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Bloody Rose 第一幕 その1  作者: Shran Andria
4/4

第一幕完

瑠美が加ったことで、プロジェクトは捗っていった。

しかし、弥華絵は、一抹の不安を持つ。

そんななか、思わぬ事件が、彼らを妨げる。

都内のあるマンションの一室の灯りは、決って4:30AMに点灯する。

そして、『キャアー』恵比寿 理奈が、自分の顔を鏡で見てあげる声である。

理奈は、オペラ食品のOLであって、毎週の合コンを欠かさない。

何故、声をあげるのか?

それは、スッピンの彼女は何も描かれていないマネキンの顔にそっくりだからだ。

小学校から高校までその能面のように無表情な顔は彼女を大人しい人物と決めつけ、いたって地味な学生生活を送っていた。

あだ名は、ぬるりひょん、能の元形等と呼ばれていた。

しかし、大学に通いはじめ百貨店を歩いていた彼女に転機が、訪れた。

言われるままに、コスメコーナーの椅子に座らされた彼女は、約1時間を経て、別人に生まれ変わった。

『かわいい~アイドルみたい。』

店員にそう言われ、理奈もそんな気になってきた。

暫くコスメコーナーに通い続け、大量の商品を購入して、自分の顔をかき上げるのが、日課となっていった。やがて、ほとんどない眉毛や、小さい目は、眉の位置も自由に、目の大きさもまわりの書きようで大きくも、寄せることも全て自由となった。小さな口も、ある日は広く塗ったり、細く塗ったり、キャンバスに一から作成できる顔となった。

就職後は、それを生かし、合コンクイーンの名を欲しいままにした。

当初、朝の驚き声に近隣の人は何事かと気をもんだが、今は、だれも気にせず、いや恐らく、ネコかカラスの泣き声と思っているのだろう。何事もないかのように寝続けるようになっていた。

年も押し迫った、ある金曜日、彼女は、朝上げる以上の声をあげることになる。


12月28日木曜日の夜

オペラ食品研究室では、保世と弥華絵、そして2週間前からデータ処理に加わった瑠美の3人で、遅くまで仕事が続いていた。

保世が、連日遅いから、今日は21:00で引き上げようと提案した。

疲れていた弥華絵も頷いた。

しかし、瑠美は、もう少しやってしまいたいと、2人を先に帰るよう勧めた。

保世が、『瑠美さんが来てくれて、とても仕事が捗っています。今日は、ゆっくり夕食でもとりましょう。』

そう言う保世に瑠美は席を立って近づき、胸にしていたバラの飾りを外して、保世の胸ポケットに入れた。

その上から彼女の左手をポケットの中の飾りに押し付け、『これは私。あなたを愛する証。』と顔を近づけ、保世の目をじっくりと見た。

弥華絵は、何をしているのだろうと遠くからうかがうが、異様な雰囲気以外何もわからなかった。

保世は、一度放心状態になったが、気を取り直し、『何を・.言ってるんだ。瑠美さん』といって、彼女の手を引き離した。しかし、今まで経験したことのない動揺は続いた。

瑠美は、『私は、あと2時間程できりのいいとこまで、いくので、お二人でどうぞ食事に行って下さい。ねっ弥華絵さん。』

弥華絵は、ゾクッとしたが、『そう。では、甘えることにしますわ』

と言って、保世の手を引くように部屋を出た。


保世と弥華絵が、部屋から出ていくのを見届けて、再びパソコンに向った。


保世と弥華絵は、会社から程近いイタリアンバルで肉をついばみながらワインを流しこんでいった。

暫く会話がなかったが、弥華絵から話はじめた。『瑠美さんて、優秀よね。単なるキーパンチャーではない。必ずデータの並べ方が完璧で、この仕事の内容をかなり把握していると思うの。最初は、とてもありがたいと思っていたけど、なんだか怪しいくらい。まさか、同業・.・』保世がさえぎる『そんなことないさ。君がはじめに指南しただろ。あとは、もともと優秀なんだよ。それを疑ったりしたらいけないよ』

弥華絵も、『それは、そう思いたいは。でも、昨日の第3過程のⅩ-Yの並べ方、あれは、完全に方向性を示唆していたは。偶然じゃない。私は、そのあと、考える所などなかったもの。』

『弥華絵さん、仕事取られると思って心配してるの?』

『そんなことないわよ。でもなんだか不思議な人・・・。』

『瑠美さんは、そんな人じゃないよ。熱心なだけだよ。』

『あら、私が熱心じゃないみたいに聞こえるわ』

『そんなこと言ってないよ。弥華絵さんも熱心だよ。』

『も?瑠美さん中心で喋ってる?たまに、貴方に異常に接近するし。』

『仕事上だよ。』

『でも、少し気をつけた方がいぃと思うの。何かあるような・・・・。』

『いい加減にしろよ!瑠美は、そんなんじゃないよ。』

『私は、弥華絵さんで、彼女は瑠美なの?保世さん?』

いつもおしとやかな弥華絵が、突っかかってくるので、保世は、一歩引いたが、自分の心の中に留美がいることを感じていた。

雰囲気最悪のまま、しめのパスタを食べた。

弥華絵は、カルボナーラ、トリュフスライス。保世は、ペペロンチーノだった。


夜は明け、問題の29日の金曜日はやってきた。


総務室には、万全のアートメークをした理奈が女子3人を集めて、合コンの指示をしていた。

理奈が大声で『しおり休みなの?風邪ひいたって。一人足りなくなるじゃない。どうするのよ~。ミサ!誰か連れてきなさい。』『誰かったて、そんなに都合いい人いないわよ~。』理奈は、激怒して、『研究室におねいさんいるでしょ、地味のでいいから一人連れてきなさ~い。』ミサは困った顔をして『え~、あそこの人真面目で、こわいんだもの~。話、通じないし~。理奈さん、いや理奈様、行って下さいよ~。』

『仕方ないわね!』そう言って理奈は保世の部屋へ向って行った。


保世の部屋では、中間のまとめをしていた。瑠美が、いろいろ指摘していくなか、確かに試験結果が、ストーリーにのってまとまっていく。

そこに、理奈が駆けつけ、マシンガントークで、弥華絵に話しかける。『きょうね、サイバーマルコロ社との合コンなのよ、あそこ最近伸びててね、新進気鋭の若い社長もくるらしいの。いこ、弥華絵、いこいこ、弥華絵~。あなたも彼氏いないんでしょ。ダメよこんな堅い仕事してたら、柔らか~いソフトの仕事の人と付き合わなきゃ。ITよ!IT、IT、IT、愛の手ほどきITよ~。

今宵、手ほどきよ~』

とめどない理奈に割って入ったのは、瑠美だった。『うるさいわね~仕事の邪魔だから失せな!』

理奈は、瑠美を一瞥し、『誰?あんた。あ~こないだ入った新人さん。新人さんにしては、口の聞き方がおませね。しゃべり方を教えてあげるゎ!』

パシィ。理奈は、瑠美の頬を平手打ちしたが、瑠美は、微動だにしない。

そして、瑠美は反射的に理奈の頬を平手打ちする。

バッシィ。咄嗟のことに理奈はよろけ、倒れこむ。その時倒れ方が悪く頬を机の角で切ってしまい、血が出はじめてしまった。

自分の血をみた理奈は錯乱し、『ハーハー血~血よ~私の頬が傷ものよ~。死ぬかも死ぬかも。病院、病院よんで~。』騒ぎは広がり、人だかりとなる。救急車が手配され、大袈裟にベッドで運ばれるころには、いくらか理奈も正気を取り戻し、『傷害よ、殺人未遂よ、訴えるから覚悟しなさい。』

と叫びながら運びだされた。


総務部長が来て、事情を聞く。

『理奈君、訴えるとか言ってたぞ。それはまずい。その彼女を処分して、なんとかおさえろ。保世、お前の責任だからな』

保世が、『手を出したのは理奈さんの方なんですよ。』と言うが、

『そんなことはどうでもいい。これ以上騒ぎにするな、彼女を処罰すればいい。辞職させるか、出勤停止でもいいから、処分しろ。お前の責任だからな。』


保世は、瑠美を2週間の出勤停止、自らを3ヶ月間の海外支部への出向として書類を提出した。


保世は、弥華絵と瑠美を呼び海外からでもリモートで仕事は続けることができる。もう、遅らせることは出来ない。


そう言って社を去った。


後に、瑠美への処分が甘いとして、保世の出向は6ヶ月、主任を降格する処置がとられた。



第一幕完 第ニ幕に続く。



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