027 買い物と借家
「はぁー食った食った」
「おいしかったわね」
「はい。また来たいですね」
「庶民の店の侮れんな」
なかなかいい店だったな。特にカルパッチョが最高だった。酒でも飲みたかったが、この後は教会で借家を借りる商談だ。酔っぱらうわけにはいかない。
最初は全裸の男が出てきて混乱したが、女性陣の反応を見てすぐにバグだと気が付いた。
ぶらんぶらんしながら料理を運ばれるのも気持ちがいいものではないので、速攻で修正したよ。まったく、王都も油断がならないな。
「じゃあ、次は教会だな」
そんなこんなで教会に移動すると、何やら人が大勢集まっていた。何してるんだろう?
「エミリア、あれは?」
「きっと炊き出しですね」
そういえば、教会は炊き出ししてるって言ってたな。
よく見れば、いつか見たゴブリン三人組も炊き出しに並んでいるようだ。スリに遭ったとはいえ、彼らにも悪いことしちゃったなぁ。まぁ、謝らないが。
「こちらにどうぞ」
「ああ」
エミリアに案内されて教会の中に入る。以前はあまり見れてなかったけど、大きなステンドグラスもあって立派な教会だな。さすが王都にある一番デカい教会だ。
「エミリア、待っていたよ」
教会にある一室に入ると、中年の男性がテーブルの椅子から立ち上がった。
「本日はよろしくお願いします」
「エミリアの頼みだからね。いい物件を探しておいたよ。そちらの方々が?」
中年男性の視線がオレたちに移った。
「はい。本物の勇者のヒイロ、魔法使いのマリー、騎士のアリューシアです」
「また勇者かと思ったけど、エミリアがそう言うなら今度こそ本物かもね」
なんだか中年男の口ぶり的に今までにも何人も勇者がいたようだけど……。そこのところってどうなってるんだろう?
「なあ、シア。勇者ってこれまでに何人いたんだ?」
「記録に残っているものだけでも百人を超えるな」
「えー……」
勇者ってそんなポンポン生まれてるのかよ。なんだかショックだ。
「前回の勇者の出現は、およそ二年前だな」
「そんな頻度で勇者って生まれてるのか……」
今までの勇者がすべて魔王討伐に挑み失敗しているとしたら、王様たちがオレを信用しないのも頷ける話ではある。
「その時、シアは付いて行こうとは思わなかったのか?」
「父上に猛反対されてな。行くに行けなかった。まぁ、それでヒイロと出会えたのだから結果的にはよかったのだが」
意外にもアリューシアのオレへの信頼が厚い。なんでだ?
「それはどうして? オレも今までの勇者と変わりないかもしれないよ?」
「それはない」
アリューシアが力強く否定する。
「私は実際に見たわけではないが、ヒイロは陛下との謁見で魔法のように姿を消してみせたのだろう? 俄かには信じられないが、あの父上が嘘を吐くわけもない。だから、私はヒイロが真の勇者だと確信したんだ」
「あぁ……」
あれはただのバグで、オレ自身にそんなすごい力があるわけではないのだが……。
アリューシアにガッカリされないように頑張ろう。
◇
「ここがあたしたちのハウスね!」
目の前に見える庭付きの石造りの一軒家。ここが今日からオレたちの家になる。まぁ、借家だけどね。
ちなみに、もう内見も済ませて鍵も貰っているし、今月分の家賃も払った。エミリアがいるからかなり格安になった。エミリア様様である。
部屋割りも決め、ダイニングでお茶を飲んでいる時にエミリアが口を開いた。
「意外と早く家も決まりましたし、このまま日用品を買いに行きませんか?」
「お! いいねえ」
「おしゃれな部屋にしちゃお!」
「家具はある程度備え付けの物があるが、ない物もあるからな」
エミリアの提案でオレたちはそのまま家を飛び出した。
とはいえ、オレの部屋にはベッドにタンスと机、椅子が備え付けだったから、あと必要な物といえばシーツや布団くらいだな。
まぁ、ベッドといっても藁を敷くタイプのベッドだったから、藁から卒業できるわけではないのだが。
いつかマットレスとかで寝れるようになりたいよ。
オレとしてはあまり買う物がなかったのだが、女性陣の場合はそうもいかないらしい。みんなして雑貨屋巡りして小物などを買っていた。その量は半端じゃない。こんなことなら荷物持ちなんて申し出なければよかった。
だが、一度言ったことを引っ込めるのもかっこ悪い。
オレはできるだけ笑顔を浮かべて女性陣の荷物を持って行く。
「あ……」
その時、ふとクマのぬいぐるみに目を奪われているアリューシアの姿を見てしまった。キリッとした感じのアリューシアだが、女の子らしい一面もあるようだ。
「ヒイロは外で待ってて!」
「え?」
とある一軒の店に入ろうかという時にマリーに入店を止められる。
「なんで? 日差しが強いし、できれば中に入りたいんだけど?」
「ヒイロ、ここは婦人服のお店なんです」
「え? あー……」
エミリアに指摘されて気が付く。たぶん女性用の下着とかも売ってるんだろう。そりゃ入るのを止められるわけだ。
「わかった。オレはそこの日陰で休んでるよ」
「すみません、ヒイロ。なるべく急ぎますので」
「覗いちゃダメよ?」
「覗かねーよ!」
その日から、マリーの下着も王都スタイルになったとだけ語っておこう。
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