体と、底なしのスタミナを与え、放水の能力を与える。俺の罠師とじゃ雲泥の差だ。
そんな中でも浩介は頑張った。迫り来る水谷の拳を即席の小型ビルを作り防ぎ。放水も防いだ。
だがこれではジリ貧だ。そのうち浩介の黒力は尽きてあっというまにKOされてしまう。如何する浩介。
「あなたは頑張ったわ、浩介くん。だからとっとと諦めて私の拳のサビとなりなさい。」
「ふっふ、何を言っているのかな?お前はもう俺の手のひらの上にいる。諦めるのはお前の方だ!」
浩介、そんな立派なこと言うようになって、俺は嬉しいよ。
「何言って…」
「コウスケニュータウンシステム起動!」
浩介がそう言った直後、水谷の周りに大小様々なビルが立ち並んだ。それは浩介が水谷の放水を防いだそれとは明らかに作りが違い、頑丈そうなものだった。
突然の出来事に一瞬戸惑ったように見えた水谷だったが、すぐ、落ち着きを取りもどした。
「こんなもの、壊せばいいだけの話じゃない。」
浩介が叫んだ。
「壊せるならな!」
「なっ!」
水谷の右ストレートが弾かれた。水谷はそのまま、左ストレート、頭突き、アッパーと叩き込んでいく。
しかし、浩介が作り出したビル郡には、傷一つつかなかった。
「仕上げだ。」
浩介の言葉とともに、ビル群に亀裂が入った。その亀裂はどんどんと、大きさを広げて、崩れた。
「きゃーー、死ぬ、死ぬから 、ぎょー&&)¥:¥:!,&.;¥;zj」
猛烈にかわいそう。ただひたすらにかわいそう。
浩介の作戦、まじえぐすぎ。
少しして、瓦礫の中から水谷が救出された。見るも無残なひどい姿に。
浩介まじ鬼。
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1回戦目の勝利者が集う第2戦目。
俺の対戦相手は春風みどり、火の玉を作り出す職業。
放火魔の使用者だ。
まぁ、俺のパーヘェクトプランがあれば余裕っしょ。
ゴンザレスの時は挨拶があったが、今回は挨拶がなかった。当然か、なんかめっちゃ睨まれてたし。
「第2回戦目、富沢悠馬対春風みどり、勝負、開始!」
先生からの号令とともに、勝負が始まった。
もう戦い方はバレている。なら声を出して狙いを正確にしたほうがいい。
「生成!落とし…なぁわ!」
突然巨大な火の玉が飛んで来た。俺の顔に向かって。
びびって尻餅をつかねば俺の顔はとっくに黒焦げだ。
次々と、火の玉が飛んでくる。
落とし穴を生成する間も無く火の玉が飛んでくる。
やばい、死ぬ。
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そして、今に至る。現在も、火の玉が凄まじい速度で飛んでくる。当たってってないのが奇跡なレベルだ。
でもこのままだったら絶対当たる。
如何しよう、勝てる気がしない。
続く