002 滑る系馬車で出発
説明しよう。
朝起きたらマリーが二人いた。
以上。説明終わり。
いやいやいや、どうなってるの!?
「え? マリーって実は双子だった?」
「「え? もう、ヒイロったら何言ってるのよ。こんなにいい女が世界に二人もいるわけないでしょ?」」
「えぇー……」
本人は二人いることに気付いていないのか、呆れたような顔でステレオボイスを披露してくれる。
うん。これもバグだね。ヒロイン増やすのはダメでしょ……。ヒロイン回りくらいちゃんと作ってくれよ!
オレは昨日、腕輪の力で村長が見えるようになったことを思い出す。
直れ! と念じながら右手を向けてみてもなにも起こらない。
どういうことかとステータス画面を見たら、閻戊シェという腕輪の力はどうやら二十四時間に一回しか使えないらしい。
一日一回しか使えないのか……。このバグだらけの世界では不安しかない。
「「それより見てよ、この服! お父さんが明日はこれを着ていいって言ってくれたんだ!」」
「ああ、そう……」
二人のマリーをよく見てみると、昨日の質素な平民服ではなく、まるでオクトーバーフェストで見るような民族衣装を身に纏っていた。腕輪や髪飾りもしていて、おしゃれしていることがわかる。
「「ああ、そうって……。ヒイロ、女の子がおしゃれをしてたら、ちゃんと褒めないと嫌われちゃうわよ? だから、成人しても彼女の一人もできないのよ!」」
そんな悲しいことステレオで言わないでくれよ……。
というか、これはさすがに直した方がいいんじゃないか?
だが、オレには直し方がわからない。すまんな、マリー。そして、半分だけ壁から顔を出している小鳥よ。
「綺麗だよ、マリー。見違えた。まるでお姫様みたいだ」
「「ふふん。でもそれって、普段のあたしが綺麗じゃないってこと?」」
二人のマリーは得意げに胸を張ると、何かに気が付いたようにオレを睨みつけてきた。
めんどくせー!
「いや、普段のマリーも綺麗だよ。でも、今日は一段と輝いて見えるっていうか、その……」
「「まぁいいわ。このくらいで許してあげる。優しいあたしに感謝するのよ?」」
「ありがとう、マリー……。それで、今日はおしゃれなんかしてどうしたの?」
二人のマリーは待ってましたと言わんばかりに口を開く。
「「あたしも一緒に王都に行くのよ! まぁ、ヒイロだけじゃ頼りないから、あたしがフォローしてあげるわ! どう? 嬉しい?」」
なんとも強引な展開だ。
だが、これはマリーが仲間になったと考えてもいいのか?
でも、昨日、村長らしき見えない人物に大剣を貰ったけど大剣なんか使ったことないオレが言うのも変な話だが、マリーって強いのだろうか?
「ねえ、マリーって――――」
「「あ! いけない、いけない。あたし、ヒイロを呼んでくるように頼まれたんだったわ! ほらヒイロ、行くわよ! もう馬車が待ってるわ!」
「え? あ、ちょっと――――」
二人のマリーはオレの両手を掴むと、すごい力で引っ張り始める。
オレは慌ててベッドの横に置いたサンダルを履いて、マリーたちに引っ張られるように家の外に出た。
すると、外に出た瞬間、オレの左手を引っ張っていたマリーの姿が消える。残っているのはオレの右腕を引っ張っているマリーだけだ。
なるほど。どうやらバグっていたのはオレの家の中にいる状態のマリーだけで、外に出ると直るらしい。
これから二人のマリーの相手をしないといけないのかと考えてげんなりしていたから助かったと言えば助かった。
家の外に出ると、村人たちが二列に並んで道を作っていた。
「ヒイロ、がんばれよ!」
「勇者様ばんざーい!」
「ヒイロ、がんばれよ!」
「勇者ヒイロ、ばんざーい!」
「気を付けてな!」
「必ず、魔王を倒すんだぞ!」
「がんばれヒイロ兄ちゃん!」
村人たちがオレたちの姿を見るとそれぞれ激励の言葉をかけてくれる。中には昨日泥団子をぶつけてきたクソガキの姿もあった。
というか、処理が重たいのか、点滅するように現れたり消えたりしている村人がいた。
ここでもバグかよ……。
まぁ、感動的な場面なのだろう。オレにはヒイロの記憶がないからいまいち盛り上がれないが。
「ほら、行くわよ」
「うん」
そのままマリーに手を引かれて村の外に止められている馬車までやって来た。馬車にはお揃いの装備をした兵士の姿もあり、厳重な雰囲気だ。
その馬車の傍には、ハゲ頭のムキムキマッチョマンの姿がある。マリーのお父さんにして、この村の村長だ。
「お父さん!」
マリーが村長に手を振っている。
遺伝子が仕事してないなぁ。どうやったらあんなタコ坊主からマリーみたいなかわいい子が生まれるんだろう?
「来たか、マリー、そしてヒイロよ」
「村長、その者が?」
兵士の隊長さんらしき人が村長に問いかける。
「はい。この村で生まれたヒイロに間違いありません」
「そうか。ではヒイロとそこの少女は馬車に乗れ」
「行くわよ、ヒイロ」
「うん」
意外にも貴人が乗るような豪華な造りの馬車に乗り込む。椅子もクッションが効いていていい感じだ。
マリーと向かい合うようにして座ると、すぐに馬車の扉は閉められ、軽い振動と共に馬車が動き出した。
オレから見えるガラスの向こうでは、二頭の馬が足を動かすこともなくスーッと滑るように地面を移動していた。
あぁ、またバグか……。
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