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ロクでなしの魔女  作者: 木介


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13/15

投げたグローブ

【登場人物】

・ハウス

魔女に会うため屋敷を訪れる。

コシネロの協力を断った後、レアルタに襲われる。

機転を利かしてリリスの部屋へと逃げ込んだ。


・リリス

屋敷の魔女。

血まみれのハウスが突然部屋へ入ってくる。

彼の願い通りに側にいてあげる事にする。


・レアルタ

屋敷の執事。

ハウスを殺害しようと襲ってきた人物。

計画的に行ったが失敗に終わる。


・ボンド

屋敷の門番と庭師。

顔と身体が分離しており腕がたつ。

コシネロがルルの事を知っていた事から二人は組んでいる可能性がある。

ハウスがベッドで目を覚ました時、部屋は薄暗く静かだった。

隣にはリリスが座り本を読んでいる。

彼女の横顔を小さなランプは照らし、その美しさを引き立てていた。


「あら?起きたのね」


リリスは目線を本に落としたまま話し掛けてくる。


「ここは?」


「ここは貴方(あなた)の部屋よ」


「俺、確か襲われて…ッ!」


思い出したかのように身体が痛みだす。


「今はまだ眠りなさい」


そう言ってハウスの目の上に置かれた手は暖かく、まるで魔法にかけられたかのようにハウスは再び眠るのだった。


「はっ!…ッ!」


「馬鹿やろう!突然起き上がるやつがあるか!」


起きて早々にボンドから怒られた。

部屋を見渡せばやっと起きたと嬉しそうにはしゃぐシャミと机の上には呆れ顔のボンドがいるのみでリリスの姿は無い。


「あれ?リリスは?」


ハウスの第一声はそれであった。


「よくあの女がいた事知ってるな」


とボンドが話を始めたのもつかの間「リリス様にも教えなきゃ!」と部屋から出ようとするシャミを「今は休んでいるんだから後にしなさい」とボンドの身体が制する。

ハウスが状況をいまいち把握していない様子を察してかボンドはあの後どうなったのか話を始めた。


ーーー


銃撃音と血の匂いでシャミは誰かが争っている事にすぐ気がつき、遠目から二人を見ていたらしい。

その後ハウスが扉を壊しリリスの部屋へ侵入するのを見てシャミは急ぎ現場へ向かった。

途中ハウスを追いかけてきたレアルタとすれ違ったが、シャミの速度には追い付かず暗闇でレアルタを真っ直ぐ見つめる瞳を見て彼はそれ以上、深追いをして来なかったらしい。


シャミが部屋に入ると壁に寄りかかり意識の無いハウスと寄り添うように座っているリリスがいた。


「リリス様大丈夫!?」


シャミの慌てた様子にリリスは「部屋に入る時はノックしなきゃダメよ」と冷静に応えた。


「ごめんなさい…で大丈夫?」


「私は大丈夫よ」


「その人は?死ぬの?」


「さぁ?どうかしら?」


「どうしたらいい?」


「私は側にいてって言われたから側にいるだけ、シャミの好きにしていいわよ」


「じゃあボンド呼んでくる!」


そう言って彼は急ぎボンドを呼んできた、ハウスの状態を見てボンドが手当てをし現在に至る。


「そうだったのか…、ありがとう二人とも」


ハウスは身体の痛みなど気にせず、二人に頭を下げ感謝を伝える。


「リリス様にもお礼を言わなきゃいけないよ!」

「リリス様は君にお願いされたから三日三晩、側を離れなかったんだからね!」


シャミのその言葉に衝撃を受けた。


「三日三晩?」


「死の淵を彷徨ってたんだ、三日で回復してたら良い方だろ」


「そうか三日も…」


そう呟いて物思いにふけっていると「リリス様にお・れ・い!」とシャミが頬を膨らまし怒っている。


「ごめん、ごめん、リリスには後で必ず伝えておくよ」


この言葉にシャミは満足し笑みを浮かべた。


【コンコンコン】


ノックの後、部屋に入ってきたのはレアルタだ。

その姿を見て心臓が跳ね上がり身体中に痛みが駆け巡る。


「レアルタ、何か用か」


「目を覚ましたと聞いてね」


ハウスの事を横目で見たボンドは「本人はまだ話せそうにないが」と遠回しに退室を促してくれている。

ハウスはここで彼に怯えて逃げる訳にはいかないと「いいよボンド、で何か用か?」と強気に振る舞った。


「そう、身構えないでも大丈夫です、私の暗殺が失敗した時点で勝ち目はありませんから」


「今の俺の状態を見てよく言うな」


怯えているのを悟られてはいけないと精一杯の睨みを利かせて応える。


「…冗談ではありませんよ、何せ私に未来は見えませんから」


キョロキョロと会話の流れを見守るシャミとは対照的にボンドは落ち着いて黙っている。

その様子を見てレアルタはもちろん、ボンドもハウスの能力についてある程度察しがついている事が分かった。


「このまま続けても?」


「あぁ、構わない」


貴方(あなた)の短剣あれは攻撃をする為の物では無く少し先の未来を映している、違いますか?」


「…」


「話を続けましょう、だからこそあの独特な構えです、見えた未来に拳銃でタイミングを合わせて撃てばいい、それが貴方(あなた)の戦い方だ」


「正解だ、よく分かったな」


「ボンドと戦った時の話は以前に彼から聞きました、それに戦ってる最中貴方(あなた)はこちらでは無く短剣ばかり見ていたので」


「なるほど、手の内は分かっていたと」


「厄介なのはその切れないジャケットです、着ていない部分を狙うしかない」

「だからこそ最初に試してみたかった私のナイフが通用するかどうかを」


「私のナイフって…あの見えない武器か?」


「左様でございます」

「私のナイフが通用した時点で暗殺は成功すると思ってました、あとは警戒させて忍び寄るだけですから」


「ですが予想外の事が起こりました、貴方(あなた)の拳銃と靴です、それらも特別な物みたいですね」


「まぁな、無策で魔女を殺すなんて大層な事を言うわけがないだろ」


レアルタは「確かにそうですね」と小さく呟きその頬は少し笑っていた。


「まずあの拳銃ですが単発式の作りはこちらの油断を誘う為、弾は一定の時間が経てば自動で装填されるのでしょう」


「次にあの靴、剣や銃よりも決定的一撃として使える代物です、爆発的な脚力の向上を促した一撃必殺の蹴りとでも言った方が良いでしょうか?私には逃げる方法で使いましたが、油断して近付けばやられていたのは私の方ですね」


「そこまで分かっていて自分が負けると?」


「えぇ、私は得意とするのは闇討ちですから正面から貴方(あなた)と戦えば勝ち目などありません」


何処まで本気か分からないこの男をハウスは信じられずに見つめているとレアルタは手に付けていた黒い手袋を取り、ハウスがいるベッドの上へと投げた。


「勝ち目がないので決闘を申し込みます」


「え?」


「明日正午に正面入口で待っております」


「え?ちょっと待て決闘?」


その質問を無視してレアルタは部屋を出てしまった。

何が何だか分からないという顔をハウスはボンドに向ける。

するとボンドは「あの野郎、俺に取り持てって事か」とため息をつき、自らの身体だけ残してシャミと一緒に出ていこうとする。


「え?ちょっと待って俺はどうすれば…」


「あ?黙って寝てろ」


そう言い残して部屋を出ていく二人を見送り、一人部屋に取り残されたハウスは言われたとおりに眠るのだった。

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