次のターゲット
【登場人物】
・ハウス
魔女に会うため屋敷を訪れる。
宣言通りシーラを屋敷から出ていかせる。
・リリス
屋敷の魔女。
ハウスを気に入り屋敷での滞在を許可する。
ハウスの行動によって使用人達の心情に大きな変化を感じているが傍観に努めている。
・レアルタ
屋敷の執事。
ハウスより少し身長が高い白髪の老人。
ハウスを殺害する宣言をリリスにしている。
・シャミ
獣耳の子供。
8歳ぐらいの子で執事見習い。
リリスのお気に入り。
・ルル
黒いチョークが特徴のメイドで年齢は14歳ほど。シーラの事を慕っていたが、ハウスのせいで屋敷を出てしまいハウスの事が嫌い。
・コシネロ
屋敷の料理人で常に体調が悪そうな人物。
他の使用人達とは一線を引いており、シーラが屋敷を出ていく際にも姿を現さなかった。
・ボンド
屋敷の門番と庭師。
顔と身体が分離しており腕がたつ。
シーラが屋敷を出ていき、ハウスの実力を認める。
翌日、ハウスの部屋を訪ねる者などいなくなった。部屋を出ると使用人達の冷やかな視線を感じる、その視線を介さずに向かうのは屋敷の入り口だ。
「よぉ、今朝は遅い目覚めだな」
ボンドはそう普段通りの調子で話し掛けてくる、ふとボンドの身体が庭の手入れをしているのに気がつき「まぁな、で今日は訓練は無しか?」と挨拶代わりの話題を振る。
「使用人が一人減ったからな、やることがあるみたいだな」
「…」
「もしかして後悔してるなんて言わないよな?」
「そんな事は言わない、ただ別れが辛い気持ちは分かるからな」
「…そうか、で俺の所に来たって事はまた作戦会議でもするのか?」
「そうだな、次のターゲットについて話そうか、次のターゲットはルルだ」
「…何で?ルルなんだ?」
「俺がある程度の情報を持っているからな、ターゲットにしやすい」
「ふーん」
「で、お前が持っている情報とルルと二人きりになれる方法があれば教えてほしい」
そんな事を話していると突然ハウスの頭が叩かれた。唐突な出来事にハウスは階段から転げ落ちそうになる。
振り返るとそこにはボンドの身体がいた。
「はっはっはっ」と声を出して笑うボンド。
その光景を見て「何すんだよ!」と語尾を強める。
笑うのを止めたボンドは真剣な面持ちで言った。
「お前油断しすぎだ」
油断しすぎ、確かにボンドの言うとおりであった、シーラの件が上手くいき気が緩んでいたとハウスは反省する。
するとタイミングよくレアルタがハウスを呼びにきた。
「ハウス殿、お食事の準備が出来ました、お部屋までお持ちしますか?」
その言葉を聞いて俺も嫌われたなと改めて実感した。
「じゃあそれで頼む」とレアルタに伝えてハウスは部屋へと戻るのだった。
運ばれてきたのは食パンにバター、フルーツとヨーグルト、ハウスにとっては贅沢な食事であった。
「食べ終えたら使用人に声を掛けて頂くか、通路に置いてくだされば回収致します」
「それと…」
「それと?」
「大変言いにくいのですが、少しお身体汚れているように思います、一階に浴場がありますのでご活用下さい」
そう言い残しレアルタは部屋から立ち去る。
すぐさまハウスは自らの匂いを確認して、今朝の冷たい視線はこれも原因なのでは無いかと思い、自らの鈍感さを恥じるのだった。
ハウスは早々に食事を始め、ヨーグルトを食べようとスプーンを入れた時、中で何かにぶつかる違和感がある事に気付く。
その物をスプーンで持ち上げ確認をした所、白い四角い固形物であった。
この物体に見覚えがあるハウスは水で洗い再度確認をした、するとそれは折りたたまれた紙である。
すぐさま中を開き見てみるとそこにはハウス宛のメッセージが書いてある。
メッセージを確認したハウスは食事を続けた、決してヨーグルトには手をつけずに。
ハウスは食べ終えた食器を通路に置いて浴場へ静かに向かう。自らの匂いに気付いてしまったいじょう、その間はなるべく誰にも会わずに過ごしたい。
隠れる場所など無いが誰にも見つからないように動いている様は端から見ればかなり不振な行動であった。
無事に脱衣場まで着き、服を脱いだ。
一方でハウスは用心のため、黒いジャケットと短剣は浴場へと持ち込んだ。
浴場は全体が黒を基調としたデザインで、壁に付いているランプがそのオレンジ色の輝きで水面を美しく彩っていた。
お湯で体を流し、湯に浸かる。
この時ジャケットは濡れないように遠くへ置き、短剣は湯船の縁へとそっと置く。
気を抜く事は無くても、この瞬間は今までの疲れを癒してくれる安らぎの一時であった。
そんな一時を過ごし、立ち上る湯気を追うように天井を見つめていると不意にランプが消えて辺りが暗くなる、ハウスはすぐさま短剣を抜き右手で構える。
浴槽から出て近くに置いてあった黒のジャケットを左手で持ち、その後ろへ隠れるようにして身構えた。
そしてハウスは短剣を見つめ「あぁ、まずい…」と一人言葉を吐いて急ぎ脱衣場へ向かう、濡れているのを気にせず服を着ようと試みたその瞬間に脱衣場のドアが開きルルと目が合う。
「あっ、これはちがっ…」
「きゃあぁーーー!!!」
この後、使用人達からの視線は一層冷たくなったという。




