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村人Aですが魔王を助けに行きます。  作者: ユキノシタ
『はじまりの村 ガーネット』
13/46

10話 : ……赤ずきん、心配をかけてごめんね。


僕たちはシュガーを探しながら祠まで戻った……が、シュガーは最後まで見つからなかった。



そう、最後まで…。





村長「おぉ、もう戻ったか。意外と早かったな」



アッサム「あのね、シュガーが見つからな、く…て……って、何でここにいるの!?」




中々 見つからなかったシュガーは、ずっと村長のところにいたらしい。何食わぬ顔で村長の後ろから現れた。




シュガー「遅かったな。声は取り戻せたか?」



アッサム「そう! 聞いてよ! シュガーだと思って声をかけたら動物の耳が生えててさ、僕、心臓が止まるかと思った……」



コジー「そうそう! そいつさ、爽やかに笑ったんだよ! もぉ〜怖かったのなんのって。おっさん ちびっちゃうかと思ったよ」




コジーの言葉に、シュガーが反応する。その顔はさっきの敵 顔負けの笑顔だった。




シュガー「何だ、コジー。随分と私に対して失礼じゃないか? 私だって笑うのだが?」



コジー「そりゃあ知って……ひっ!! あ、えと……いやぁ〜、とても素敵な笑顔でいらっしゃいますよ、お兄さん」



アッサム「えっ? シュガーってお姉さんじゃ……」



村長「ほほほ。相変わらず元気が良いな。ふむ……それで、何かを得て帰ってきたんだろう?」



村長の言葉に、僕はポッケに入れていた箱を取り出す。




アッサム「これ……敵を倒したら落ちてた」



シュガー「ドロップアイテムか。ウェアウルフの声……狼男の声って、まさか!」



アッサム「でも、開かなくて…」



赤ずきん「……っ! それ、狼さんの声がする!」




赤ずきんが箱に手を伸ばした。赤ずきんの指先が触れた瞬間、箱は光を放ちながらその口を開く。


中かから光る玉のような物が飛び出てくると、ゆっくりとウルの方へと向かい、そのままウルの喉元へと吸い込まれていった。




赤ずきん「……狼、さん…?」



ウル「……赤ずきん、心配をかけてごめんね」



アッサム/コジー/シュガー「…っ!?!?」




僕らは目の前の光景に息を呑んだ。だって狼が喋ったんだ、誰だって驚くだろう。村長はあまり驚いていないようで、僕らの反応を見て笑っている。きっと何度も見た光景なんだろう。


何度も見て、何度も勇者を見送って……それでも村長は救われていない。何度この世界が救われていたとしても、その一度だって村長は…。


僕は垂れ下がっていただけの腕に力を込めた。拳をつくり、力を込める。自分の決心を落とさないよう握りしめるように、ギュッと力を入れる。




アッサム「…ねぇ。あ、あのさ……ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」



ウル「そうだ、お礼が遅れてごめんね。僕の声を取り戻してくれてありがとう、アッサム。まさか君が選ばれた勇者になるなんて……少し驚いたよ。あ、それで聞きたいことって何かな?」



アッサム「う、うん。えっとね、村長たちみたいな ”想像上の存在” の傍にいる人達を助ける方法って知らない? ……だって、さっき村長は言ったよね。「そして幾度と“選ばれた勇者”がここを訪れた」って。それってずっとここにいるってことだよね? ずっと白雪ってお姫様を想って過ごしてるってことだよね? だから、僕は村長たちも助けたい」



ウル「…っ。そんなこと、初めて聞かれたな。……じゃあさ、逆に考えてみてよ。何百年に1度は助けてもらってるはずの村人は、なんで何も覚えていないんだろう」




ウルは僕を見ながら言った。隣では首を傾げている赤ずきんが、ウルの横顔を眺めている。



どういうこと? 赤ずきんも知らないの? ……でも、確かに親父から勇者の話を聞いただけで、村の人からは聞いたことがなかったな。




シュガー「つまりはあれか、村人たちの記憶のリセット。それは想像上の存在にも適用される、と」



コジー「でも何でそんなことすんだよ! 何回も記憶無くさなきゃなんないなんて、村人たちが可哀想じゃねーか!」



シュガー「はぁ…。よく考えろ。私たちがゲームをクリアしたとする。だが、何かしらの理由でもう一度初めからやり直すことがあるだろう? そのときの村人はどうだ」



コジー「どうだって……そりゃ最初からなんだし、最初と同じじゃないのか?」




シュガーとコジーの間で、僕には分からない会話が飛び交う。



……何だろう、この気持ち。仲間外れみたいで、何かちょっと寂しいな…。僕が村人じゃなかったら、本当の勇者だったら、2人の話も分かったのかな?



僕が勝手に落ち込んでいる間にも、周りの会話は進んでいく。




シュガー「そういうことだろう、これも。その対象が全てではない、ただそれだけだ。だが、それだとアッサムの質問の答えにはなっていないだろう」



ウル「うん、そうだね。でも ごめんね。僕が教えられるのはここまでなんだ。後は他の人に聞いてみてよ。僕らと同じ、“除外された者” にね」




【アッサム ー村人ー】


13歳 (♂)

酒屋をやっている父親 (ダニエル)と二人暮らし。

勇者に憧れている。

選ばれた勇者のようだ。

狩りが得意。

マジックバックは持ってない。

分厚い本を手に入れた。

薄い本を手に入れた。

『ウェアウルフの声』を手に入れた。



【ウル ー狼ー】

6歳くらい (♂)

村人に懐いている。

冒険者を襲う。


・声を取り戻した。



【コジー ーガーディアンー】


【シュガー ー冒険者ー】


【村長 ー狩人ー】


【赤ずきん ー想像上の存在ー】

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