陰キャ先生は学校に行きたくない!
陰キャ先生×夢のない新入生
「…背景になりたい」
このまま倒れていたら、景色の一部になれないだろうか。
「木になりたい」
また、呟く。
立派な先生になりたい、生徒たちを導く、ジャンヌダルクみたいな凄い先生になりたい。
そう思って、私は先生になった。
陰キャ、という欠点があった。
でも、環境が変われば私も変わるはずだ。先生になったら、ジャンヌダルクみたいな、はきはきとした先生に。
でも、
「学校に行きたくない…」
このまま倒れていよう、もしかしたら枝に転生できるかもしれない。
「今日も休もうかな、よく考えたらお腹痛いし。
主担任なんだけど、お腹痛いしなぁ」
「夢、夢か」
僕はそう呟き、ため息を吐く。
「わからない。
僕は、何になりたいんだ?」
昨日までは、漠然と、プロの卓球選手になりたいと思っていた。
県大会に進めたことは一回もなかった、地区の予選で、せいぜい一回勝つくらい。
けど、それなりに練習していたら、それなりにプロになれるんじゃないかと信じていた。
『ここの高校に卓球部はない』
昨日の入学式に、知った。
「本当、仕事、どうしよっかな」
とりあえず、部活考えないと。全生徒強制だし、はーあ、めんど。
「てか、主担任、今日は顔見せろよ?」
入学式のあった日は体調不良で休んだけど、僕のクラスの主担任。
僕は、学校の中に入ろうとした。
だが、異変に気付いた。
人が、玄関で倒れている。
てか、寝てる?
スーツを着ている。
背は小さく、髪も短い。
スラリとして。
仰向けになって、目を閉じている。
「か、可愛い…」
思わず、そう言ってしまう。
聞かれなかったか、ドキドキしてしまう。
新米教師だろうか、僕と同じ高校生と言われても違和感はない。肌もスベスベで。
そして、僕は気付いた。
「コレ、僕の主担任じゃない?」
昨日、休んだ先生は1人。
こんな可愛い先生、目に入ったら必ず覚える、忘れる訳もない。
「枝になりたい…」
僕のクラスの主担任は、枝になりたいらしい。
END.
「いや、終わらないよ!?」
僕は首を横にブンブンと振る。
現実を否定しても変わらない。
「お腹痛い…」
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「ハッ」
カッ! と先生は目を開く。
「お腹痛いんですよね、保健室行きましょうっ」
「ちが、ちが」
「僕が支えますから、早くっ」
「ちが、ちが」
僕は走って近づき、先生に触れようとする。
「違うのっ! 学校に行きたくないのっ!」
「先生なのにっ!?」
てか、本当に先生なんだよな?
不安になってきたよ、僕。
「皆を導く立派な先生になりたい、そうは思うの」
目標が高い先生だ。
「けど、高校生が怖くって」
高校の先生なのに?
「主担任とか、文芸部の顧問とか任されたけど、ムリだよ、私。人間怖いよ」
やっぱり主担任だった。
「よく考えたらお腹痛いから帰る」
それは精神が原因では?
「枝になる」
枝になりたくて仕方ないらしい。
…。
可愛いのになぁ…。
めっちゃ陰キャじゃないか。
僕は先生の肩を優しくポンポン、と叩く。
「学校の玄関まで来れたじゃないですか。それでも立派ですよ。こんな立派なことができるんですから、皆を導く立派な先生にもなれますよ」
「本当?」
キラキラとした目で見られる。
ありがとう、アドラー。
僕は心の中で感謝する。
やっぱ可愛いな、この先生。
中身も知りたくなってきた。趣味とか、特技とか。可愛いだけじゃダメなんだ。ヒトなんだから。
先生は立ち上がり、
「じゃあ、入ろっか。
お仕事頑張る♪」
ルンルン、と先生は入っていった。
「将来の夢とかは、ないんだけど」
とりあえず、文芸部に入ろう。
僕は、思った。
高校生怖い、か。
「僕も高校生なんだけどなあ」
優しい雰囲気でもあるのだろうか、分からない。
出会いが出会いだったから、かもしれない。
ありがとうございました!




