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018 ボーナスタイム

 それは想像以上にスルッとした、まるでなにも触れていないかのような感触だった。


 オレはただ太い木目がけてチョップ、というか手刀を繰り出したわけだが、その結果が目の前の倒れ行く大木だった。


 他の木に当たり、ギシギシと不協和音を立てながら倒れていく大木。しかし、その切り口はまるでヤスリでもかけたかのように綺麗な直線だった。


「ええ!?」

「そんな!?」

「は……?」


 当然、驚きの声をあげるマリーとエミリア。


 オレ?


 もちろん想像以上の光景に呆然である。


 スコンッと斧のように木が削れるかと思ったらこれだ。ぶっちゃけ自分でやってちびりそうになった。


 これが、攻撃力9999! やべーな!


「な、何よ、これ……? ヒイロ、どうしちゃったの!?」

「なんかレベルが上がって強くなったみたいだ」


 マリーに答えると、次はエミリアが尋ねてくる。


「あの、レベル? とは何でしょうか?」

「あぁー……」


 そうか。ステータス画面ってオレしか見れないから、エミリアたちはレベルって概念を知らないんだ。


「いや、なんでもないよ。ただ、オレは強くなったらしい」

「冒険者の方々が言う存在の強化のようなものでしょうか?」


 エミリアがおかしなことを言い出した。


「存在の強化?」


 それって何だろう?


「ご存じありませんか? 魔物を倒すと、突然強くなることがあるそうです。それを存在の強化と言うらしいですよ。私も何度か体験しています」

「あー! あたしもあるかも」


 そうだったね。キミたち5レベルと3レベルだったね。


「きっとヒイロもそれなのね。でも、こんなに一気に強くなるものなの?」

「個人差があると言われていますが、私もここまで強くなる事例は知りません。これが神に選ばれた勇者様のお力なのでしょうか?」

「どうなんだろうね」


 というか、レベル2でステータスマックスって普通にヤバい。作者はなにが面白いと思ったんだ? このクソゲーめ!


 でもまぁ、強くなったのならそれに越したことはない。オレは困らないしな。


「今日はこのまま一気にゴブリンを狩りまくろう!」

「ええ!」

「大丈夫でしょうか……?」

「心配ないって。オレってば最強だし! じゃあ、行こうぜ!」


 そして、オレは二人を率いて今まで潜ったことがないほど森の奥へ。


 途中、屋台で買ったお昼ご飯を食べる。


「エミリアは何を買ったの? あたしはウサギの串焼きを買ったわ!」

「私ですか? ソーセージノバシターノです。王都名物と聞きましたが、食べたことがなかったので」

「へぇ。オレもソーセージノバシターノを買ったんだ。あとはこれ、フライドポテト」

「ヒイロってばそのフライドポテトっていうやつが好きなのね。そんなにおしいいの?」

「おいしいっていうかまぁ……」


 オレとしては懐かしい感じがしちゃってついつい買っちゃうんだよなぁ。


「マリーも食べてみる? 時間が経っちゃったから、しんなりしてるけど」

「貰うわ!」

「よかったらエミリアも食べてみてよ」

「ありがとうございます」


 そんな感じでほのぼのとした昼食を済ませ、オレたちはそのまま森の奥へ。


 何度かゴブリンやウルフ、クモのバケモノ、大きなヘビにも会ったが、そのすべてを一刀両断してもっと森の奥へ。


 いやぁ。ここまで強いと気持ちが良いな。まさに無双状態だ。


 でも、さすがにそろそろ戻らないと日が暮れてしまう。


「今日はこのくらいにしておこうか」

「そうね! ゴブリンの右耳も素材もたくさん集まったし!」

「もうリュックが重いです」

「調子に乗って狩り過ぎちゃったな」


 つい楽しすぎて乱獲してしまった。でも、今日の換金が楽しみだな。


「お!」


 帰り道でまたゴブリンたちと出会った。その数は三体。


 ゴブリンたちはまだオレたちに気付いていない。チャンスだ。


「ちょっと狩ってくる」


 それだけ言うと、オレは一瞬でゴブリンたちに肉薄する。


「GYA!?」

「せあ!」


 驚くゴブリンを無視し、そのまま大きく大剣を横薙ぎに振るう。


 そんなに大きく振ったら、また大剣が木に当たってしまう?


 木ごと斬り倒すから問題ないよ。


 そのまま斬り飛ばされる三体のゴブリンの頭と二本の大木。ズシンッと音を立てて倒れる大木。その時、オレは未だかつて体験したことがない虚脱感を感じていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……。なんで、こんなに、疲れるんだ……?」


 何かバットステータスにでもかかったのだろうか?


「ステータスオープン……」


 疑問に思ってステータス画面を開くと、そこには驚くべきことが書いてあった。


「攻撃力、13……?」


 なんで? さっきまで9999あったじゃん!?


「え? えぇ!?」


 どういうことかわからずにステータス画面の隅々まで見る。


「あ……」


 そして気が付いた。オレのレベルが3になっている。


 もしかして、レベル2でステータスがマックスになったのはバグだったのか?


「そりゃねえよ……」


 こんな爽快感を味あわせておいて、それを奪うなんて……。


「人間のやることじゃねえよ……」

「ヒイロ? 泣いてるの?」

「ヒイロ? どうしたのですか?」

「オレ、弱くなっちゃった……」

「「え?」」


 驚くマリーとエミリア。


 ここはまだまだ森の奥地だ。弱体化したオレたちは無事に王都までたどり着けるのだろうか……?

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