035 レベルアップと警鐘
「うひょひょひょひょ!」
買い取ってもらえるか心配だったコンドルだが、オレの心配を裏切ってそこそこの値段で売れた。コンドルの肉は臭くて食べれたものじゃないらしいが、その羽が売れたのだ。
聞けば、コンドルはこの辺りでは不死や復活の象徴らしく、その羽を矢羽根にすればアンデッドに対抗できると考えられているらしい。
まぁ、実際にはそんな効果はないらしいのだが、矢羽根に適しているのは本当みたいだ。おかげで一羽あたり銀貨五枚で売れた。それがオレのアイテムボックスにはアホなくらいの量は入っている。
さすがに一気に売ると値崩れを起こすから全部は売れなかったが、ゴブリンを狩るよりもよっぽど効率がいい。
いや、経験値のことだけを考えてもかなり効率的なのに、まさか金策としても有効だとは思わなかった。コンドル様様である。
おかげで来月分の借家の家賃も払えたし、もう言うことがない。
これはおかしな笑いが出てもおかしくないよね?
「ヒイロ、気持ち悪いからその顔やめて?」
「気持ちはわかりますけどね」
「笑い声も気持ちが悪い。すぐにやめるべきだ」
「すっげーボコボコに言うじゃん……」
さすがのオレもちょっと悲しくなるよ。
「でも、コンドルも売れたし、しばらくはコンドル狩りでいいだろ?」
「あれは狩りと言うのだろうか?」
アリューシアは呆れたような困ったような不思議な顔を浮かべていた。
「なんだか魔法みたいでしたね。あれも勇者の力なのですか?」
「まぁ、そんなところかな?」
エミリアの言葉に頷く。
オレだけ知覚できるんだから、勇者の力と言っても過言ではないだろう。
試しにアリューシアにも剣を振ってもらったが、コンドルは無傷だったし、オレしか倒せないようだった。
どういう原理というか、どういうバグなのかはわからないが、いいバグ技を見つけたね。
アイテムボックスに入れておくと、まるで時間が止まったように腐ったりしないみたいだし、狩れるうちにコンドルを狩ってしまおう。
もしかしたら、アイテムボックスにも上限があるかもしれないし、それを調べる意味でも重要な実験だと思う。
ちなみに、今オレのアイテムボックスの中にはコンドルが三百羽以上入っているが、特に体調に変化はない。もしかしたら、アイテムボックスは無限に物を入れられるかもしれないな。
こんなに大容量で、かつ腐らないんだ。上手くやればそれだけで食べていけそうな能力だが、上手い活用法が今のところ思いつかない。
それに、商売の元になる資金が乏しいのも問題だ。たしかに、四人でなんとか暮らしていけるだけの資金はあるのだが、資金が多ければ多いほど儲けも大きくなる。やっぱりどこかで大きな儲けを出して、それを転がすだけで生活できるようになりたいな。
まぁ、魔王を討伐しなければならないという問題もあるが……。それは追々考えよう。
まずは生活の安定だ。今のままでは、怪我や病気で詰む可能性もあるしな。
それを考えたら、コンドル狩りはローリスクだからいい。金額的にはローリターンでもあるが、経験値的にはおいしいしね。
そんなわけで、オレたちは次の日も、そのまた次の日も、来る日も来る日もコンドル狩りを続けた。
おかげでオレはレベル11になったし、マリーたちのレベルも上がっている。
オレがレベル10を超えた時にはステータス画面に必殺技の項目が追加された。
覚えた必殺技は回転斬り。発動しようと思えば体が勝手に動いて発動する。その場で大剣を持ったまま二回転するだけのしょっぼい技だが、まぁ、一応必殺技らしい。ダメージに補正でも入るのだろうか? 味方の近くでは使えないし、どうも使い勝手が悪い。
まぁ、最初に覚える必殺技だし、こんなものだろう。願わくば、次に覚える必殺技はまともなのがいい。
かなり日数がかかったが、コンドル狩りが一区切りついた頃には、オレのレベルは13になっていた。
いやー、かなりのコンドルを倒したよね。アイテムボックスには千を超えるコンドルが入っているし、これはもうアイテムボックスは無限にアイテムが入ると思ってもいいんじゃないかな?
レベルが上がったことで、マリーたちも新しい魔法やスキルを覚えたみたいだし、かなり調子がいい。
お金も貯まってきたし、冒険者ランクもブラックウッド級に上がった。今度からは森の深部を攻略してもいいかもしれない。
そんなことを思っている時だった。
その日の朝はいつもとは違う音で目を覚ました。
鐘の音だ。まるで警鐘であるかのように早鐘が鳴らされている。
「な、なんだあ!?」
ベッドから飛び起きてステータス画面を開くと、いつもの装備に装備を変える。
部屋を飛び出すと、いつもは眠たそうにしているアリューシアがネグリジェ姿のまま叫んでいる。
「警鐘だ! 何かあったに違いない! すぐに着替えて冒険者ギルドに急ぐぞ!」
やっぱり警鐘だったのか。
「シア、お前も早く着替えろ!」
「わかっている!」
そのまま全員の着替えが済むと、朝食もなしでオレたちは借家を飛び出した。
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