034 めり込んどる
森で魔物を狩っては冒険者ギルドで祝杯を挙げる。そんな毎日を送ること二週間ほど。
いつものルートの獲物が少なくなってきたのか、あんまりゴブリンに出会わなくなったので、たまには違ったルートから森に入ろうということになった。
いつもより遠回りして森に入る場所を変える。
その時、なんだか甲高い鳥の鳴き声が聞こえた。それも一話や二羽じゃない。もっと大量の鳥の鳴き声だ。
「ん? なんか鳥の鳴き声が聞こえないか?」
「え? 何も聞こえないけど?」
マリーが不思議そうな顔で首を傾げていた。
もうオレには耳を覆いたくなるほどうるさいくらい鳥の鳴き声が聞こえるのに、マリーたちには聞こえていないようだ。
またバグだろうか?
そんなことを思いながら前を向いた時、オレは不思議な光景を見た。
「コンドルが木にめり込んどる!?」
大きな鳥、たぶんコンドルの頭が木に突き刺さっている。コンドルたちは空を飛んでいるつもりなのか、時々羽をバサバサと羽ばたかせていた。
「はあ? ヒイロ、何言ってるのよ?」
「え?」
まさか、マリーたちには見えていないのか?
エミリアとアリューシアに目を向けても、二人とも不思議そうな顔でオレを見ていた。
マジでオレにしか見えてないのか。
てことは、これもバグか。
そういえば、イナカ村のオレの実家にもめり込んでる小鳥がいたな。あれの亜種か。
「それにしては……」
前を見れば、ずらりと木にめり込んでいるコンドルたちが見える。その数は百や二百じゃ効かないくらいだ。
たぶん、コンドルの挙動的にこの森にめり込みやすいんだろうな。それが長い年月で積み重なって、この木が見えないくらいにめり込みまくっているコンドルの群れができたのだろう。
まぁ、直すべきなのだろう。だが、その前に確かめたいことがある。
果たして、このコンドルは倒せるのだろうか?
オレにしか知覚できないらしいし、倒しても経験値が入らなかったら倒す意味がない。
だが、倒したことで経験値が入るなら。これほどおいしい狩場はない。
「試してみるか」
「ヒイロ? そっちは森だぞ? 今日はそこから入るのか?」
「ちょっと試したいことがあるんだ。ステータスオープン」
オレはステータス画面を開くと、経験値の欄を確認する。今のオレはレベル7。レベル8まであと693の経験値が必要な状態だ。
「693。1でも減ってくれれば御の字だが……」
オレは木の表面が見えないほどコンドルがめり込んでいる木に近づくと、大剣を背中から抜き、大上段に構える。
「せあっ!」
そして、めり込んでいるコンドルの首に狙いを付けて渾身の力を籠めて振り下ろす。
腕に感じる僅かな抵抗。次々にコンドルの首を刎ね、ボトボトとコンドルの死体が地面に落ちる。
一振りで二十くらいのコンドルを仕留めただろうか?
「経験値は?」
ステータス画面の経験値欄を確認するとレベル8まであと473となっていた。
「よっしゃ!」
これはタオし甲斐があるぜ!
このバグは直さないでおこう。
「えっ!? えっ!? どういうことっ!?」
「ヒイロが剣を振ったと思ったら鳥の死体が大量に……」
「そのコンドルはどこから現れたんだ!?」
ビックリしているマリーたち。オレがコンドルを倒すと、彼女たちにも知覚できるようになるらしい。どういう原理かわからないが、これならコンドルの死体は売れそうだな。
「今日はここでコンドル狩りをしよう」
「え? でも、どこにもいないわよ?」
「私たちには見えませんが……。これも勇者の力なのでしょうか?」
「手品かなにかなのか? 私に説明してくれ」
「まぁ、今回はオレに任せてよ。みんなは辺りの警戒だけしてくれたらいいから」
足元のコンドルの死体をアイテムボックスに仕舞っていく。コンドル一体あたりの経験値が20らしい。目の前には、もうコンドルの林と表現すべきぐらい大量のコンドルがめり込んでいる。
これは今日中にもレベルアップできそうだな。経験値は戦わなかった者たちにも等分される。オレだけではなく、マリーたちにも経験値が入っているはずだ。今日だけでみんなもかなり経験値を得られるだろう。
「こんなバグならいつでも大歓迎だな」
珍しく自分に有利に働くバグとの遭遇にテンションが上がる。
「せや!」
コンドルをアイテムボックスに仕舞い終わったら、今度は隣の木にめり込んでいるコンドルを伐採する。もう伐採という表現が的確に感じるほどコンドルが木から生えてるんだもん。仕方がない。
途中、ゴブリンに襲われるハプニングはあったが、とにかく木にめり込んだコンドルを狩りまくった。大剣を振り下ろすだけで200を超える経験値が手に入るんだ。やらなきゃ損である。
しかも、今日一日かけてコンドルを伐採したというのに、まだまだ木にめり込んでいるコンドルはたくさんいるのだ。
しばらくはこのコンドル狩りだけでいいかもな。あとはコンドルが高く売れればいいのだが……。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。
下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。
☆1つでも構いません。
どうかあなたの評価を教えてください。




