008 冒険者ギルドにゴー!
「ありがとうございました!」
「ああ……」
マリーと二人して暗い顔をして喫茶店を出る。
さっそく王様から貰った準備金の五分の一も使ってしまった……。
全部半銅貨で払ったから店員さんから嫌な目で見られちゃったよ……。
ちょっといいところでお茶を二杯飲んだだけでこれだ。このお金はアテにならないね。早く自分たちで稼ぐ手段を探さないと。王都を出発すらできずに王都で物乞いになる未来がチラつくよ……。
とはいっても、オレたちは初めて王都に来た身だ。王都に頼れる知り合いなんていない。果たして仕事が見つかるかどうか……。
「はぁ……」
お先真っ暗で思わず溜息が漏れてしまう。
「溜息なんて吐かないでよ。幸せが逃げちゃうじゃない」
マリーが嫌な顔をしてオレに言う。
「幸せねぇ……。幸せよりも今は仕事が欲しいよ」
「仕事が欲しいの?」
「うん。早く仕事を見つけてお金を稼がないとマズい……」
「仕事ねぇ……。あれはどう? 冒険者」
「冒険者?」
冒険者ってあれか? 未知の場所を冒険したり、ダンジョンを攻略したり、そんな感じのお仕事だろうか?
「オレたちにはまだ難しいんじゃないか?」
「わからないわよ? まずは行ってみましょ!」
「あ! マリー!」
マリーは道行く人に冒険者ギルドの場所を尋ねまくり、オレたちはそれほど時間をかけずに冒険者ギルドに到着した。
冒険者ギルドは大通りに面した立派な建物だった。石造りで飾り気がなく、なんだか無骨な感じがする建物だ。その建物には「新人冒険者募集中」「未経験でも大丈夫」など貼り紙が貼ってある。
なんだかブラックな雰囲気がプンプンするのはオレの気のせいだろうか?
だが、ここまで来たら行くしかない。どうせ王都に頼れる知人はいないんだ。話だけでも聞いてみよう。
「お邪魔します……」
冒険者ギルドのドアを控えめに開けると、中からご機嫌な笑い声や大きな話し声がガヤガヤと聞こえてきた。
「オーガ討伐を祝って、かんぱーい!」
「お前知ってるか? 南で行商人が魔物に襲われたってよ」
「マジかよ。誰が護衛してたんだ?」
「それが護衛代をケチって護衛を雇わなかったんだと」
「そりゃ自業自得だな」
「この風、泣いています……」
「なぁ姉ちゃんいいだろ?」
冒険者ギルドは食堂が併設されているのか、左側では冒険者らしき武装した人々が大いに騒ぎながら飲み食いしていた。右側にはカウンターテーブルがあり、受付嬢さんらしき同じ制服を着た人が五人並んでいる。
まずは受付嬢さんに話を聞いてみよう。武装している人たちには話しかけづらいし……。
「行こう、マリー」
「うん」
オレとマリーは一番手前の受付嬢さんに話しかけようとしたが、またバグっているのか受付嬢さんの顔だけワニのようになっていた。
本当は人間なんだとは思うんだけど、さすがに怖い。
オレはワニ顔の受付嬢さんを飛ばしてその隣の受付嬢さんに話しかける。
「すみません、冒険者について訊きたいんですけど……」
「はい。何でしょう?」
にこやかな笑みを浮かべた受付嬢さん。ヒイロよりもちょっと年上かな。顔で受付嬢を選んでいるのかと思うほど美人さんだった。
「冒険者ってどんな仕事をするんですか?」
オレは冒険者についてなんとなくイメージしか持っていない。ここははっきり訊いておくべきだろう。イメージと違ったら怖いし。
「冒険者さんのお仕事は非常に多岐にわたります。屋根の修理やドブ攫いのような王都の中でもできることから、王都の近くの森に薬草を採取しに行ったり、魔物の討伐、護衛のお仕事もございます」
オレが想像していたような冒険みたいなのはあんまりないのかな?
「文字は読めますか?」
「え? はい」
「では、実際に見てみるのがいいかもしれませんね。あちらに依頼を貼り出したボードがございます」
受付嬢さんの手をたどると、冒険者ギルドの奥に紙の貼られた四つのボードがあった。
「あちらの依頼ボードをご覧になって、実際に依頼されているお仕事をご覧になった方が早いと思いますよ」
「なるほど。ありがとうございます」
マリーを連れて奥の依頼ボードを見に行く。
「ヒイロってば字が読めたのね。いったいいつの間に勉強したの?」
まぁ、イナカ村では文字を使うこともなかったし、物々交換が主だったからお金もなかった。マリーとしてはヒイロがいつの間にか字を読めるようになってて驚きなのだろう。
「ちょっとね。マリーは読めるの?」
「あたしはちゃんと勉強したもの。漢字だって少しは書けるんだから」
「ふーん」
まぁ、読めるならいいか。
オレがさっそく依頼ボードの依頼を見ようとすると、依頼の書かれた紙がオレの視線から逃げるように移動した。
「は?」
え? ここでもバグがあるの? いい加減にしろよ!
「どうしたの、ヒイロ?」
「いや……」
意外にも俊敏に動く依頼書を読むのは時間がかかりそうだなぁ……。
最悪だ。
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