第一章 歓声
呼吸の乱れが体育館に響く、相手チームの得点だ、これでまた同点になった。
試合時間はあと三分、俺の親友の遊がパスを待っている、やっと相手チームからボールを奪った!
俺の親友の遊がボールを受け止める。
スリーポイントを狙ってシュートを放つ、ボールが入った瞬間、ブーーッとブザーがなる。
観客席から大歓声が響いた。
胸が熱くなって、喉が痛くなるほど、叫んでいた。もちろん俺も歓声を上げていた。
この瞬間がずっと続けばいいと、本気で思った。
選手達は飛び上がったり、抱きついたり、みんな嬉しそうにはしゃいでいる。
「ありがとうございました!」
双方の挨拶が終わったあと、うちの学校の選手全員が
「なんだこれ?」
「お前もか?」
「全員だ」
とざわついている
番前に座っていた俺には見えた、全員の右手首内側に赤い文字でと書かれているのが
「なんでこんなのが?全員?」
反対の手首の内側を見た選手たちの手首には、それぞれでかでかと「耳」「腕」「頭」などの赤い文字が浮かんでいる。
会場も不穏な空気でざわめき始めた、
手首の数字が残りになった、遊の手首には首と書いている。
遊がこっちに走ってくる
「なあ、涼!これ何かわかるか?」
俺に両手首の内側を見せてくる遊。
「触らせて?」
と言って触ってみると手首に直接書いたみたいに、微かに発光している。
「なあこれ残り十になってるぞ?」
「首ってなんだろう?意味がわか……」
そこまで言った瞬間、何かが裂けるような音がした。
最初は誰かが爆竹でも鳴らしたのかと思った。
次の瞬間、遊の首が内側から膨れ上がった。
皮膚が耐えきれずに裂け、骨が砕ける音がした。
首が爆ぜた。
肉片と血が辺りに飛び散った。
俺の顔に温かいものが、べシャリと貼りつく。
息を吸った瞬間に鉄の味が口の中いっぱいに広がった。
遊の顔は、もうそこになかった。
それが遊だったことに気づくまで、数秒かかった。
まだコート付近にいた他の選手たちも身体のあちこちの部位がなくなっている。
体育館の天井にボールのように貼り付いた手。
耳が破裂した選手。
頭が破裂した選手。
俺と周りにいた人たちは血まみれ、肉片だらけでお互いに顔を見回した、床にボールが転がっている。
違う。
遊の首だった。
とめどなく血を噴出している。
「ぎゃあああああ」
「うわあああああ」
とそれぞれに叫び出した。
一斉にみんなが出口に押し寄せる、俺は遊の首に向かって
「遊」
と泣くことしか出来なかった
その後すぐに、現場検証や聞き込みが行われた。
だが俺たちと食い違う供述をしている者もいた、未成年者は全員、誰がどこを吹っ飛ばされたのかが見えていた。
成人している者には、何もなかったように見えていた。
このままでは負傷した選手たちも出血多量で死んでしまうと思われた時、校長と用務員がこっそり来て
警察に何かを話し、負傷した生徒たちを別の場所へ運んで行った。
次の日は遊のお通夜だった。
幼なじみの理子も泣きじゃくりながら来ていた。
俺はまだ現実を認識出来ずに、あれ以来泣くこともできずにいた。
棺桶は閉じたままだった、遊とこんな別れ方をするなんて思ってもみなかった。
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