36話 : だから、教えてくれ。
レオン「えっ!? 里の人にアッサムを会わせたの!?」
僕らは屋敷に戻り、レオンに起こったことをありのまま話した。
シュガー「あのままだとコレが手に入らなかっただろう? …レオン、君は何を考えている?」
レオン「…」
レオンは顔を下げ、何も話さない。暫しの沈黙が訪れた。痺れを切らしたのはミルクだった。
ミルク「…んーーもうっ! 何なのですか!?
レオンは味方じゃないのです!? 確かに、里の人の狂信ぶりには驚いたのですが、ただそれだけなのですよ?? 重要アイテムを手に入れられなかったらどうしてたのですか!?」
ルイボスに関する情報だからか、ミルクの怒り方は尋常じゃなかった。初めて聞く大きな声に僕は思わず肩を震わせた。
コジー「…はぁ。お前ら落ち着けって。…レオンも。黙ってないで教えてくれねぇか? ゆっくりで良い。お前が言った「助けて」って言葉、俺は嘘だとは思わなかった。こいつらもそう思ったからこそ、お前の言動が理解できねぇんだよ。だから、教えてくれ」
レオン「……アッサムに何もなかったから良かったけど。あの里は見て伝わった通り、神様という存在に酷く執着があるんだ。それに近いルイボスもそう。だから、その生まれ変わりであるアッサムにも危害が及ぶ危険があったんだ。里のはずれにお婆さんが一人住んでいるんだけど、あの人が一番危ない。選ばれた勇者が、その人の家から戻ってこなかったことが何回かあるんだよ……だから、アッサム達にはローブを着て行ってもらったんだ。話さなかったのは信じてもらえるか分からなかったから…信じてくれなかった人が過去にいたから。手記は手に入らなくても良いかなって……帰ってこられなくなるよりいいでしょ??…それに」
そこで一度区切ると、レオンはアッサムの方を見た。
レオン「アッサムも、ビックリすると思ったから…」
その言葉の意味を、僕は何となく理解した。だって、もう既に怖いと感じたのだから。
アッサム「……うん。ありがとう、レオン」
僕とレオンの会話が伝わらなかったらしいミルクが「どういうことなのです?」と口にした。大きな溜息をつき、コジーが話し出す。
コジー「アメジストでゴリラみたいな敵と初めて対峙したとき、アッサムが居なかったらシュガーは殺られてた。…そうだよな?」
コジーはシュガーへと視線をやる。シュガーは首を縦に振った。
コジー「それはつまり、アッサムがあの敵の情報が頭にあったってことだろ。けどよ、アッサムは「分からない」って言ったんだ。つまりアッサムの記憶じゃない誰かのもの。そんでアッサムはルイボスってやつの生まれ変わりときた。…ってことはよ、ルイボスの記憶がアッサムの中に眠ってるって考えるのが妥当だろ? そこにルイボス本人のもん突っ込んでみろ。引き金になって色々思い出しちまったら、アッサムは正気でいられんのかって話」
シュガー「ちょっと待て。青鬼の加護は【記憶】だろう?どうやったって思い出すじゃないか!」
「記憶については僕が補足するよ」とレオンが手を挙げた。
レオン「想像上の存在達の加護は特別なんだよ。チーム全員に影響するからこそ、それは身体的なダメージになってはいけないんだ。あくまで加護だからね。だから青鬼くんの加護も、アッサムが受け入れやすいようなキッカケで思い出していくはずだったんだ。…だけど他の情報は違う。術で強制的に悪夢を見せることも出来るでしょ? それをアイテムに仕掛けていれば、一気に思い出させられる。そうするとパニックになったりするから。…だからアイテム系は危ないと思ったんだ。僕も、全てのアイテムを把握しているわけじゃないからね」
「まぁ、アイテムだけじゃねーだろうけどな」とコジーはミルクを見た。そんなミルクは目を丸くしてコジーを見つめ返していた。
ミルク「ミルク、驚きです。アホそうなのに」
コジー「うるせぇ。っつか、社会人やってたら嫌でも身につくんだよ。周り見て、周りのご機嫌伺って、仲取り持って。色々やることがあんだよ!」
シュガー「嫌でも身につく…か……」
彼女の呟きは静かに落ちた。
【ルイボス ー英雄ー】
【アッサム ー村人ー】
【レオン ー??ー】
【かぐや姫 ー想像上の存在ー】
【コジー ー守護者ー】
【シュガー ー冒険者ー】
【ミルク ー召喚士ー】
【キューちゃん ードラゴンー】
【里の老婆 ー里の人ー】