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更なる酒への挑戦

忘れた頃に更新します。

 

 のんびりとしていると村長さんが来る。


 どうやら高ランクパーティがあの酒を気に入り、もっと無いかと言われたらしい。

 こちらは物々交換しかやれないので、村長さんが代理人となって取引後、各種材料を買い付ける事で決まった。

 要求されるのはAランクのブランデーとウイスキー、それに50年物の熟成酒。

 それをそれぞれ50本の大取引になるようで、在庫が一気に減ってしまった。

 それにしても、巷では酒造り生産者もかなり増えたのに、何でわざわざこんな僻地まで来たんだろう。

 よくよく聞いてみると、どうにも酒の微妙な味の違いがあるようで、うちの酒は絶品との事だった。

 同じレシピで作って味が違うと言うのも変な話だけど、噂ではそこに幸運値が関係しているらしい。

 すなわち、一番幸運値の高い職だから、それだけ味が良い酒になったと思われる。


「あれ、それ、清酒? 」

「目ざといな」

「出した事無いよね、それ」

「こいつはオレの秘蔵の酒でさ、自分使い専用でひたすら拘った酒さ」

「ね、ね、ね、一口、良いかな」


 お猪口で渡すと香りを嗅いだ後、コクリと口に含んで味わっている。

 妙に本格的な味わい方だけど、利き酒の体験でもあるのかな。


「これ……凄いね」

「ひたすら研いだからね、酒米」

「えっ、研ぐとかレシピにあったっけ」

「いや無いよ。レシピは酒米をそのまま使えば造れるけど、それじゃ面白くないからさ。リアルで造るそのままに、スキルに頼らない酒造りをした結果さ」

「そんな経験があるんだね」

「まあ、リアルでも造ろうと思えば多分造れると思うけど」

「それでこんなに……ねぇ、利き酒コンテスト、出してみる気無い? 」

「うえっ、そんなのがあるんだ」


 どうにも剣と魔法のVRMMOにそぐわないイベントだけど、このゲームは元々そういう方向性のようなんだ。

 だって魔法があるのに発電して電気もあるんだよ。

 簡単な電化製品も生産されていたりして、まるで異世界で生活しているような雰囲気なんだ。

 つまりさ、異世界で知識チートって感じになっていてさ、みんなそのつもりで楽しんでいるみたいなんだ。

 確かに攻略組は日々新たなマップの攻略に血道を上げているけど、それでも狩りが終わったら拘りの酒で宴会をやったりしている。

 酒場ではそれぞれお気に入りの酒をキープしていたりして、やっぱり異世界の冒険って感じなんだ。


 表に出るのは困るけど、酒の評価には興味があると、村長さんに秘蔵の酒を預ける事にした。

 どうにも飲みたそうにしていたけど、名前を出さない事を条件に、コンテストの後で余ったら進呈って事になった。

 研磨率60パーセントで1番絞り……でもまだ研ぎも足りないし、米の生産をしてないから市販の米なのがイマイチの酒。

 空き家の裏庭では今、酒米造りをやっているんだけど、あれが収穫されたら更なる酒になる予定だ。

 いかに浮浪人とは言え、魔法が使えない訳じゃないんだ。

 水魔法での水耕栽培でどれぐらいの品質になるかは分からないけど、更なる酒への挑戦には終わりがない。


 実は酒米と共にワサビも栽培していたりする。


 人それぞれ好みはあるだろうけど、酒の肴には刺身が良いんだよな。

 刺身にはワサビが付き物と、市販のワサビを交換取引で手に入れたけど、これがまた小さいんだよ。

 だもんで小砂利の田んぼにそれを植えて、時々時送りで数年分の育成をしてやった結果、大きくて鮮烈な味わいになったんだ。

 それから市販の小さなワサビも交換品目に入れてもらい、裏庭で栽培しているって訳だ。


 ああ、魚なんだけど、さすがに川魚の刺身はちょっとな。


 VRだから寄生虫も無いだろうと思うけど、海の魚のほうが好みではあるんだ。

 確かにここからは少し遠いんだけど、港町では魚の取引も行われている。

 そういやもうじき来るはずだ。


「おうっ、酒だ酒だ」

「洋酒しか出さないぞ」

「そんな硬ぇ事言うなよな。ほれ、こいつでどうだ」

「日本酒は表に出すつもりは無いんだけどなぁ」

「出さねぇよ。オレが飲むんじゃねぇか。ほれ、寄こせ」

「仕方が無いなぁ」

「そういや、おめぇ、ワサビはどうなった」

「小さいのあるか? 大きいのと交換してやる」

「へへっ、そう思ってほれ、50本だ」

「5本だな」

「ちぇ、まあ、仕方が無いか」


 利き酒コンテストに出した酒と同じグレードの酒を2本と、でかいワサビを5本渡し、交換で色々な魚の短冊の詰め合わせを受け取る事になる。

 実はこの酒、ランクとしてはBなんだけど、変だよな。

 普通に清酒として作ればSランクでも造れるのに、味わいはこのほうが上に感じるんだ。

 だからもしかしたら、更なる清酒としてのグレードがあるんじゃないかと思っている。

 予想としては純米酒なんだけど、日本酒って三倍醸造でもやらない限りは大抵は米しか使わない。

 特にこのゲーム内ではそうなんだけど、純米酒って酒のグレードは発生してないのだ。

 何が足りないのか分からないけど、とりあえず酒米の生産から初めてみようと思ったんだ。


(何、それ、日本酒?……ええ、私のお気に入りでしてね……でもそれ、Bランクじゃない……そうなんですよね……それじゃあ入賞は無理ね……そうでしょうか……そうよ。今じゃS~Aランクの中での利き酒になっているのに、ランク外とか問題外って言われるだけよ)


 皿にけんと大葉を添えて短冊をスライス、ワサビを捻り下ろして酒を注ぐ。

 うん、やっぱり酒にはこれが合う。

 リアルでは今時、中々味わえない天然物の魚。

 昔は……そう、200年ぐらい昔はまだ天然物の魚も獲れていたらしいんだけど、今じゃもう獲れなくなっている。

 それと言うのも年々、漁業に対する風当たりが強くなって、捕鯨は元より一般の漁業すらも中々やれないらしい。

 氷河期とか何とか言っていたけど、それだけじゃないと思うけど、そんな事は分からない。

 とにかく、海の魚の量がやたら減って、天然物の漁獲高が年々減っていき、今では養殖が当たり前になっているんだ。

 天然物は調査漁業での収穫ぐらいで、一般人には手の届かない代物に成り果てている。

 だからかな、こういうゲームの中での釣りとか漁業への熱意が高く、大抵のゲームで釣り系統がやれるようになっているとか。

 特にこのゲームはリアル追及とかで、魚の味も追求されているって話だ。


 だからこうして……うん、美味いな。

 

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