表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【バグゲー無双】  作者: くーねるでぶる(戒め)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/42

005 謁見のバグ

 ついに謁見の間の扉が開いた。中央にレッドカーペットが敷かれ、その左右には甲冑を着た騎士たちが並び、ものすごく厳格な雰囲気だ。もうザ・謁見の間という感じである。


 左手で握っているマリーの右手が震えている。やっぱり緊張しているのだろう。


「行こう、マリー。オレたちなら大丈夫だ」


 そう小さく囁くと、オレはレッドカーペットに一歩足を踏み入れる。


 ストンッ!


 その瞬間、オレの下半身がレッドカーペットに呑まれた。


 何が起こった!?


 恐る恐る下を向いて観察すると、オレの腰までレッドカーペットに呑まれるように落ちたみたいだ。


 あれか?


 レッドカーペットに当たり判定がないから落ちちゃったとか?


 どんだけ適当な作りをしてるんだよ!


「ヒイロ!?」


 これには手を繋いだままだったマリーも大慌てだった。


「マリー、マリーにはオレがどう見える?」

「え? いきなり絨毯の下に落ちたみたいだけど……大丈夫?」

「そっか」


 マリーにもオレが落ちているように見えるらしい。


 オレはマリーの手を放してこの穴から抜け出そうとする。


「え?」


 しかし、どうやらレッドカーペットすべてに当たり判定がないのか、オレの手はレッドカーペットをすり抜けるばかりだった。


「あの者は何をやっているんだ?」

「見ろ! カーペットに下半身が埋まっているぞ!」

「いったいどうやって……」

「こら勇者! 遊んでないで出てこい!」


 さすがにこの異常事態に兵士たちもざわざわとし始めた。


 というか、オレは遊んでいない!


 オレだって出られるものならカーペットから出たいよ?


 でも無理なんだ。


「上がるの無理っぽい……」

「えぇ!?」

「仕方がない。このまま進むよ」

「はあ!?」


 オレはレッドカーペットに下半身を埋めたまま十歩歩くとそのまま跪こうとして気が付いた。


 玉座に座っているの、あれって王様なのか?


 玉座には、見覚えのある金髪碧眼のイケメンが座っているのだが、あれってオレじゃね? このゲームの主人公じゃね?


 これは何の冗談だ?


 不思議に思って周りを見ると、左右に並ぶ兵士の中に一人だけ違う衣装の者がいた。


 まるでトランプのキングのような見た目。間違いない。あいつが王様だ!


 だが、たぶんこれもバグだろう。


 このテクスチャー張り忘れやら張り間違いやらひどいな。王様のテクスチャーが主人公て……。他はどうでもいいけど、主人公は増やすなよ……。


 だが、今は大事な謁見の最中だ。ツッコむわけにもいかず、オレは跪く。


「勇者が、消えた……!」

「どこに行った!?」


 そうすると、ざわざわ兵士たちがざわめき出す。


 そうだね。この状態で跪くと、完全にレッドカーペットの下に潜ってしまってオレの姿が消えちゃうね。


 でも、跪かないと怒られるだろうし、このまま行かせてもらう。


 幸いにも、レッドカーペットの下からはレッドカーペットなど存在しないかのように謁見の間を見渡すことができた。


 オレの隣では、何か言いたげなマリーがしずしずと王様を前に跪く。


「イナカ村からやってきました、ヒイロです!」

「同じくイナカ村からやってきました、マリーです!」


 名乗りを上げると、なんだか怪しい占い師のような恰好をした婆さんがオレの姿をした王様に耳打ちする。


「よく来たな、勇者ヒイロとその従者よ。朕がこの国の王、レオナルド・サウスティである。まさかカーペットに潜るとは。此度の勇者は本物のようだな」

「ははっ!」


 まさかただのバグを勇者の力と勘違いしているのか?


 これはありがたい誤解だ。


「知っての通り、我ら人類は魔王軍と戦争をしている最中だ。しかし、戦線は膠着してもう十五年になる。そなたたちには、その勇者の力で魔王の討伐を命じる。これは準備金として受け取るがいい」


 オレの格好をした王様がそう言うと、今度は王様の格好をした男がお盆に革袋を乗せてやって来た。


「こちらが準備金になります。大切に使ってくださいね」


 これはオレが受け取るべきだろう。


 オレは革袋に手を伸ばすと、周りがざわめき出す。


「カーペットから腕が!?」

「本当にどうなっているんだ!?」


 どうなっているのか? それはオレが作者に小一時間問い詰めたいよ。


 受け取った革袋は大きく、どっしりと重かった。準備金って言ってたから、多分中はお金だろう。これでしばらくは王都の生活にも困らないに違いない。


「勇者たちが退場します!」


 オレの姿をした王様が頷くのが見える。


 謁見はこれで終了らしい。


 オレは立ち上がると、隣で跪きっぱなしだったマリーの手を取る。


「行こう、マリー」

「う、うん……」


 マリーはまだ緊張しているのか、ガチガチだった。


「今度は上半身が出てきたぞ!」

「下半身はどこ消えたんだ!?」

「これが勇者の力……!」


 また騒ぎ出す兵士たちに背を向けて、オレは謁見の間を後にする。


 まぁ、ただのバグだよ。オレの力じゃない。


 でも、思ったよりもいい収穫があった。


 オレは腰に吊るした革袋を弾くと、そのまま兵士に案内されて王城を後にするのだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ