009 初めての冒険者ギルド
「こうして依頼を見てみると、冒険者というよりも戦闘ありのなんでも屋って感じだな」
冒険者というから未知の地域を冒険しているのかと思ったらぜんぜん違った。その実態はなんでも屋兼魔物専門のハンターのようだった。ちょっとガッカリである。視線の先では多くの討伐依頼の依頼書が泳いでいる。
「ねえヒイロ、このゴブリン討伐なんていいんじゃない?」
「うーん……」
ゴブリン一体倒して、ゴブリンの右耳を持ってくると銅貨十五枚か……。
オレはこの世界の物価を知らない。というか銅貨十五枚ってどれくらいの価値なんだ?
「なあマリー、銅貨一枚ってどれくらいの価値なんだ?」
「え? あたしたちがいっぱい持ってる半銅貨の二倍の価値よ?」
そりゃ、銅貨を半分にしたのが半銅貨だからね。
「じゃあ、訊き方を変えるよ。たとえば銀貨一枚って銅貨何枚なの?」
「うーん。バラつきはあるけど、だいたい十枚くらいじゃないかしら? イナカ村ではそうだったわよ?」
「そうなんだ……」
銀貨一枚が銅貨十枚。バラつきがあるらしいがこのへんはわかりやすいな。
「じゃあ、金貨は?」
「え? どうかしら……。イナカ村では金貨なんてまず見なかったから、あたしもよくわかんない」
「そっか……」
とりあえず、めちゃくちゃ高いのが金貨って覚えておこう。たぶん、オレたちが普段使うのは銅貨や銀貨だろうし。
「こっちに薬草採取の依頼もあるけど、なんでゴブリン討伐?」
オレたちは王都の地理もゴブリンの位置も強さも知らない。なんでマリーは簡単そうな薬草採取ではなく、ゴブリン討伐と言い出したのだろう?
「ここで募集している薬草って、あたしの知らない物ばっかりなのよね。間違えて違う草を集めちゃう可能性が高いのよ。それより、ゴブリンの方がわかりやすいじゃない?」
「なるほど……」
マリーの言うことも一理ある。
なにも考えてないように見えて、マリーもいろいろ考えてるんだなぁ。
「それに、ゴブリンならたまにイナカ村にも悪さしに来てあたしも倒したことあるし、たぶん平気よ」
「なるほどね」
マリーのレベル3はゴブリンを倒して上がったのかもしれないな。
「OK。じゃあ、ゴブリンを倒しに行こう。まだ昼前だし、急げば森に行って帰ってこれるでしょ」
「わかったわ」
オレはまたカウンターテーブルに行くと、受付嬢さんに冒険者になりたいと願い出た。
「かしこまりました。もうご存じかもしれませんが、一応説明させていただきますね。当冒険者ギルドでは、冒険者の皆様に対してクエストを斡旋しています」
「はい」
派遣会社みたいな感じなんだろうか?
「クエストには難易度があり、難易度が高ければ貰える報酬も一般的には高くなります。ですが、クエストを失敗されると依頼人の方も私どもも困ってしまいますので、冒険者ギルドからの信用を目に見える形で冒険者ランクとして導入しております。お二人は新人なので、ペーパー級冒険者からになります」
「ペーパー級?」
「はい。ペーパー級はペーパー級までのクエストを受注することが可能です」
そういえば、依頼書にもなんとか級とか書いてあったな。それが依頼を受注するために必要な冒険者ランクなのだろう。
まぁ、実力がない者が報酬に目がくらんで高難易度の依頼を受けるのを防ぐ処置なのだろう。
「どうやったらそのランクが上がるのよ?」
マリーが問いかけると、待ってましたと言わんばかりに受付嬢さんがニコリと笑って口を開く。
「この冒険者ランクですが、クエストをクリアするごとに冒険者個人に冒険者ギルドからの信用ポイントが溜まり、それが一定を超えますと一つ上のランクに上がれます。お二人は今ペーパー級なので、次はホワイトウッド級ですね」
「なるほど……」
ようは冒険者ギルドで依頼を受けていれば勝手に上がるのか。実技試験とか筆記試験はないのかな?
「冒険者の皆様へ発行するクエストは、毎日朝七時にクエストボードに貼り出されます。割のいいクエストは皆さん狙っているので、がんばって早起きするといいクエストに巡り合えるかもしれませんよ」
じゃあ、オレたちがさっき見ていた依頼書は、もうわりのいい依頼が取られた後の残りってことか。
明日は早く来よう。
「説明は以上になります。同意いただける場合はこちらにお名前を書いてください」
「あの、冒険者を辞める時はなにかあったりしますか?」
「いいえ。冒険者ギルドに届け出るだけで大丈夫です。違約金なども発生しません」
「じゃあ、もし依頼を失敗した時は、違約金は発生しますか?」
「違約金が発生するクエストとそうでないものがあります。依頼書に書いてありますので、そちらをご参照ください」
「ありがとうございます」
とりあえず冒険者になっても大丈夫そうかな?
「代筆なども承っておりますのでお気軽にどうぞ」
「自分で書きます」
オレは羊皮紙の切れ端にヒイロと書く。オレの隣ではマリーも羊皮紙の切れ端に自分の名前を書いていた。
「これでお二人は今日からペーパー級の冒険者になります。少々お待ちください」
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