表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

やる気の問題

   

 4神獣の問題はクリアされたと思ったけど、どうやら何か問題があるらしい。


「オレ達もさ、色々試しているんだが、どうにも神獣が積極的に攻撃に参加してくれなくてな」


 最新のエリアボスはどうやら元のお仲間らしく、神獣が戦いたがらないらしい。

 それぞれに好物らしき物があるらしいが、それを後で振舞うと言っても効果がイマイチのようで、その癖、後で振舞わないと機嫌を損ねてしまうとか。

 それで一度で良いから来てくれと言われ、ガードを約束させて行く羽目になる。


「頼むぞ。防具もまともに着られないんだからよ」

「ああ、完璧にガードするから心配するな」

『災難じゃのぅ』

「そう思うなら頑張ってくれよな」

『じゃがの、あやつとは幼き頃には共に遊んだ間柄。じゃからの、攻撃なぞしとうないのじゃ』

「闇に墜ちたんだから諦めろよ」

『元に戻って欲しいのじゃ。それは他の者達の望みでもあるからの』


 どうにもやる気が無い様子。

 こうなればアレしか無いと、背景スキルで隠れてこっそり敵の足元にアレを並べる。


『ナンダァ、妙に臭いが、ふんっ』

『あああああああ、我のぉぉぉぉ、イカがぁぁぁぁぁ』

『喧しいのぅ』

『許さぬっ、絶対に許さぬっ』


 効果はばつぐんだ。


 いくつかの小皿を蹴散らしたエリアボスに対し、超本気モードになった白い獣が襲い掛かる。

 今までに見た事も無い強力なスキルを行使し、ひたすらひたすら追い詰めていく。

 と、見ていたはずの残りの3神獣も白い獣と共に猛攻を加えており、我に返った攻略組もそれに参加する。

 今まで絶対に倒せないとまで言われていたエリアボスが、遂にその身体を地面に横たえる。


『何処じゃ、何処に消えた、我のイカァァァァ』

『甘き香りの貢物じゃの。妾にも寄こすのじゃ』

『美味しそうな匂いだったね。僕にもくれるよね』

『あまーい』

『何処じゃ、何処に転がっておる』


「おい、他の神獣もアレが好物みたいだぞ」

「おっかしいな。文献には甘い果実ってなっていたんだ」

「てかさ、ボス倒した余韻が全く無いよな」

「ああ、てっきり元の仲間との別離みたいなのがあると思っていたのに」

「まあ、ともかくこれでクリアになったんだし、結果オーライだろ」

「やっと解放されるのか、長かったぜ」

「神獣のあるじか、ご苦労だったな」

「これでいよいよ、あいつらと別れる事になるってか」

「何を食わせても満足しないとか、やってられねぇぜ」

「ああ、その癖、食わせねぇと文句ばかり言いやがってよ」

「これで切れるか、清々すんぜ」


 飛び散ったイカの残骸の辺りで獣達がうごめいている。

 けどな、落ちたイカとか食うなよな。

 傍らにおもむろに小皿を並べていくと、4神獣がすぐさまやって来て、それぞれに食べ始める。


『こ、これは』

『妾は満足じゃ』

『甘くて美味しい』

『これは我にとあるじよりもたらされた……食うな、全て我のものじゃ』


 人は欲の権化とか言ってなかったか?

 今のお前もかなり権化みたいだけどな。


『そう思うのなればもっと出すのじゃ』


 仕方が無いなぁ。


 それはまるでわんこソバのように、小皿が出るたびに誰かが掻っ攫っていく。

 気が付いたら既に攻略組の姿は無く、4匹の獣達のあるじが全てオレになっていた。

 どうやらここで神獣の役割が終わったらしく、皆はあっさりと捨てていったらしい。


 確かにこんな所業をする人などに従うなどあり得んな。


 どのみち行き先も無いようで、全員がうちに来る事になった。

 それは良いのだが、4神獣が倒れて消えたはずのエリアボスの周囲にそれぞれ並ぶ。


『『『『古き友よ。我らが願い、それは幼き頃の我らが友の姿。いざ蘇れ、あの時のままに』』』』


 てっきりもう終わったと思ったのに、まだ何かあったらしい。

 攻略組はもう居らず、オレはただ、SSを撮りながらそれを見守るのみ。

 東西南北それぞれに座った神獣達から何かの力が中心に流れ込み、金色の光が溢れてくる。


『ボクを呼ぶのは誰だい』

『シロだ』

『アカよ』

『ミドリ』

『クロだよ』

『ボクは……ボクは……』

『『『『おかえり、キン』』』』


 どうやらエリアボスの元の姿は金色の竜だったようで、黄龍って事なのかな。

 本当なら感動的な場面だろうけど、それぞれのあるじに捨てられた神獣が起こしたイベントだから妙に物悲しい。

 と、その時、メッセージが流れる。


≪黄龍復活イベントに関し、従えた神獣一体に付き、特別ボーナスがもらえます。それぞれの神獣のあるじにのみ与えられる特典ですので、最初で最後という事になります。その旨、ご理解ください≫


≪白虎のあるじの方・プライベイトワールド獲得・自分だけのプライベイトな空間で神獣と共に過ごせます。もちろん、中で生産も可能になってまして、草木を植えたりと様々な使い道が出来ます≫


≪朱雀のあるじの方・火炎系最上級魔法の譲渡・1日1回限り、MPの使用無しに行使が可能になります。その威力は現在の最高級の火炎魔法の数倍を誇り、いかなる者も焼き尽くすと言われております≫


≪玄武のあるじの方・身代わり防御を獲得・玄武の強靭な防御力をその身に宿し、鎧など不要な防御力を得られます。とは言うものの、油断は禁物です≫


≪青竜のあるじの方・水に関する全ての技能が得られます・魔法効果自体はそこまで変わらずともMP消費量は限りなく少なくなります。後は水中でも呼吸に困る事はなくなり、快適な水中活動が可能になります≫


≪そうして黄龍が一番気に入ったあるじの方へ、特別ボーナスが与えられます・全てのバッドステータスが無効になり、デスペナルティも無くなります。何度死んでも何も無くす事はなくなり、経験値の減少もステータスの減少も起こりません。とは言え、自ら死ぬのは止めておきましょう。愛想を尽かされる恐れがありますから≫


≪これで復活イベントは終わりになります。これからもアナザー・ワールド・オンラインをよろしくお願いします≫


 どうすんだよ、これ。

 あいつら、居なくなるのが早過ぎるだろ。

 てか、今まで馴染んだ神獣をあっさり捨てるとか何考えてんだ。

 可哀想だろ。


 だけど、だからと言って特典独り占めとか洒落にならん。

 こんなの望んでなかったのに、あいつらが知ったらヤバ過ぎるだろ。

 本当にどうするんだよ、これ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ