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10÷2≠5  作者:
3/17

8:2の男の子





突然ですが、俺はモテます。 学校内でもトップ10には入れる自信がある。 てか事実入ってるらしい。 後輩はもちろん、先輩からもお声はかかってくる。 これをモテると言わずなんと言うのか。

高校2年の今現在まで、色んな女の子と付き合ってきた。 どれも楽しいと感じた、実際女の子好きだし楽しいのは当然。


でも、大抵3ヶ月程で別れて来た。 最速で2週間くらいかな? 何でかと言われれば、好きでもないのに付き合ってるからだ。 今まで全部相手から告白されて来た、それを俺は全部オッケーした。 そこに俺の気持ちはない、あるとしたら…… 申し訳なさだ。 本気になる気はないけれど、『好き』と言葉にするのはすっげえ勇気いることだからさ。 それを否定するのは俺には無理なわけなんだよ。 それで結局もういいや、となり俺からフってしまう。 そんな17歳なんだ、俺は。




またまた突然ですが、俺には幼馴染がいます。 家は近所で保育園から小、中、高校と全部一緒。 これぞ腐れ縁、そして俺は運命とか感じてみてる。 ぶっちゃけ、俺が女の子に本気にならないのはその幼馴染が好きだから。 大好きだから。 口には出さないけど、他の女の子は正直眼中にないってくらいに好きだ。




あいつは明るいと言うか、やかましくて落ち着きがない。 なのに優等生の雰囲気だして真面目ぶる。 口はキツイし遠慮も知らない、言いたいことはズバッと言う。 自分の意思もはっきりしてて、こうだと決めたら絶対揺るがない。 そんなやつなんだ。


そんな面倒なやつを、なんで俺が好きになったかと言うと。







あいつは、俺のことを嫌っているから。






§






大海たいかい、またね〜!」



放課後一緒に雑談してた奴らに軽く手を振り、俺は教室を出た。 5時半を過ぎたことをスマホで確認し、俺は図書室へと向かった。





図書室から音はしない。 高校生にもなって図書室で騒ぐ奴らもいないだろうしな。 俺は壁に寄りかかり、扉が開くのを静かに待つ。 あいつが出てくるのを、ただ待った。







ガラッ



「うわ、なんでいんの」



出てきたその顔は、まるで汚いものでも見るかのような眼差し。 これがこいつの平常運転だ。



春乃はるのが出てくるの、待ってたんよ」

「ちょ、マジ無理。 ほんとに気持ち悪いけど」

「んな顔すんなよ〜。 せっかく可愛いのに」



俺はそう言って、春乃の頭を許可なく撫でる。 この光景を誰か見てないかな、そんでそれを学校じゅうに広めてくれないかな。 そしたらこいつも折れてくれると思うんだけど。



「やっすい言葉で買えるほど私の頭は安くないんだけど」



俺の手を弾いて、春乃はそのまま歩き出す。それを俺は少し遠い距離から追いかける。





§


「いやぁ、すっかり秋だな」



帰り道、前を歩く春乃に話しかける。 もう10分ほど歩いたかな。 てことは10分ほど俺は独り言言ってることになるのか。

春乃は基本的に返事はしない。俺だからなのか、それとも単純に興味ないのか。 どっちでもいいんだけどね、これが春乃だから。



「お母さん、元気か〜?」

「元気よ、久しぶりにあんたを連れて来いってうるさくて困る」



意外と家族ネタは答えてくれる。 まぁ近所だから家族ぐるみで仲良いしね。 春乃は俺と仲良いと思ってるかは分かんないけど。



「えー? 呼んでくれりゃいつでも行くのに」

「いい。 あんたが来たらなおさら困る」




ははっ。 バッサリ切られたなぁ。 いくら幼馴染とは言え多少は傷つくよ、それは。




しばらくの沈黙、その後に。 俺は春乃に質問した。




「春乃はさぁ、俺のこと嫌い?」



その言葉に、春乃は立ち止まり振り返る。 真っ直ぐな視線で俺を見てる。 綺麗だな、って感じる。 たとえ出てくる言葉が最低のものでもね。





「それ聞くの、何度目?」

「分かんね、数え切れないくらいだな」

「あんた、変態なの?」

「いやいや、全然。 でも考え変わったかなぁ、とか思ったの」




「変わんない。 私はあんたが嫌い。 昔と今じゃ違うの、私たちもいつまでも子供じゃない。 大人になっていくのよ。 なのにあんたはいつまでもヘラヘラして…… 見ててイライラする。 何も考えてない態度がムカつく。 女の子傷つけて泣かしてあんたは悲しまないのがホントありえないと思う。」





出てくるのは悪口のみ。 ぶっちゃけ、他の女だったら手が出るくらいムカつくと思う。けど、春乃なら許せる。 そもそも、こんなこと言えるのは春乃だけだし。



「とにかく、私はあんたを好きにはなれない」



そう言って、また歩き出す。 それを俺はまた一定の距離をとって追いかける。


酷い言われようだ。 もしこれを学校でやったら大問題に発展するだろう。 とりあえず春乃はクラスの全女子から嫌がらせを受けるだろう。 それがエスカレートして取り返しのない状態にまでなってしまう、その可能性は高い。

だから俺は、学校では春乃には関わらない。唯一関わるのは春乃が図書委員の仕事がある時。 好きな人に辛い目はあわせたくない。 てかもし春乃がイジメを受けたら俺自身が何をしでかすか分からないし。








春乃は、他の女の子とは違うんだ。


みんな、俺のことを好きと言ってくれる。 でも『どんなとこが?』 と聞くとありきたりな答えしか言わない。 カッコイイとか、優しいとか。 そんなんばっか、俺じゃなくても良くないか? って感じる答えばっかり。



でも春乃は悪口しか言わない。 でもそれは、俺のダメな部分が見えてるってこと。 薄っぺらい表面だけじゃなくて、大事な中身を見てるってことだと思うんだ。 だから、俺は腹立つことはない。 たま〜に傷つくけどさ。


だから。俺は嫌いになれない。 むしろ、俺を好きになってくださいと願うくらい。 春乃が言うように、俺は気持ち悪い考えを持ってんだろうな。 だけど本心だからどうしようもない。 そんな簡単に変えれるほど、俺と春乃が過ごした時間は短くない。



そこら辺を語った所で、どうしようもないことも分かってる。 だから、俺としては春乃に変な虫が寄らないようにして、本当に大好きだってあいつが言える人が現れるまで見守ることにしてる。 出来ればそれが俺だったらな、という考えも当然あるけどね。




いいんだ、大好きだけど。 俺の幸せよりは春乃の幸せを願うんだ。 今、こうして近くに行こうとするのはそれまでの無駄なあがき。 ちゃんと分かってるから、もう少し足掻かせてくれ。 簡単に消える感情ものじゃないんだわ、これが。






「そーいえば、もうすぐ秋祭りだなぁ」

「あんた、行く予定なの」

「んー、仲間と行くかも」



そう答えると、春乃は立ち止まり再び振り向きこう言った。





「それなら、私と行こう」





俺はその時、その言葉の意味が分かっていなかった。








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