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先行き不鮮明

ブックマークが凄い事になっています。

前代未聞なので凄く焦っています。

 

 さすがは酔っ払いとでも言うべきか、薬草の漬物でも平気で食っている面々。

 まあ、食べていればいくらかの回復の見込める草だからさ、少なくとも健康に悪くはないよ、仮想だけどさ。

 いわばアロエやゲンノショウコを漬物にしているようなものだし、苦くても薬だと思えばまだ……ナンテネ。


 そのうちに村長さんから賞状を渡される。

 よくよく見ると3位になっているんだけど、あの半端酒で3位ってどんだけ出場者が少ないんだよ。


「いや、確かにBランクではあったけどね、味わいが深いと言われてね、中々に好評だったよ」

「まだ中途半端なんだよな、あの酒」

「これからが楽しみだね」

「精米機の良いのが手に入らないと、ちょっと先に進めそうになくてな」

「ああそうそう、趣味で魔導具を作っている子でさ、リアルが宮大工だから手先が器用でね。その彼を誘致するから」

「魔導精米機とか? 」

「うん、そうそう。可能ではあると言っていたから、完成したら来るそうだよ」

「それと交換でどんな酒を要求されるやら」

「あはは、実はね、完成したらたんまり酒になると言っちゃってね」

「たんまりね」

「あはは、ごめんね、つい」


 そりゃ確かに魔力で動く精米機は欲しいけどさ、たんまりってどんな酒をどれだけ要求されるのかが少し怖い。

 それにしてもリアルの職業を知っているって言うのもかなり親しい間柄だと思うけど、いくら酒の席だからと言って他人に漏らすのはどうかな。

 仲間と思ってくれて、つい口が軽くなった可能性もあるけど、自分の情報も同様だと思えば、うっかり漏らしたくないと思う。


「この漬物、妙に苦くないか? 」

「この苦味が良いんだろうが。酒に合うぜ」

「いやそうじゃなくてだな、どっかで見た事のある野菜だと思ってな」

「そんな事より飲め飲め飲め」

「うっ、おっとっと……」


 あれ、意外と食っているな。


 よしよし、薬草の漬物ならまだまだあるぞ。

 そのうち薬酒にしようと思って漬けておいた品だけど、余りに苦くてエグいから使えないと思って放置していた品だ。

 食ってくれるのならこの際、全部出してやろうな。

 他にも使えない野草の塩漬けも出しておいてやろう。

 別に毒じゃないから心配は要らんが、やたら青臭かったり苦かったりして薬酒には使えないんだ。

 薬草は一度塩茹でにしてエグ味を抜いてやれば、良い漬物になりそうなんだけど、薬酒には使えない。

 いやはや、オリジナルレシピの薬酒の完成未だ先が見えずと言ったところだ。


 めざせ養○酒。


 ~☆~★~☆


 昨日は途中でログアウトしたけど、あいつらどんだけだよってぐらいにひたすら飲んでいたな。

 確かに在庫の中の程度の低い酒はあらかた出したけど、よくあんなに飲もうと思うな。

 おっと、お得意さんの家を通り過ぎるところだった。

 どうにもリアルが疎かになりがちで困るが、今は切り替えないと。


 お得意さんのクレーム処理も仕事のうちと、まずは愚痴をひたすら聞く。

 このお客さんの愚痴ってのもバカに出来ないもので、愚痴の中にさりげなく要望が混ざっている。

 つまりこんな服が欲しいとか、こんな服があれば良いのにとか、それらを掬い上げて後に生かすのも営業の仕事のうちだ。


 なんて上司が言っていたんだけど。


 とてもそう思えないのが何ともな。

 やれ子供が勉強しないだとか、夜更かしをするとか、どうにも服の話題が出ないじゃないかよ。

 あーあ、つまらない仕事だよな。

 それにしても何で親父は酒蔵閉めちまったんだろう。

 何度聞いても理由を言わないし。

 だからもう没交渉っぽくなっちまってよ。


「ちょっと、聞いているの? 」


 うお、やべぇやべぇ、仕事に集中しないと……


 ~☆~★~☆


 何時ものように雑事をこなしてログインするも、周囲がまた派手な事になっていた。

 酒の空き瓶が散乱し、漬物の壺がそこらに転がっていて、床に酒をこぼしたのか妙に酒臭い。

 それに割り箸が散乱して、でかい皿には何かの料理の食べ残しのような物体がある。

 おいおい、放置するなよな。

 この世界じゃ処分しないと普通に残るんだし、うっかり腐ったら掃除が大変だぞ。

 一体、どれだけの間の酒盛りだったのか、聞くのが怖いぐらいだな。


「うお、ここは? ああ、飲み会の会場か」


 ああ、ここでログアウトしたのか。

 確かにここはオレが暗黙で借りている場所だから誰が使っても構わんが、出先でログアウトするってのもちょっとな。


「どんだけ飲んでたんだよ」

「いやな、お前が落ちてからしばらくして終わりかけたんだけどな、料理を持って来てくれた奴を交えて再度盛り上がってな」

「そんなに好きならリアルで飲めば良いのによ」

「そんな金があるかよ。安酒ならいざ知らず、お前のような酒とか安くないんだからよ」

「それは迎え酒の催促か? ほれ」

「くっくっくっ、悪いな」


 やれやれ、好きならいくらでも飲めばいいさ。

 座り込んでチビチビ飲り出す野郎は放置して、日課のあれこれをやっていく。

 熟成酒もかなり良い感じになって来ているし、水耕栽培も良い感じになっている。

 でもなぁ、この田んぼだけど、どうにも立体にしたせいか、実験農場みたいな感じになっているんだ。

 早い話が緩やかなウォータースライダーのような、小砂利の田んぼが立体的にそこらを巡っているんだ。

 熟成酒と交換で土の魔術師に構築してもらったんだけど、時々上の人工ため池に注水の必要があるんだ。

 んでそこから少しずつ水が流れているから、いつも清浄な水が流れる水耕栽培になっている。

 もっともため池と言ってもバスタブ4つ分ぐらいの小さな物で、だから殆ど毎日水を入れてやらないといけないんだ。

 とは言うものの、外の時間で毎日なので、中ならもっと長持ちはする。

 近くの水源から引き、最初は揚水のあれこれを考えていたんだけど、動力が無いから断念し、仕方が無いから井戸のように桶で水を汲み上げる方式になったんだけど、これが地味に重労働になっている。

 魔法でパパッと水が出せれば良いんだけど、生憎とオレの水の魔法は飲み水対策でしかない。

 だからそんなに大量に出すにはMPが足りない事になる。

 いや、さすがにバスタブ1~2杯ぐらいは出るよ。

 だけど、他にもMPを使う用事……時送りを優先するから使えないだけだ。


 日課の重労働を終えた後、水稲とワサビに軽く時送りを使った後で休憩のついでに米の研磨をする。

 確かに研磨ってスキルは無いけど、手動での研磨は可能だ。

 でもなぁ、1升瓶に米を入れて棒で突くよりはましとは言え、今の手動精米機も手間なんだよな。

 もっとも、最初はその瓶と棒でやっていたんだ。

 そのうち手動の精米機を開発した人達が居て、やはり酒との交換で手に入れたんだ。

 今度の魔導精米機は酒がたんまりらしいけど、どの程度の酒をどれだけ渡せば良いのだろう。


 ゴリゴリ削っていると外が騒がしくなる。


 またぞろ酒の用事かと思っていたけど、馬の鳴き声が聞こえたりする。

 興味から外をチラリと見てみると、馬に乗った偉そうな人がお供を連れて騒いでいる。


「だから何度も言うけど、ここは新開拓村って事になっていて、税金とかそんなの関係無いんだよ」

「それはおぬしが移住した当初の話であろう。既に何軒か店がある以上、我らが国に属するもの。なれば当然、税の徴収はあるものと心得よ」

「そんな話は聞いてないよ」

「嫌なれば村の長の資格は取り消しとなろう」

「横暴だ。こんな馬鹿な話があるか」

「貴様、なんと無礼な。そこになおれ」

「やるってのかい? これでも僕は元冒険者。腕が無い訳じゃないんだよ」

「待て待て、双方共に引け。のう、長よ。おぬしがいかに実力があろうとも、抗えば国の兵士が相手になろう。それに勝てても国の敵は確実なれば、倒れるまで何度でも来る事になり、必然的にこの村は崩壊する事になろう。それでは双方共に損ではないか。税と言えども半分だけで良いのだ。全部取ろうなどとは言わぬ。だからここは引いてはくれぬか」

「五公五民で恩着せがましいな」

「何か言ったかの」

「あー、ひとまず村の者達と相談したい。出直してくれるかな」

「善き返事を期待しておるぞ」


 拙い事になったな。


 稼ぎが半分になるって事は、この暗黙で借りている家屋も返さなければならないかも知れない。

 今までは開拓地って事で村長さんの甲斐性で建てた家だったんだけど、国の土地に摩り替えられたら固定資産税だの何だのと余計な費用が掛かる。

 となれば税収と相殺で国に接収されかねない。

 今でさえ大した稼ぎもないけど税が無いから何とか暮らせると言っていたのに、半分も取られたらやっていけなくなる。

 折角の安住後もこれまでかも知れないけど、裏の田んぼはまた別だからな。

 村に隣接する個人の土地って事になっていて、所有者は村長さんではあるけど村とは別のはず。

 だからもし、村長さんがあの交渉を決裂させた場合、この田んぼの片隅の小屋住まいになるかも。

 そうなれば酒造りの小屋が無くなるって事だから、どのみちオレは出ていかないといけないか。

 まあ、水耕栽培の手順さえ教えておけば、村長さんに引き継いでもらって酒と交換にするって手もある。


 やれやれ、どうなるんだろうな、この先。

  

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