表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/44

話し合い

和食レストランで結衣は遼と昼食を摂っていた。誘ったのは遼である。もちろん食事が終われば話し合いである。けれども食事の時くらいはゆっくりと食べたい。結衣は病院生活では味わい得なかった至福の時を迎えていた。


「おいしいね。今日はごちそうしてくれてありがとう」

「遠慮しなくていいよ。誘ったのはオレだし」

 遼はほとんど手をつけていなかった。どうやら早く話がしたいようである。それでもお構いなしに、結衣は食べ続けた。

 

約20分の結衣の食事が終わり、いよいよ話し合いが始まった。結末はどうなるのだろう。二人にも予測出来なかった。


「あのプリクラはどういうつもりで撮ったの?」

 遼から先に質問する。

「別に、深い意味はないよ。彼は友達の彼氏だし。遼だって女の子とプリクラ撮ることはあるでしょう」

「撮ることはあるけど、わざわざメールで送ったりはしない」

遼の顔が険しくなる。撮ったことより送信したことに、遼は怒っているようだ。


「それじゃ私も話すけど、遼はなぜアユミさんとTDLに行ったの?」

「それは入院の時にお世話になったからさ。約束もしていたしね」

 何のためらいもなく、遼は言ってのけた。結衣のジェラシーが高まる。

「行ったのはいいとしても、それをわざわざ私に報告する必要はあるのかな?楽しそうな遼を想像すると、私は切なくなるの」

 ストレートな思いをぶつけよう。話し合いの前に、結衣はそう決めていた。


「そんな風に取られるとはね。それじゃ僕はアユミと会ってもいけないし、会話したりすることもできないんだね」

 机を叩いて怒りを表す遼。ここまで不機嫌な遼を見るのは初めてだった。訪れた沈黙。しばらく二人は、行き交う人々の群れを見つめていた。


 しばらく経って沈黙を破ったのは遼だった。


「悪かった。ちょっと言い過ぎた」

 反省を見せた遼に結衣も謝る。

「私も言い過ぎた」

「結衣の気持ちも考えないで、あんなメールを送ったのは悪いと思う。僕の配慮が足りなかった。でも本当に好きなのは結衣なんだ。僕が一緒にいたいのは君だ」

 結衣の気持ちが一気に晴れた。雨の後に掛かった虹のように、心が晴れやかになる。この言葉を待っていたのだと。

 

「正直私もアユミさんの存在に嫉妬していた。彼女は私よりも遼のことを知っているから。でも今日その言葉を聞けて嬉しい」

 ガーネットのアクセサリを掲げた結衣。遼も笑顔になる。

「そのアクセサリ、ずっとつけてくれているんだ」

「当たり前だよ。これは私の守り神なんだから」

 結衣は幸せを噛みしめていた。本音で話し合えて良かったと思った。けれども遼はこの一言も付け加えた。


「でもアユミと話すなという制限は付けないでほしい。彼女は大切な友人の一人だし、バスケ部のパートナーでもある。結衣の気持ちはよくわかったから、これから行動には気をつけるよ」

 遼が一つの結論を提示してくれたことで、結衣の気持ちは軽くなった。これからは自分が遼を支えてあげよう。足を引っ張らないようにしなくてはと。



TDLデートからわずか二日足らず。アユミの気持ちを凍らせるメールが、遼から送られてきた。内容を数行読んだだけで、アユミはすぐに消去した。わかっていたことなのに。この行動は自分でもビックリだった。わずかな可能性に掛けていたんだろうか。何か重要なことが書かれていたのか知らないけど、最後まで読むことは無理だった。TDLのデートが楽しかっただけに、落胆が大きかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ