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究極生物コタツ  作者: 吉川明人
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エラいもん来よった!!…⑥


「すでに一度威嚇を行ったあなた方に次の威嚇を思いとどまらせたのが、地球人子どもであるという事情がよく分からないのだが」


 あの人も見たことある、ウトーピー議長や。

 議長のおっちゃんの質問にコタツがこれまでのいきさつ簡単に説明した。


「なるほど、では長い間誰にも知られずに地球に潜伏していたというわけだな」

「イヤな言い方やけどまあええ、はっきり言うたるレグネイド知事。

 地球が連合に加盟したら500年はテクノロジー進歩するんや、これがどんだけ経済効果に影響するか考えてみ」


 コタツの話聞いたとたん、知事目え見開いていく。会議場ももっとザワついとる。


 さらにコタツがどんだけテクノロジーに違いがあるか……あたしにはよう分からへんこと自信満々に演説して、ようはめちゃめちゃ儲かるゆうのを強調した。

 レグネイド知事とかほかの州の知事も、そんだけ儲かるんやったら……とか、我が州の財政が……とか、計算しとる。


 トラタヌや。

 めちゃめちゃトラタヌやけど、こんだけ聞いたら、もう断われへんやろ。



「ただしその場合、地球も連合の法律に沿った法律に変更してもらわなければならない」

 ザカリさんに釘刺されて、会議場がまたザワめいた。


「我々だけでもう一度議論する時間をもらえないか。出来るだけ前向きに検討したい」

 ウトーピー議長の提案にほかの人らも賛成みたいや。レグネイド知事も反対せえへん。



「コタツ兄の話で、地球人の態度がまるで変わった」

「そらそうやろ。

 地球は普通の星との交渉みたいに銀河系の平和とか倫理の話したかてあかん。まず、どんだけ儲かるかが先や」

 コタツが知事のおっちゃんらに聞こえんようにこっそり言うとるんは、あたしには聞こえへんねん。


「それではひとまず話は地球代表の方々にお預けするとして……」



 Liru! Liru! Liru! Liru! ……!!



 いきなりザカリさんの言葉さえぎって、電子音が鳴り響いた。


「なんやとぉ!!!」コタツが叫ぶ。

 マルまで毛え逆立てるほどビックリしとる。


「どないし……」

「銀河連合の第1級緊急警報 “コール・ゼロ” や!!!!」

 ……あわててんのは分かるけど、なんやろう?



「この呼び出し音は第1級緊急警報なんや!」


「だから、それなに?」


「非常事態専用コールや!

 よっぽどのことでもない限り、鳴らすだけでも重罪になるほどの警報なんやぞ!」

「な、なにがあったん?」

「今ザカリが聞いとる。ちょっと待っとけ」


「コタツ前リーダー! マル現リーダー! 大変です!!」

「大変なん分かっとる! なんや?!」


「ツェプロドゥーファです!! 太陽系外部に待機していた本隊が、恒星圏内にツェプロドゥーファの出現を確認しました!」


「ツェプロドゥーファやと!!!」

「ツェプロドゥーファだと!!!」


 コタツとマルが同時叫んだけど……チプロなんとかってなに?


「交渉どころやない。緊急事態や」


「聞いた通りツェプロドゥーファが確認された。これより我々の特使船を使い、なんとか対処を試みる。

 安心しろとは言えないが、出来るだけのことはするつもりだ」


「な、なんのことかねそのチプロというのは!?」

「説明しとるヒマない。一瞬の遅れが命取りなんや。それこそ地球まるごとなくなるぞ」


「あたしも行く!」

「遊びに行くのではない誠恵殿! 命がけなんだぞ!」


「分かってる……そやけどコタツ行くんやったら……命がけなんやったら、あたしも行かな」

「ほんなら来い! どうせ言うてもきかんのや。時間ない」


「本当に地球の危機というなら私も連れていってもらえないか」

 レグネイド知事が言い出した。


「おまえなに聞いとんねん。命がけや言うてるやろ。

 ワイらが失敗した時に誰が先頭に立ってパニックしとるもん誘導したらなあかんねん。

 全滅はするけど、リーダーが直前まで不安除いたらんとあかんやろ」

「だからこそだ。状況を地球に報告して対処法が考えられるかもしれない。

 私はアメリカ州の陸海空軍すべての権限を持っているのでリアルタイムで対応できる!」


「ほんなら来い! 地球で応答すんのはウトーピー議長でええな?」

「詳しい事情は追ってうかがうとして、地球連合議長としてできる全権をもって対処します」


「頼むで。行くぞ!」

 コタツのかけ声と同時にみんな特使船の中に移動してたどころか、もう地球から離れつつあった。


「うわ! めっちゃ早い。

 うわ! もう月通り過ぎた!!」


「当たり前や。この船に使ことる推進システムはヒカリちゃんどころやない。

 艦長おるか、状況どないや?」


「ツェプロドゥーファは現在、海王星付近を移動中。本艦到着まで17分」


「おしっ! 全員安心せえ、あと17分は命あるぞ」


「17分? 恒星圏内はあんまりスピード出したらアカンのんちゃうん?」


「突っ込みどころそこか誠恵。大丈夫や。ソトバ級の船やぞ」


「よう分からへんけどすごいんやなあ……」


「それで、チプロというのは一体なんなのかね? どう対処すればいいのだ?」

 知事がザカリさんに聞いてる。


「いくつもの恒星から出ている太陽風などがたがいに影響しあって自然発生する巨大な重力と磁場と熱のかたまりです。

 その内部は絶えず高加速光子崩壊が起こっており、地球で例えるなら宇宙規模のハリケーンです。

 しかし、ツェプロドゥーファの被害はハリケーンをもはるかに凌ぎ、別名『星喰い』とも呼ばれています」


「高加速光子崩壊? なんだそれは。

 いや、それも我々の知らない技術だな。それより星喰いとは?」


「ツェプロドゥーファが近づいた伝導率の高い地面のある惑星は、ツェプロドゥーファから伸びる巨大な腕によって一瞬で焦土と化し、死の惑星へと変えられてしまいます。

 もし本体に触れれば丸ごとごとえぐられて、素粒子レベルで分解されます。

 過去にいくつもの惑星がツェプロドゥーファの被害によって、数百億の命が失われました。

 近づくものすべてが同じ危険にさらされる銀河連合でも最高レベルの警戒すべき自然現象です。

 あなたがた地球人はまだ連合に加盟してはおられませんが、ツェプロドゥーファ被害は連合加盟・非加盟に関わらず人道支援として対処することが義務付けられています。

 もっとも、義務付けなどしなくとも、できることをするのが当前ですが」


 ザカリさんてええ人なんやなあ、あたしもできることなにかせんなあかんなあ。


「おしっ!! 見えてきたぞあれがツェプロドゥーファや」


 窓から見える赤とオレンジと紫が混ざった、めちゃめちゃでっかいかたまり……星より大きいカミナリの玉……。


 もう、声も出せへん。


 ……エ、エライもん来よった!!


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