またかいな!!…⑤
「コタツ! 絶対……絶対ムダにしたあかんで! もしムダにしたら絶対許さへんからなあ!!」
「あたりまえじゃ、安心しとけ!! 絶対ムダにするかあ!!!」
思わず叫んだあたしに、遠くのほうからコタツの元気な返事聞こえてきて、ちょっとだけほっとした。
そうや、なにがあってもコタツは大丈夫や! 究極生物なんやから!
2人がチプロに近づいたら青白い腕伸びてきてつかまえよとしてる。
うまいこと避けたらまた違う腕伸ばしてくる……電気やからしゃあないんやろけど、しつこいやっちゃな、嫌われるぞ。
そのうち2人ともうまいこと向こう側、誘導するほうに回りこめた……せやけどどうするんやろ? 近づけへんのに誘導て。
不思議に思もとったら反対側の映像に切り替わった。じっとしてタイミングはかっとるみたいや。
「コタツ兄、どの方向に誘導します?」
「ペルメア方面の浮遊物がいっちゃん少なかった。ミニにそっちのほうの浮遊物とっぱらってもらう。気いつけよ」
「コタツ兄こそ」
「再生レベル最大にしとけ」
「おう、ほならマル、艦長、いくでえ!」
「はい!」
「幸運を祈るのだな!」
コタツらはものスゴイ速度でチプロに突っ込んでく。
そんなんアカンやん! アブナイやん!! アカン!
でっかい腕伸びてきた。逃げられへん!!
て思てたら、腕の中やのにコタツらぜんぜん平気そうや。なんで?
「コタツ殿と現ファリアロ代表を囲う空間を閉鎖しているのだな。
空間チューブには大量のエネルギーが必要だが、小さな1か所をシールドする分には問題ない。
多くの腕をからめ取って引っぱっていくのだな。
簡単に聞こえるが、いくら空間シールドに守られているとはいえ、あんなことができるのは銀河広しと言えどもファリアロの究極生物しかできないのだな」
チプロ引っぱる? めちゃめちゃムチャや。
そやけど少しずつ、少しずつ動き始める。
さっき空間チューブでちょっとずつ移動してたんが飛行機で飛んでたて思えるくらいゆっくり……。
「どれくらいの時間かかりそうなん?」
「少なくとも地球時間で3時間はかかるでしょうな」
おっと。ザカリさんおること忘れとった。せやけど3時間もチプロの中で……。
「その空間シールドって3時間も持つん?」
あたしの質問に、視線そらして誰も答えてくれへん。
「なあ、空間シールドって3時間持つん!?」
「……実は、非常に微妙なところなのです。
現在の速度では太陽系圏外ギリギリ外までで、もしなにかアクシデントがあれば……」
「なんか手えないん? 安全確実なやつ。
あたしら地球人より、銀河連合はものスゴ技術発達してる言うてたやん」
「それが……ツェプロドゥーファばかりは手だてが」
「チプロやのうて、さっきコタツ言うてた本隊からエネルギー補給受けたらええんちゃうの?」
「その、時間が足りないのだな。本隊から受けるとしても間に合わず、ニミツェリオリナンを呼び戻しつつ向かっても、先にニミツェリオリナンのエネルギーが切れて、空間シールドが作れなくなる。
現在地から動かすこともできないんだな」
「ほんならコタツが言うとったとおり、行く前に呼んどいたらよかったやん!」
「だから艦長責めんな誠恵! いろんな事情あるんや。
信用せえ、ワイら誰や思っとんねん」
「そやったコタツ信じとったら間違いないんや。思わず言うてもた、艦長ゴメン」
「いや。誠恵殿の言うことはもっともなのだな。
私の判断ミスがファリアロ代表を危険にさらしたことに違いないのだ」
「それは違うぞ艦長。ことツェプロドゥーファに限って警戒できる警戒はすべてしたほうがいい。判断は間違っていない。
それよりミニのエネルギー残量に気をつけておいてくれ。少しくらいシールドの出力を下げてくれても構わない」
「分かりましたのだ現ファリアロ代表。ですが出力を下げるのはまだ様子をみるのだな」
「そういうわけや、誠恵。ガマンしといてくれるか」
「うん、分かった」
コタツ信じて、あたしは黙ってガマンすることにした。
あいかわらずチプロはゆっくりしか動かへん。
じっと待ってるだけやから、時間もぜんぜん進まへん。あせりたい気いばっかり出てくる。
「厳しいのだな」
「ええ」
艦長とザカリさんがつぶやく話なん信じひん。あたしはコタツ信じてる。絶対なんとかしてくれるはずや。なんせコタツやねんから。
せやけど……コタツらの苦しそうな声聞こえてきた……。
……ちゃう、この声はマルだけや。
そうか、コタツはあたしが心配せんように必死で声押さえとるんや。