その1
思い返せば、中学一年生のときがクラスで最高に浮いていた。
無口で不愛想、つり上がった目が怖いなんて陰口は耳にタコができるほど聞いた。
担任の渡辺先生は何故か必要以上に私を指して、答えられなければあからさまに落胆してみせた。ただ黙って授業を聞いていただけなのに小馬鹿にされているようでやり辛いと先生同士が話しているのを耳にしたときはさすがに泣いた。
一匹狼を気取っているわけでも、一人が好きなわけでもない。
ただ単に内気で恥ずかしがりやな性格に、運悪く見た目のぶっきらぼうさが加わっただけで、こんなにも疎外感を覚えるものなのかと家に帰っては毎晩さめざめ泣いた。
入学して二週間が過ぎようかという頃だった。
小学校卒業と同時に住み慣れた地を離れ、父に連れられるように新しい土地へと越して来た私はいつも以上にナーバスになっていたのだと思う。
けれど、少なからず期待を抱いて始まった学校生活は私をどん底に突き落とした。
元来、人から好かれる人間ではなかった。
どちらかといえば、陰でひっそりと縮こまり、輪になって遊ぶ同世代の女の子達を羨ましい気持ちで見ているような内向的な子供だった。
顔が怖いという理由でペアになるのを嫌がられ、人間だけでなく動物ですら寄り付かなかった。
唯一の癒しは、ぬいぐるみを集めることだった。この顔で、この年で、と自分を卑下する言葉はとめどなく溢れるが、こればかりは止められなかった。
特に、クマのぬいぐるみが大好きで、小さかった頃、母親とその愛人に連れられ、デパートの屋上で開かれていた英国フェアという名の外国要素のあるものをしっちゃかめっちゃかに揃えた催事場に連れて行って貰ったことがあった。
そこで柱の陰に隠れるように飾られていたクマのぬいぐるみに一目惚れし、ことあるごとに口酸っぱく「パパと呼びなさい」と言われていた謎の男に精一杯の媚びを売って、買って貰ったテディベアには“オスカー”という名をつけて、これまであらゆる愛情を注ぎ続けてきた。
オスカーは私にとって、この世でたった一人の友人であり、何でも話せる聞き上手の相棒で、ときに母恋しさを紛らわせてくれる存在だった。
一年生の間は頑張って耐えた。けれど、二年生になったとき、事件が起きた。
その日、朝起きて一番に見たオスカーの顔がいつもと違うことに気付いた。二つの愛らしいビー玉みたいな緑色の目の片っぽがずれて、奥から糸が飛び出ているのが見えた。
「オスカー!」
私の絶叫が家中に響いた。誰も家にいないので構いやしない。父はまた泊まりで会社にいるのだ。こんなとき、頼れるのは自分しかいないと叱咤して携帯を引っ掴み、震える指先を画面にこすりつけた。情報をスライドしていき、ぬいぐるみドクターなるものが偶然、最寄り駅にあることを知った。
「大丈夫よ、オスカー。授業が終わったら、この先生のところに行ってすぐに直してあげるから」
私は教科書の隙間にオスカーを詰めると、いつもより重い鞄を肩にかけた。