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ロクでなしの魔女  作者: 木介


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7/15

勘違いと短い信頼

【登場人物】

・ハウス

どうすればシーラと二人きりのなれるかボンドと相談した結果、リリスとシーラを今日中に屋敷から出ていかせる事が出来るか賭けをする事となる。


・シーラ

かつて恋人を救うためリリスに顔を焼かれたメイド、再び屋敷を訪れた理由は誰も知らない。


リリスとの朝食を終えてハウスは一人、応接室にいた。約束した以上直ぐにシーラが来る事は分かってはいるがこの時間が落ち着かず色々と考えてしまう。


十中八九、話をすればシーラは屋敷を出ていくが今日中に出ていくかどうかは確証が無く、大きな賭けに乗ってしまったと今更ながら後悔をしている。


だが賭けに勝った時のメリットは大きい、リリスにお願いを一つ出来るのだ。その反面、負けた時は何をお願いされるのかと同じ事を繰り返し考え思考がまとまらない、まるでこの短い時間で一日を過ごしたかのような感覚であった。


そんな事を考えていると【コンコンコン】とドアをノックする音が聞こえる。

ハウスは今日中に屋敷を出ていってもらう考えなど無かったが、ぶっつけ本番でやるしかないと覚悟を決めて「どうぞ」と入室を促した。


「失礼します」と入ってきたシーラは鉄仮面のせいで感情は勿論、何処を向いているのかでさえ分からない。

ハウスはとりあえず「どうぞ」と席を促し話を始めた。


「あー…、リリスからどう聞いてる?…」

「こっちとしてはしばらく時間が掛かる話をしようと思ってるんだけど、大丈夫かな?…」

「今、短い時間しか取れないなら改めて時間が欲しいんだけど、どうかな?…」


やけに早口で捲し立てる様に発言を繰り返すこの状況にハウスは気付き沈黙した。

こうなってしまった原因はリリスとの賭けがあるせいか、相手の表情が見えない為かと一呼吸おく、すると目の前の鉄仮面に情けない自分の顔が映った。

相手の様子を伺い焦っているような表情を見て原因は自分であり、こうなる事を見越してリリスは賭けを提案したのかとさせ考え始める程であった。


沈黙を破ったのはシーラの「良いですよ」という発言だ。

唐突な発言であった為、ハウスは「えっ、何?」と聞く姿勢を整える。


「話が終わるまで居て良いとリリス様に言われてます」


ハウスが焦り、捲し立てるようにした話への返事はその言葉だけで充分であり、シーラの大人な対応に頭が下がる。


もう一度呼吸を整え、目を閉じ、暫くの沈黙を貫く。

シーラの大人な対応を見て、こっちの言葉を待ってくれると信じての行動だ。


そして始めた彼女を屋敷から出す話を。

まず取り出したのは一枚の紙「これは?」と聞くシーラに「これはティーダの日記、その一部です」と先程とは違う口調で話す。

この屋敷に来てからめられてはいけないと敬語など使わなかったが彼女に対しては使うべきだと感じたからだ。


シーラは手に取り読み始める。


『私が今このような病気から逃れられないのはかつて苦しみの中にいた愛する彼女を見捨てたからだ。

私の為にライルの元へ行き助けようとしてくれた彼女。

私の為に魔女の元へ行き病気を治してくれた彼女。

私の為に顔を焼かれた彼女。

そんな彼女を傷付け、一人、のうのうと暮らしていた私に天罰が下ったのだ。

もし叶うなら、もう一度あの時に戻り、愛する彼女を抱き締めて二人で過ごしたい。

そうすれば大病を患う事になっても私は幸せであったと思える。

また君に会いたい。

君に会って謝りたい、君に愛を伝えたい。

今度こそ必ず守ってあげると誓いたい。』


シーラが読み終えたのを確認しハウスは言う。


「その紙は約十年前の最後の日記になります。

他のページにもこのような文章が毎日書かれていました」


「彼は苦しい日々を毎日、貴女あなたを思いながら過ごしていました。最後のページを書いた後、容態が急変し現在は病院で管に繋がれ死を待つだけの人生です」


「十年間です。彼は今もなお死ぬ前に貴女あなたに会いたい一心で待ってるんです。」


少しだがシーラと話して分かった事がある。

彼女は頭が良くこちらの意図を察してくれている。

それにリリスから聞いた話でも彼女はこの男の為に動いたのだ。

見捨てられたとはいえそんな優しい彼女が元恋人が苦しんでいるのを放っておく訳が無い。


「そ???なし??わり??か」とシーラは何か言った。


「えっ?何?」と予想外の言葉にまたしても聞く姿勢を整える。

ただ今回は先程とは大きく違い、聞こえてはいたが理解が出来なかったのだ。


ハウスの反応に今度はゆっくりとシーラは言う。


「それで、話は終わりですか?」


こちらが何も言えずにいるとシーラは席を立とうとした為、声をかける。


「終わりって、何とも思わないんですか?十年間も貴女あなたの事を待ってるんですよ?」


この質問に対してシーラは席から立ち上がりながら言う。


「私の事はどうやって調べたんですか?

リリス様から聞いたのかも知れませんが、屋敷に来る前から準備をされていたようですね。

ですが一つ勘違いをされているようです」


(確かにリリスから聞くよりも前、ある人から聞きシーラの事は知っていた、知っていて確認の為に改めてリリスからシーラの事を聞いたんだ、何を勘違いする事があるんだ?)


また何とも言えない顔を晒しているハウスに対してシーラは教えてくれた。


「この屋敷に私がいる理由です」


「この屋敷にいる理由って?」


「ハウス様は勘違いしているようですがボンド様を見てわかる通り、この屋敷の者達が死なないのは心臓を取られているからではありません」


「…」


「この屋敷では時間が止まっているんです」


「時間が止まってるって、毎日朝から夜まで過ごしているのに?」


「それは外の話ですから」


「…そうだとしてそれが何の関係があるって言うんです」


「私がこの屋敷に来たのは八十年前、当時私は十八歳でした」

「そして現在、本来であれば私は九十八歳という事は幼馴染みであるティーダも九十八歳という事になります」

「私がリリス様にした願いは顔を失う代わりにティーダの病気を治す事です」


ここまで淡々と説明され、なんとなく嫌な考えが頭を過った。


「病気を治すという事は病気に掛からないという事ではありません、病気では死ねないという事です」

「病気に掛かっては治るを繰り返す、私がこの屋敷にいる限りそれは永遠に続くんですよ」


「彼が十年間私を待ってるんじゃない、私が彼を十年間苦しみ続けているんです」

「これが私の復讐、これが私が屋敷にいる理由です」


鉄仮面で表情は見てとれなかったが八十年抱えてきたその思いはとんでもない迫力を込め怨念と呼べる程の言葉となっていた。


そのまま立ち去ろうとするシーラに対してハウスは一言、はっきり聞こえるように言った。


「それで良いのかな」


案の定シーラは立ち止まり「どうゆう事です?」と聞いてくる。


ここからがハウスにとっての勝負であった。

下手をすればリリスとの賭けにも負けて、重要な情報がリリスへ伝わる危険性がある話を始める為だ。


「俺は実は…」

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