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究極生物コタツ  作者: 吉川明人
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えらいこっちゃ!…②

 これは絶対悪モンやな。


「逃げるぞ!」

 オッサンの顔めがけてコタツが飛びついたら、あわててもがいとる。

 ホンマにマンガみたいやって、ゆうてられへん。はよ逃げよ。

 もがいとるオッサンの横すり抜けて、通路に飛び出したけど……あれ? どっちに行ったらええんやろ。

「ともかく逃げろ! あとからオレが探す」

 ほんなら安心や! とにかく走ったらええねん。こういうので捕まったら大変なんや。


……って言うとったら迷てしもた。


 せやけど今回は安心や。コタツが見つけてくれるはずや。

 こっちから探したらええんやろか?

 それともヘタに動かんと、どっかに隠れとったほうがええんやろか?

 あ、なんやちょうどええとこに隠れられそうな隙間あるやん。あそこにしよ。

 コタツ、早よきてや〜。




 個別管制室に2人の男がいた。

 1人は先ほどの男で、もう1人は銀髪の男。

「もう一度確認したい。お前を襲った白い動物以外に1人いたのだな?」

「え、ええ。早く逃げろと……その、動物が」

「人間の言葉を話したと? 気は確かなのかね?」

 あきれながらも銀髪の男は部屋の隅に子ども用のカバンを見つけた。

「ここへ子どもを入れたことは?」

「子どもどころか、ここは一般人も入室禁止です」

「分かっている。調べろ」

 カバンから中身が乱暴に引きずり出されると、名前の書かれた子どもの品が出てくる。

「稲里誠恵か……今日の乗客名簿を調べろ。すぐに連絡先が分かる」

 指示された男はあたふたと駆け出して行く。

 残った銀髪の男は、いまいましげに口をゆがめる。

「……どういうつもりか知らんが、ガキのイタズラにしては、やりすぎたな」



……ホンマにコタツあたし見つけてくれるんやろか。もう1時間以上たってるやん。

 はあ〜おなか空いたな……カバンあったらお菓子入ってたのに、さっきの部屋に忘れてきたからなんもあらへんし。

「遅れてすまない」

「うわ! びっくりした。いきなりやな。

 足音くらいたててえな」

「オレはたてないのが普通だ。それより宇宙船は順調に航路に乗った。

 SAPも全面的に協力を約束してくれて、各惑星にちゃんと戻れるかどうか監視船も出してくれるそうだ。

 安心していい。次はオレたちの問題を解決しなければならない」

「問題って?」

「宇宙船を出発させるまでは、発進後速やかに宇宙港を逃げ出せば問題なかった。

 しかしあの管制室で誠恵のカバンが見つかり身元がばれた。今やつらは誠恵を捜しまわっている。

 やつらが責任を逃れるには、この騒ぎの張本人を誠恵に押し付けて犯人にするのが望ましい。このままではマズイ」

「なんやてえ〜〜! そんなんアカンやん!!」


 えらいこっちゃ!


「だから逆に相手を捕まえればいい。考えてみろ、宇宙港には必ず検疫がある。

 密輸入されるにはそこをすり抜けなければならない。

 あの宇宙船に捕えられていた生き物は34種77体以上にもおよんでいた。

 それほどの数をす通りさせるには内通者がいるに違いない。

 証拠を押さえて警察に突き出せば誠恵は犯人ではなくなる」

「そんなん、どうやったらええの?」

「幸いやつらはまだ相手を子ども1人と動物1匹と考えている。

 オレはすでにあやしい相手のいる場所は目星を付けてある。

 やつらが誠恵を捕まえる前に、こちらから先に討って出る」

「アカン、そんなんムリやわ」

 子どものあたしになにができるゆうねん。

 ムリムリ、絶対ムリやわ。

 うちとかにも連絡いってえらいことなるんやろな。

 もうガッコも行けへんようになるかもしれへん……。

「……ほら、誠恵」

「なに? あ……」

 どっから持ってきてくれたんか、梅干しのおにぎり差し出してくれた。

「誠恵の出身地ニホンでは、いざという時にこれが一番力が湧くとあった」

 梅干しはちょっと苦手やったけど、おなか空いてるし、せっかく持ってきてくれたんや。

「あ……おいしいわ。梅干しのおにぎりって、こんなおいしかったんや」

「安心しろ誠恵。誠恵にはオレがついている。ファリアロの究極生物コタツがな」

「そやな。そや、コタツも」

 ケータイで撮ったら、もっとたくましなる。

 おにぎりとコタツの笑顔(?)でなんとなく、なんとかなりそうな気になってきた。


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