本気
シーラが立ち去った後、ルルの啜り泣く声だけが聞こえる。
レアルタはルルとシャミの肩にそっと手を置き「二人とも中に入ろう」と導いた。
その様子を一人離れて見ていたハウスは罪悪感を抱かずにはいられない。
するとボンドがハウスに話し掛けてくる。
「まさか本当に【シーラ】を屋敷から出ていかせるとはな」
「ん?あぁ、彼女の協力もあってだがな…それにしても【シーラ】ね…」
ハウスは顔から少し笑みがこぼれる。
「あ?何笑ってるんだよ」
そう言ってボンドも少しの笑みをこぼしながら目を反らした。
ボンドとシーラは以前の呼び方を聞いてもさほど仲良く無いのは明白であったが、一緒に過ごした人物が立ち去ってしまった時の喪失感が無いといえば嘘になる。
「だけどこれで伝わった筈だ、俺が本気だということが」
そう自分に活を入れるよう誰もいなくなった屋敷の門を見つめて呟いたハウスの横顔をボンドは黙って見つめていた。
「で、次のターゲットだが…」
「まぁ、待てよ。今日はもう疲れただろ?その話は明日で良いだろ」
「確かにそうだな…ちょっと部屋で休んでくる」
そんなやり取りを終えてハウスが立ち去ったのを確認してからボンドは声をあげる。
「俺に何か用か?」
その声を聞き、いつの間にか身を潜めていたレアルタが姿を現した。
「ボンドお前に一つ聞きたい事がある…」
ーーー
暫くした後、ハウス達より大きな喪失感を受けた使用人達は仕事に戻り、リリスの夕食に立ち会っていた。
「リリス様、お食事でございます」
そう言ってレアルタは食事を差し出す。
ハウスが来てからというもの食事を取る際には声を掛けて二人で食事をしていたが、今回リリスはハウスを呼ぶことなく食事を始める。
使用人達の重苦しい空気を感じて「食事が不味くなるから下がっていいわ」とリリスは指示を出した。
使用人達が下がる中、レアルタだけが残りリリスの様子を伺う。
「何か言いたい事でもあるのかしら?」
その言葉を待っていたかのようにレアルタは自分の意思を伝える。
「リリス様、シーラがいなくなり彼が本気でリリス様を殺害しようとしているのは明白です」
「…」
「私は彼を殺します」
「…」
「よろしいですね?」
「…」
リリスは無言を貫いたというよりも何も言えなかった。レアルタはリリスに一礼をしてその場を立ち去る。
その顔は既にハウスを殺害する算段がついているようであった。
リリスが食事を終えた頃にやってきたのはシャミだ。「どうしたの?」と優しく聞いたリリスに対して拙い言葉で話す。
「ルルがずっと泣いてて、僕は一緒にいてあげたかったけど一人が良いって…」
「そう、あの子は泣き虫だからね」
「何て言ったらいいかわからないけど、皆がいつもと違うのは嫌な感じで…今日はリリス様の所で眠っても良い?」
そう話を終えたシャミはいつもより小さく、彼も不安なんだとリリスは感じた。
「いいわよ、今夜だけね」
そうリリスは不安を取り除く為、優しく微笑むのだった。
ーーー
厨房では誰かが静かに会話をしている。
「シーラが屋敷からいなくなったぞ」
「????」
「アイツなら本当に魔女を殺せるかも知れないけど、どうする?」
「????」
「わかった、指示に従うよ」
「????」
「そうだよ、魔女が死ねば二人ともやり直せるんだ」
ハウスの行動でそれぞれの思惑が動き出すのであった。




