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ロクでなしの魔女  作者: 木介


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魔女の屋敷

光すら入らない暗い森の中をひたすらに男は歩く。

この男の名前は【ハウス】背丈は170cm程でその細い身体に無駄な脂肪は無く、必要な筋肉のみが付いている。

黒いジャケットに黒いズボンを身にまとい、黒い靴の側面には特徴的な黄色い横線が三本入っている、更に左腰には短剣、右腰には単発式の拳銃を携えていた。


通称【魔女の森】と呼ばれるこの場所は

命をかけてでも魔女に会いたいと願う者しか通れない道で方向感覚など意味はなく、自分が今歩いているのか、まだ生きているのかすら分からなくなってくる。


ハウスはその長く暗い森を何週間いや、何ヵ月いや、何年歩いたであろうかという時を得て屋敷へと辿り着いた。


「ここが魔女の屋敷…」


自然と呟き、屋敷を見上げた。

月明かりが差す屋敷の前にはハウスの倍近くあるであろう黒い大きな門が、来るものを拒むように閉まっている。

ハウスは大きく息をして呼吸を整えた後に覚悟を決めて門へ力を込めた、その力は凄まじく、まるで沼に沈んでいるかのような重い門をこじ開けた。


門を開ければそこから屋敷の入り口までは石畳が敷かれており、その道に沿って綺麗に整った植樹帯しょくじゅたいがある、まるで来客者を迷わせないように導いているかのようだ。

屋敷の扉の前には三段程の広い階段があり、華やかな扉の両端にはアンティークランプがぶら下がりこちらを照らす。

そして扉の横にはハウスの胸の辺りまである大きな燭台があり、その上には生首が置いてあった。


「何か用か?」


生首が目を開き、こちらに話しかける。

ハウスは驚き後退り、階段から転げ落ちそうになる。

その様子を見て生首は「はっはっはっ」と大きな声をあげて笑っている、何とも奇妙な光景だ。

馬鹿にするように笑い続けている生首に苛立ちを覚えながらもハウスは応えた。

「魔女に会いに来た」と、すると生首は「そりゃそうだろう」などとまたこちらを馬鹿にしたように大きな声をあげて笑う。

ハウスがこいつに構っていても埒があかないと思い扉へ手を掛けようした時。


「ちょっと待ちなよ兄さん、俺は門番も兼ねてここにいるんだ。その扉は鍵が無いと開かないよ」


チャリッという音のする方へ目を向けると今度は首の無い身体が鍵を持って階段の下にいた。

目の前の生首と首の無い身体を見て、どうゆう理屈か分からないが恐らく同一人物なのであろうとハウスは思った。


「自己紹介がまだだったな、俺の名前は【ボンド】鍵を開けて欲しけりゃ条件がある、俺を元に戻す手伝いをしてくれ、じゃなければ俺から鍵を奪うしか無いぞ」と偉そうに首だけのボンドが言う。


腕に自信があったハウスはその条件に対して「わかった」と返事をしたのと同時にボンドの身体から鍵を奪おうと飛びかかる。

予想外の行動の早さで呆気に取られた身体から鍵を奪う事は容易でこんなにあっさりと解決するものかとハウスは思った。


だが問題はここからであった、鍵を取られた身体は即座に小さな鎌を取り出し斬り掛かってきたのだ。

即座に避けようとするもその攻撃は速く、とても避けられるものでは無い、鎌はハウスの身体に当たり近くの植樹帯へ吹き飛ばされた。


その光景を見たボンドは疑問に思う

(何故斬れなかったんだ?)

ハウスを攻撃した鎌を見ても血痕は無く、服が斬れた様子も無い。

立ち上がったハウスの服にも傷一つなく、ハウスは独特の構えでこちらの動きを伺っていた。

その構えとは左手で短剣を逆手に持ち、交差した左手の前腕を土台に右手で銃を構えている、ボンドから見れば意味の無い構えを真剣にしている様子はあまりにも滑稽で堪えられずに笑ってしまう。


この時ハウスは考えていた。

この必勝の構えと相手の油断、どうすればこの危機を突破出来るのか思考を巡らせチャンスを待つ。


二人の間に緊張が走る…。


「はっはっはっ、はぁ~…」

「笑わせてくれた礼だ、一瞬で殺してやるよ」


瞬間、ボンドの空気が変わり、鎌を振り上げハウスに斬り掛かる。

その速度は凄まじく常人では鎌のくる場所が分かっていても避けきれない程の速度だ。

だがこの時は違った、バンッという破裂音と共にハウスは振り上げた鎌をピンポイントで撃ち抜き、弾け飛ばした。

一瞬の出来事にボンドが驚いているとハウスはボンドの身体まで近づき前蹴りをくらわせる。その衝撃は凄まじく、ハウスとは反対の植樹帯を超えて屋敷を囲む外壁まで飛ばされる程だった。

苦悶の表情を浮かべるボンドの首を持ちハウスが言う。


「頭だけならどこまで飛ぶんだろうな」


焦ったボンドは敗北を認め「わかった鍵を開けてくれ俺が皆に紹介するからさ」と都合の良い言葉を並べ始める。


「ここで見逃すのは貸しだからな」とハウスはボンドに告げてから、大きく息をして呼吸を整え扉へ鍵を挿した。

ガチャッという音を聞き、ゆっくりと扉を開け。

一歩、魔女へと近づくのだった。

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