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逆恨みの代償

   

 あれから数日が過ぎたものの、誰も何も言って来ない。

 てっきりワールドメッセージだと思っていたアレだけど、掲示板にも何も出ていない。

 攻略掲示板はクリアになった事だけを祝っていて、あのイベントの話など全くしてない。

 オレは用心の為にと色々SSを撮っていたんだけど、誰も知らないなら言わないほうが良いよね。

 そんな訳で今、プライベイトワールド内を充実させるべく、色々な準備を少しずつやっている。

 どうやらワールド内の地形変化はかなり自由が効くようで、小砂利の田んぼとか水耕栽培の場所とかを作っている。

 その世話もある程度オートでやってくれるようで、範囲をあんまり広げなければ独りでも問題無さそうだ。


 その際に、折角だからとホタルイカの養殖を始めてみたところ、かなりの繁殖になった。

 特製のタレの解析も進み、かなりそっくりな味わいとなる。

 実は5神獣揃った事で人化をするようになり、今ではまるで居候のようにさっきから……


『我のイカじゃ』

『いいじゃないの、少しぐらい』

『ダメじゃ、ダメじゃ』

『もーらいっと』

『おのれ、返すのじゃ』

『今のうちに』

『待て、それを持って行くでない』

『おいしー』

『貴様もじゃ。盗るでないわ』


 大皿にたんまり載せてやったってのに、仲良く食えんのか、こいつらは。


『ここは良いですね』

「昔の事は覚えているのか」

『僕が闇に墜ちていた頃の事ですか』

「覚えてないのなら気にするなよ」

『ですがもう2度と』

「ああ、そうしてくれ。お前の事を親みたいに思っているみたいでな」

『ええ、僕も彼らの事は大事に思ってますよ』

「飲むか」

『ありがとうございます』


 本当に静かで良いな。

 オレはどうにも他の人間の騒々しさが合わないらしい。

 こいつらと過ごすうちに、そう感じるようになっていった。


 それに従って他の奴らとの付き合いも薄れ、酒の探求者も増えた事からオレの酒の希少度も下がり、あちこちの職人が幅を利かせるようになる。

 先駆者としての扱いのあったオレだけど、そう言った職人達に押されるように、酒の需要が減っていく。

 どうやらオレのテリトリーを横取りするかのように、馴染みの客からの注文も減っていく。

 そうこうするうちに、暗黙で借りている事になっている場所の所有権の問題とかを言い出して、うっとおしいから全てを放棄すると言ってやった。

 すっかり根回し済みの彼らは、当然のような顔をしてオレを追い出しにかかる。


 そしてオレがNPCに相手をされなくて取れなかった商標登録をして、オレの酒蔵としての全てを奪っていった。

 それでもオレが何も言わないのが気に食わないのか、開拓地を出たオレに対し、PKを仕掛けようとする。

 こいつは何でそこまでオレに粘着するのか知らないが、さすがにそれはやり過ぎだろ。


 《討伐許可を確認・反撃しますか? 》


 やれやれ、そんなものを持っているって事は、こいつまさか紅の竜なのか?

 まあいい、許可があるなら見せてやろう。


「粛清の炎」


 ニヤニヤと嫌な笑いをしていたそいつは瞬間的に炭化したのか、光の柱になって消えていく。

 確かに範囲指定の最上級火炎魔法を単独相手に使ったんだからそうなるのは当たり前だろうけど、何とも味気無いな。


≪最上級火炎魔法の粛清の炎の行使を確認・対象と行使者のカルマを比較・対象から行使者へ獲得経験値の74パーセントを強制譲渡・所持金額の100パーセントの強制譲渡・所持アイテムの100パーセントの強制譲渡が行われました≫


 うわぁ、まるで強盗だな、こりゃ。

 インベントリを確認すると、やたら多い金にアイテムの数々が増えていた。

 そしてどうしてなのかは知らんが、魔導精米機が8つも増えていたんだけど、誰かから盗ったのか?

 そういや酒の生産者を狙ったPKがどうのこうのって言っていたような。

 オレはもう、エリアには出ないでプライベイトのほうにばかり行っていたから被害には遭ってないが、警戒事項とかになっていたな。


 どうすっかな、これ。


 まさか拾ったと言う訳にもいかんし、かと言ってPKから盗ったと言うのもおかしいと言われるだけだ。

 普通は反撃デスペナでアイテムを全部取るとかあり得ない話なのに、洗い浚いとか変に思われるだけだ。

 それにさ、オレが開発した場所を我が物顔で奪った奴らの為に、わざわざ返してやるとか無いわ。

 そりゃ最新型の魔導精米機には古代竜の素材がふんだんに使われていて、相当に高額なのは分かっている。

 しかも残念な事に、あのエリアがクリアされて黄龍が復活した事で、古代竜は狩れなくなったんだ。


 だってあいつが呼び出すのが古代竜だから、クリアになったらもうそんな事はしない。

 今までの素材は元のあいつが呼び出した古代竜の素材を確保して帰って流通したのが全てなので、中々クリア出来なかったからこそ古代竜の素材もそれなりに流通していたんだ。

 だけどもう復活した以上、眷属の古代竜を呼ぶ事も無くなり、入手手段も無くなったと。


 それでもまだ気に入ったあるじが居なければ、エリアを放浪しているあいつに戦いを挑み、その中で素材を得る事も可能だったろう。

 だけどあいつは今、オレのプライベイトワールドでのんびり過ごしている。

 それは他の神獣も同様で、だからこそこっちの世界にはもう神獣は居ないのだ。


 それは良いんだけど、運営は一体何を考えているのか。

 今度のイベントってはっきり言って誰もクリア出来ないぞ。


『神獣を探せ・世界から神獣が喪われようとしています。かつてのあるじに捨てられた神獣達は失意のあまり、世界から消えようとしています。神獣が世界から喪われると、女神達も消えてしまいます。そして女神が喪われると魔物の強さが数倍になり、今まで倒せていた魔物にも苦戦を強いられるようになるでしょう。世界から消えようとしている神獣を説得し、可能ならあるじになってあげましょう』


「何これ」

『くすくす、大神様の情報おそーい』

『だね、もう僕達は新たなあるじを見つけたのに』

『ここは静かで良いわね』

『そうだね、ここに決定ね』

「おい、お前ら、どうしてここに来た」

『君かい、神獣達のあるじと言うのは』

「捨て子を拾っただけだ。本人が望むなら里子に出すさ」

『我は違うぞ。我は自ら求めたのじゃ』

『僕もそうだよ。清々するとか言われてさ、悲しかったんだから』

『ロクに甘みも無い果実とやらで、恩を着せられても困るのじゃ』

『文献とか言うけど、僕達の知らない文献とか意味が無いよね』

「で、どうすんだよ、イベントは」

『我らには関係無き事じゃ』


≪GMコール・運営さん、ここに5神獣と4女神がいるんだけど、イベントどうなるの? ……えっ……プライベイト・ワールドに引っ越すって言っているんだけど……そ、それはですね……つまり、他人をここに入れないといけない訳? ……いえ、そうではなくてですね。しばらくお待ちください≫


(どうするんですか、文句を言われてますよ……いやぁ、まさか彼らがそんな判断を下すとはね……そんな暢気な事を言っている場合ですか……だけどね、彼らの行動を縛る事は出来ないんだ……どうしてですか……どうしてと言われても困るんだけど、そういう風になっているのさ……分かるように言ってくれますか。このままではイベントは開始前に破綻ですよ……動向調査もロクにせずに、イベント立案したのは誰でしょうね……まさかこんな事になっているとは……とにかくイベント告知は終わっているんです。残念でしたで終わらせましょう……道化ですね……彼らが自ら招いた事だよ……それはそうですけど)


(君達には言えない理由なんだ、本当に悪いね)

 

粛清の炎・魔法防御無視の最上級火炎魔法・魔物に対しては100の効果も、悪人に対しては500にも800にもなる。

マスクデータであるカルマにそれは影響され、その効果はデスペナルティ極大・デスドロップ極大・経験値喪失極大などかなり酷い結末を迎える事になる。

しかし行使者のカルマのほうが高ければその効果は逆転し、行使者が酷い事になる諸刃の剣。


この話では、カルマが高い=悪人という設定になっています。

なのでおかしいと思われる方もおられるでしょうけど、申し訳ありませんがそれで納得を願います。

カルマの定義がよく分からなくて、罪の量という判断をした結果です。


追記

彼のカルマ値は、拠点を奪取された時に急激に減少し、奪取した者達が増加しました。

その結果、彼と相手とのカルマの差が74倍にも達した結果、あのような派手な事になったのでした。

普通はそこまでの差にならないので、効果もそこまで大きくはなりません。

カルマ値倍数差=経験値奪取割合 カルマ値倍数差×2=所持金額、アイテム獲得割合(最大100%)

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