第1章1話 罠師の平穏は突然崩れ去る
この世界には黒力というものが存在する。黒力とは現実的に不可能なこともを行使する力のことを言う。
黒力は60年前、シゲノイナバが新たなエネルギーとして地球に取り込んだダークマターの恩恵の上に成り立っている。
シゲノイナバが構築したDシステム、それは人間が黒力を効率よく活用できるようにしたものである。
黒力にはいくつかの特徴がある。
1.黒力は種族ごとに行使できる力が違う。
2.人間はそれぞれ個人の能力を持ち合わせている。
3.黒力は光系統の能力が、とても少ない
などだ。
光系統が少ないのはダークマターが暗黒物質と言われているかららしい。
と、いつかの授業で先生が言っていた。
俺の名前は富沢悠馬。職業は罠師である。
この世界でいう職業は黒力を自分にあった形にDシステムが改良したものをいう。
黒力は、一人一人持つ量に違いがあり、自分の限界以上に使ってしまうと、何かが起こると言われている。何かはわからない
職業には戦闘系と、非戦闘系があり、非戦闘系は商人をしたり、農業をしたりして生活をしている。
戦闘系はと言うと、俺が今通っているような学校、オルモード学院に通い戦闘系技術を磨く。そしてゆくゆくは人間に害をなす生物を殺す仕事、救出者になり、生活をしていく。
でも俺はそんな者にはなりたくない。
だって怖いじゃん?危険じゃん?めんどくさいじゃん!
しかも俺の職業は罠師だよ?無理じゃん!絶対外れ職業じゃん!ほんとやだわ。どうせなら勇者とか魔王とかかっこ強い奴が良かった。
「はーー」
気づいたらため息が出ていた。
「おい悠馬、どうしたよ?」
通路を挟んで隣の席の学院一の大親友と俺は思っている友人、寺内浩介だ。職業は建築者で、ノリのいい奴だ。
浩介の職業も俺と同じでそこまで戦闘向けじゃない。建築者なんだから建築の仕事をしていればいいのに、なんでこんなところに来たのか、ほんと不思議だ。
「おーい、悠馬くーん、聞いてますかー?」
「んだよ、聞いてるよ」
「お前落ち着いてるな、いつもだったらこんな話しされたらギャーギャー騒ぐくせに」
「は?話ってなんだよ?」
「いや、お前授業聞いてなかったの?」
ちょっとイラッとしたけど仕方ないここはスマートに冷静に聞き出そう
「ゴメンね、浩介くん、僕としたことが、うっかりしてて、教えてくれると助かるな?キラッ」
低い感じのイケボで言ってやった。
「え、ちょっと真面目にキモいんですけど、近寄らないでいたただけます?」
「ちょっ、いやごめんって。ね、だからその本気で引いた顔やめて」
そんなふざけた言い合いをしていると、猿顔先生がなんか言っていた。
「えー、では大事なことなのでもう一度いいます。突然ですが次の日曜日にクラスで戦闘試験を行います。この試験で合格でできなかったものは、実質的な留年という形になり、卒業できません。各自戦闘の訓練をおこなっておくように。以上。解散!」
生徒達が授業中の張り詰めた空気から解放されたかのように、教室にざわめきを作り出していく。
そんな中俺は、ただただ呆然と前を向き、迫り来る試験と、走馬灯のように目の前を通り過ぎる、自分がクラスメイトにフルボッコされている公開をたっぷり30秒間程眺め続けた後、呟いた。
「ヤバイ!猛烈にヤバイ!」
心配しに見に来た浩介が来るまで、悠馬は一人机に頭を突っ伏して、そう呟いていた。