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Bloody Rose 第一幕 その1  作者: Shran Andria
3/4

動きはじめた運命

桜木に会い、ある提案をする瑠美。果たしてその狙いは?

《Shranの小説》

Bloody Rose 第一幕 その3


向かいあう2人。

はじめに口をきったのは桜木だった。

『驚きましたよ。岡井からの電話で、いきなりベストロンのあなたが喋りはじめたのには。そして、いきなり、オペラ食品の株を大量にお持ちですねと言われた時には・・・。』

瑠美は、少しうつ向き、ハミカムふりをしたあと、顔を上げた。

『お恥ずかしいわ。私、思いたったら直ぐに行動しないと気がすまない性分なんです。』

そう言って、桜木の目を見つめた。

『私がなぜ、オペラの株を買い付けているかご存じですか?』

瑠美は、顔をキュッとこわばらせた。

『今、進んでいる、ナチュラル添加物の件をご存じなのでしょ。』

彼らの前には、前菜のプレートが並ぶ。

桜木は、料理を一瞥した。

『ワインでもいかがですか?私は、午後も会議があるので、ノンアルにしておきますが、もし、よろしければ。』

瑠美は、少し微笑み、

『はい。私はこのあと、社に戻る予定はありませんので。』

桜木は、店の者に耳打ちをした。

そして、瑠美の方を見て、話しを戻した。

『おそらく、オペラは開発後、特許で抑えてくるでしょう。』

瑠美は再びビジネスフェースに戻したあと。

『特許公開で、オペラの株価は3倍にあがる。それまでに50%に近い額にあげておくのね。』

やがて、瑠美の前にはグラスの白ワインが、桜木の前には、ノンアルが置かれる。

桜木は、瑠美の質問にはこたえず、

『食べながら話しましょう。ここの料理は、結構いけるんですよ。貴女を見て好みをあてます。乾杯しましょう。』

2人は乾杯したあと、グラスを口にした。瑠美は、一口のんだあと、

『シャルドネね。キリッとしてて私好み。流石ですわね』

桜木は、満足そうに

『お気に召しましたか。私は人を見る目があると思っています。岡井を採用したのも大当りだった。』

瑠美は、顔色ひとつかえず心の中でこう言った。「あの、腑抜けをかうななんて、浅はかな男」

しかし、それとは裏腹に、

『そうですわね。彼の企画があたったと聞いています。素敵な桜木さん。』

桜木は得意気に、

『ははは、タイミングよく売却すれば多くの利益があがる。

ところで、私はクララという馬を飼っています。趣味ですが、この馬を見た時も素晴らしいことを直感した。』

話しの飛ぶ男だなと思いつつも、

『クララですか?素晴らしいお名前ね。』

桜木は、ノンアルしか飲んでいないのに自分に陶酔したように話し続ける。

『以前に’アルプスの少女ハイジ’という映像資料を見たことがある。そこにクララという少女が出てきた。髪の長い、美しいブロンズの面長の清楚な少女だった。私は、彼女に惚れこんだ。それをイメージできる馬なんです。』

あきれかえった瑠美は、心の中でさけぶ、

「アニオタロリ男の妄想ね。下らない。」

しかし、その素振りもなく、瑠美は、桜木に顔を近づける。

『まあ。素敵なお話。それで、黒髪のショート。丸顔の女性はお嫌い?』

桜木は、近づけられた瑠美の美しい顔にビクッとして、

『いっいや。美しい。私が会ってきた中で最も魅力的な女性だ。パッパスタは、シェフのお任せだけど、きっと気に入るよ。』

彼らの目の前にクリームパスタが並び、白トリュフが削り落とされていく。

瑠美は、口に入れて味わったあと。

『濃厚で、いい薫り。アルバの白トリュフかしら?』

桜木は、瑠美のアップに動揺が落ち着かぬままに、

『あっあ~。きっとそうだよ。イタリアの白トリュフ祭りに一度行ったことがある。あれくらい量がないとね。ケチッたら駄目だよね。』

瑠美は、徐々に自分のペースになってきたと感じ、本題に入った。

『もちろん、株価があがったとこで売ってもいいけど、恐らく調味料業界を変えることになると思いません?パテントが確定して、安全性を謳って宣伝すれば、外食産業は、こぞってオペラ食品のものを作うわ。いえ、消費者がそう望むはず。株価どころの話じゃないわよね。もちろん、桜木さんのことだから、そこまで、お考えよね。』

桜木は、ハッとしたが、落ち着きを装い、

『勿論だ。そこまで見抜かれているとは思わなかった。私も、食品業界に進出を考えていたのだよ。君は重要なパートナーだ。今、ベストロンからいくら報酬を貰っているんだ?その倍額出していい。うちに来てくれ。役職は、何でもつける。』

その申し出に、瑠美の返答は意外なものだった。

『私は、オペラ食品に潜りこみたいの。貴方ならできるでしょ♪』

桜木は、少し考え、

『う~ん。オペラか。社長とは繋がりはないが、あそこの役員に一人知りあいがいる。なんとかしよう。』

瑠美は畳みかけるように、

『第三研究所よ、データ処理の派遣でもなんでもいいわ。あそこの動向がわかるところにして。研究の進み具合、出願の時期、全て連絡するわ。』

明らかに産業スパイだ。桜木は、悪事に手を染めたことはない。しかし、このランチという短時間に桜木は、その身を瑠美に預けることになった。

『わかったよ、瑠美君。直ちに手配する。』

もはやクララではなく、瑠美に全ての心を奪われていた。

『桜木さん、貴方はもっと大きくなる人♪私は貴方を手伝うの♪それが幸せ♪』

そう言って、瑠美は、食事も途中に席をたった。

『桜木さん、一週間以内にお願いね♪時間はすぐにたつわよ♪時代は先取りするのよ♪』

残された桜木はただ心の中で「瑠美さん、瑠美さん。」そう、何度もつぶやいていた。


次の週の月曜日、オペラ食品のビルに入っていく里花瑠美の姿があった。


第一幕、その3完 第一幕最終回に続く。


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