黒幕が出てきよった!!…④
「なんか見た目マヌケやな。究極言うんやったらコタツみたいに可愛いかったりカッコよかったりせんとあかんわ」
「アッツパッタ型だな」
「あれってアッツパッタ型って言うん?」
「いや、地球で例えるならバクテリオファージに近い。
ロボットではなく細菌に感染して増殖するウイルスだが」
「なんや分からへんけど、気持ちわるいもんやな?」
「形状から見て全方位へのレーザー発射が可能な移動砲撃ロボットだろう。オレから見れば旧ロボット開発時代の遺物だ」
「うるさい! ええい、アラキデ6号。侵入者を捕らえろ。殺してもかまわん!」
オッサンに言われたとたん、ピーナツはこっちにシャカシャカ近づいてくる。
イヤやあ、意外に早い。
「机の下にでも隠れていろ!」
言われたとおり机の下にもぐり込んだけど、コタツ心配や……コタツも吼えとるし、ものすごい音してて、こわあて出られへん。
……せやけどちょっとだけ。
そうっと顔出したとたん、上からピーナツがガッシャンって降ってきて、あたしとまともに顔(?)が合うた。
「誠恵!!!」
上から降ってきたコタツの爪が、ピーナツの頭切り裂いたと同時に、ピーナツのレーザーがあたしのほっぺたかすめた。
髪の毛ちょっと切れたけど、コタツが角度変えてくれへんかったら……顔面直撃しとったところや。
「……あ、熱っつう。アカン、今のでメガネどっかいってもうた」
「これか?」
コタツがどっかから、くわえて持ってきてくれたんは……。
「あっ、それや。ありがとう! あ、あうぅ」
せっかく探してきてくれたメガネは、片方のつるが切れて、レンズも割れてた。
使えへんことないけどあんまり使いもんにならへん。
「どうしよう。いつもやったら予備持ってるんやけどカバンどっかいってしもたからあらへん。
メガネ無いとあたし、20センチ先もハッキリ見えへんねん」
「ちょっと貸してみろ」
コタツにメガネ渡したら、なんやジーッと見てフイッとあたし見る。
「近いものは作れる」
「へ? どうやって?」
「見ていろ、と言っても見えんか」
ハッキリ見えへんけど、コタツの爪がニューッと伸びてメガネの形になっていく。
「かけてみろ」
「うわ! ハッキリ見えるわ。これまでのんより見えるくらいや!」
「材質と形状を調べ、オレの爪の角質層を利用した。ちょっとやそっとで壊れる心配はない」
「うん。ありがとう! せやけど……」
血いは出てへんけど、ほっぺた焼けるみたいに痛い……って、焼けたんやって。
こんな時でも自分でツッんでるのイヤや思てたら、コタツがひざに乗ってキズなめてくれる……。
「安心しろ誠恵。オレたちのだ液には強い殺菌効果と治癒効果が認められている。
この程度のキズなら跡も残らず消える」
感動的やったんが一気に覚めてもうたわ……せやけど、痛みなくなった。
あれ? そう言えばピーナツは……いつの間にかグシャグシャに潰れとった。
「うわ! コタツ、その目なに?」
ずっとまん丸うて可愛らしかった黒目が、ネコと違ってななめヨコに怒ったみたいに吊り上がって細うなってて、コ、コワイ。
「……作ったばかりだが、少しのあいだ、すまない」
目のことはなんも言わんと、スゴう静かに言いながら、コタツはあたしのメガネ外した……あ、もうなんも見えへん。
見えへんけど……たった今、コタツがおったところから『ナニカ』が、ものスゴ吼えながら飛んでいった。
……体中からなんやいっぱいヘンなもん出てて、体も何倍も大きい……そやから、アレはコタツやないねん。
「うあ! ぎひゃあぁぁぁぁえああぉぉ!!!」
コワイとかくらいやったら絶対出せへん絶望的なオッサンの悲鳴と、機械の壊れる音……あたしも頭抱えて床に伏せるしかあらへんからなにが起こってんのかさっぱり分からへん。
……て、急に静かになった。
……終わったんかな?