表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

第8部:恨む者、願う者

  ● ●


 時間が無い。

 未だ、成せていない。

 これは、自分の責だ。罪だ。

 時間が無い。

 もう少しなのに。

 ここまで漕ぎ着けたのに。

 あと一歩を踏み出せず、約束を果たせずにいる。

 原因など、とうに分かっている。

 憎い奴のせいでも、愛おしいあの女のせいでもない。

 嫉妬だ。

 どうしようもなく醜い、嫉妬のためだ。

 私怨だ。

 勝手に抱いた、ぶつけようのない私怨のせいだ。

 無くさせるわけにはいかない。

 失くさせるわけにはいかない。

 だけど、無くなるのは必然だ。

 失くすのは、避けられない事象だ。

 だが、そこで、全てを台無しにするわけにはいかない。

 ちっぽけな私情で、何もかもを無かったことにする事は許されない。

 急がなければ。

 急がなければならない。

 事態が要するのは時間であり、そのために立ち止ることは許されない。

 刻限が迫っている。

 凍える冬の入り、過剰に飾り付けられたヤドリギがそこかしこに立つ日。

 そこに至るまでに、答えを。

 答えを、出させねばならない。

 全ては、終焉へと迫り。

 自分の役目も、無くなりかけている。

 それでも、約束を果たさねばならない。

 最も憎く、近しい奴の尻を蹴飛ばさねばなるまい。

 最も大切な、尊い人のための約束を、果たさねばならない。

 時間が無い。

 時間が無い。

 残された時間は幾ばくか。

 許される限りの力を尽くさねば。


 物語が終わる、最後の時。

 願わくは、全てをその時のために。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ