新産業への誘い
構想が煮詰まったので、とりあえず出来ているシナリオ分を仕上げて投稿します。
なので少し充電期間をいただけるとありがたいです。
雑魚で小心者の作者には、3桁のブクマが怖くてたまりません。
がんばるから、がんばりますからぁぁぁ、もう少し待ってぇぇぇぇ……
やれやれ、何で誰も見向きもしないのか知らないが、あんな場所にあったんだな、ゴムの木が。
《植える》スキルと《採取》スキルで《植え替える》が発現して以来、山野の珍しい木や草を畑に植え替える事がやれるようになっている。
早速、採取したゴムの木をつらつらと植えていき、後々の樹液採取の道具を揃えていく。
どのみち壺か樽があれば採取はやれるが、採取したゴムの樹液の利用法を確立しないとな。
情報掲示板で見てみると、ゴムの採取は現地で行っているらしい。
最前線の狩場での現地採取は困難を極め、周囲で狩りながらの採取なのであんまり採れないらしい。
なのでかなり単価の高いゴムの樹液になっているようで、産業にしたらかなりの需要はあると思われる。
「おいおい、こいつはゴムの木だろ。どっから持ってきた」
「ああ、ゲイルさんが狩りに連れて行ってくれましてね、その途中に生えてたんですよ」
「けどよ、こんなの簡単に植え替えるとかやれないだろうに、掘るのを手伝ってもらったのか? 」
「植え替えるってスキルを使えば、そのままインベントリに入るんですよ」
「おいおい、そんなスキル知らないぞ。どうやって取得した」
「植えると採取で生えましたよ」
「植える? 何だそのスキル。農業スキルにそんなの無いぞ」
「じゃあ、これも浮浪人専用スキルになるのかな」
「やれやれ、参ったな。何もやれない職と思わせて、実際は色々やれるじゃねぇか。こりゃ失敗したかな」
「最初が大変ですからね」
「まあなぁ、それがあるからご褒美のようなもんか」
「右や左の旦那様ァ」
「まあ、普通はそう思うよな」
農夫の彼に世話を一任し、取得したゴムの樹液をインベントリに貯めていく事になる。
需要過多で生産が間に合わない場合、ただ忙しいだけになるからだ。
それからもゲイルさんに連れて行ってもらうたびにゴムの木は増えていく事になり、広場の一角にはゴムの林が出来上がる。
日々大量の樹液が得られるようになり、そろそろ産業にしても良いんじゃないかと言われるようになる。
伝手からゴム製品の生産者に話が通り、この際だからと移住の話にまで進展する。
樹液は彼に販売される事となり、様々な製品の原料に化けていく。
採取が間に合わなければインベントリから出して補填して、需要過多を乗り切っていく。
高価だったゴム樹液は、新保有地からの供給で値が下がる事となり、現地採取が割りに合わなくなった結果、独占商売になってしまう。
それでも現地から植え替えようとした連中は居たものの、魔物退治をしながらの木の採取に手間取り、遅々として作業が進まないようだった。
しかも1本や2本じゃ商売にならず、少なくとも10本単位で必要とあって、採取グループと戦闘グループが合同での採取祭りに発展していく。
その頃には素材の価格もかなり落ち着き、薄利多売でもやれるようになっていた。
とは言うものの、巷のグループの出す価格に合わせて落としていく単価だが、それでも充分に出る儲け。
当初は希望小売価格の50倍もあった単価だが、今では10倍ぐらいに下がっている。
向こうが大量入手で更に下がっていくと思われるが、それすら見込んでの価格なので、いくら下げても問題無いんではあるんだけどね。
そういやあれからも税吏は来たが、オレが所有者だというプラカードを掲げて相対した結果、どうにも話が進まずに現在に至る。
どうもNPCにはプラカードしか見えていないようで、透明人間が所有者ともっぱらの噂になっていた。
そのうちに騎士様を連れて来るようになるものの、やはり見えてないようで話は一向に進まない。
騎士様は困った挙句、プラカードに話し掛けるようにして、対話がやっと始まった。
「そこに居るのか、ここの所有者」
「はい、居りますよ」
「どうして見えぬのだ、魔物なのか? 」
「いいえ、普通の来訪者ですけど」
プレイヤーは来訪者って事になっているので、そう言えば分かるはずだ。
「どのような種族なのだ」
「ヒューマンですよ」
「見えぬヒューマンなどあり得ぬ」
「職業のせいですよ、浮浪人なので」
「そのような者が何故にこのような事をやれるのだ」
「それはやはり来訪者だからですかね」
「ともかく、ここは国の土地なのでな、住まうならば税は払わねばならぬ」
「ならば魔物からも取得されるんですかね。彼らも住んでますが」
「何をバカな事を」
「この土地は元々、彼ら魔物の土地。それを奪っての所持なれば、国の土地とは違います」
「いや、ここは国の土地だ」
「ならば魔物は勝手に住み着いているんですか」
「そうだ」
「勝手に住み着いて勝手に発生するんですか」
「そうだ」
「そう神様がお決めになったのですね。魔物の土地は国の土地、彼らは国の土地を勝手に所有していると」
「そうだ」
騎士がそう言った途端、上空から雷のような音が響き、彼に落ちてしまう。
おいおい、神様って本当に居るのかよ。
ああ、もうじき雨が降るのか。
そういや黒雲が上空に……成程、槍を突っ立てたままにしているから落ちたのか。
でも、偶然とも思えないが、そんな仕様になったのかな。
光の柱になって消えた騎士を見た税吏は、震えながら逃げていった。
そんな事よりもうじき雷雨になりそうだが、ちゃんと結界は働いてくれよな。
あれが働けばどんな派手な嵐もかなり軽減され、そよ風の中の緩やか雨になるはずだ。
家に戻って酒の肴をあれこれ準備し、ロッキングチェアに座って独り酒の準備完了。
窓の外を眺めながら酒を楽しんで肴を味わうとか、こういう生活も良いよな。
確かにここの所有者はオレだけど、収益は全て開発に還元しているので個人的な儲けにはなってない。
まあ、個人的な儲けの伝手はあるんだし、副業に拘る必要は無い訳だ。
ちなみに神様とNPCの関係をGMに聞いてみたところ、神様を騙った者は落雷で焼ける事になっているらしい。
つまりあの口上は単なる売り言葉に買い言葉だったようで、この土地の所有権は魔物にあるようだった。
魔物からせしめた土地をちゃっかり国の土地にして税金をせしめようとしたのが発端のようで、王都にも雷は落ちたとか。
くわばらくわばら。