7:3の女の子
目覚ましの音で目を覚ます。 階段降りて、まずは鏡の前に立つ。 酷い顔、昨日はたくさん泣いたからなぁ。 顔をペシペシ叩いて、気合を入れ直してリビングへ。 お母さんの作った朝ごはんをテレビ見ながらのんびり食べる。
食べ終わったらまた鏡の前へ。 とても外には出れないルックスだ、一つ一つ綺麗に整える。 ……よし、これでおっけー。
制服に着替え、荷物を確認。 「行って来ます」 そう言って家を出る。 これが私の朝のライフスタイル。
改札を通ってホームに立つ。 時計を見れば7時30分、いつも通りの電車に乗り込む。 田舎だから電車が混むことはあまりない。 都会は朝のラッシュとかですごいと聞いたことあるけれど、私には想像できないや。 それなりに空き座席がある中で、私は扉の近くに立ったまま外の風景を眺める。
7時46分、電車が止まる。 自然とドキドキする。視線は変わらないけれど、視点は外の風景ではなく窓に反射して映るものに変わる。
来た……
窓に映る君、私のちょうど対角線に立っている君。 今日は少し眠そうだね、昨日何かあった? 私はね、キモいと思うけど君に彼女がいることを勝手に想像して大泣きしちゃったよ。 扉は閉まり、電車は動き出す。
リズミカルな電車の音、小刻みの振動。 私も揺れて、君も揺れてる。 君は窓の外眺めてる、それを私は窓の反射で確認してる。 おかしいね、周りから見たら二人とも外眺めてるように見えるんだろうけど、私が見てるのは君なんだ。
でも。もしかしたら、君も外眺めるふりして私のこと見てないかなぁ…… なんて思ったりしてる。 あり得るわけないのだけど、ね。
電車のアナウンスが、このひと時の終わりを告げる。 私は軽くため息ついて、気持ちを切り替える。
降りる瞬間、ちらっと君を見る。 降りる気配はない、ってことは近くの高校ではないんだよね。 どこなんだろう? サボって尾行してみようかな、そんなことする度胸はないんだけどね。
改札を通り、後ろに電車が過ぎ去るのを感じる。 時計を見れば、8時5分。 もう今日は君に会うことはないね。
20分程の、愛しい時間。 知っていることは、同じ高校生ということだけ。 他は何にも分からない。 でも、私は君にとても好意を抱いてます。 ストーカーだよね、でも安心してください。
ただ見て、勝手に想像して落ち込んで、それでも見れたらまた気持ちが高まって。 それでも何にもできない、ただの臆病な女の子ですから。
君を好きだけど、伝える勇気も持ち合わせてない弱虫な私なんですから。