エピローグ 幸せな未来
宮殿の広々とした庭園には色とりどりの花が咲き誇り、爽やかな風がそよいでいる。
陽光の下、幼い王子と王女たちが小さなテーブルを囲んでお茶会を開いていた。
王宮の使用人たちが用意した可愛らしいティーセットに、ふんわりとした焼き菓子が並ぶ。
「おにいさま、お砂糖はどのくらい入れますか?」
「うーん、五つぶ!」
「まあ、甘くなりすぎますわよ?」
「いいんだよ、ぼく、甘いのだいすきだもん」
ころころと笑い声を響かせながら、小さな兄妹たちは真剣にティーカップを手にしていた。
そんな光景を、少し離れた場所から眺める二人の姿があった。
「砂糖をあんなに……アーノルドは大丈夫だろうか」
ヴィンセントが焦ったように言うと、マリーはくすりと笑った。
「ふふ。なんて立派なお茶会なのでしょう。歯磨きをしっかりしないといけませんわ」
「そうだな」
「こんなに無邪気で自由な姿を見られるのは、幸せなことですね、ヴィンス」
「……ああ。君がいてくれたからこそ、この国も、そして私自身もこうして平穏を手にできた」
ヴィンセントはそっとマリーの手を取り、指を絡める。
昔の彼なら、こんなふうに人前で愛情を示すことはなかったかもしれない。それだけに、彼の変化が愛おしくてたまらない。
「マリー。君は今、幸せか?」
「……ええ、とても!」
マリーは、隣にいる最愛の人を見つめ、そっと微笑む。
「ヴィンセントがいてくれるもの。私は、何も怖くありません」
ヴィンセントは目を細めると、彼女の頬に優しく手を添えた。
「これからも、ずっと君のそばにいる。何があろうと、私は君を愛し続ける」
その真っ直ぐな瞳に、マリーは幸福に満ちた表情でヴィンセントを見つめる。それから、そっと寄り添いながら囁いた。
「私も、あなたを愛しています」
「……ありがとう」
そうして二人は、楽しそうに笑う子供たちを見守りながら、静かに手を握り合う。
──愛が満ちるこの国で、今日もまた幸せな時が流れていった。
時は流れ、国王ヴィンセントと王妃マリーの治世のもと、この国はかつてないほどの繁栄を遂げた。
瘴気に蝕まれていた大地はすっかり浄化され、豊かな作物が実り、人々の笑顔が絶えない国となった。
マリーが聖女として築いた新たな信仰の礎は、争いを鎮めて人々に安寧をもたらし、ヴィンセントの賢明なる政治は、国の発展を大きく押し上げた。
王と王妃が愛を誓い合い手を取り合ったことで、この国は「光の時代」と呼ばれる黄金期を迎えたのだ。
そして、彼らの物語は未来へと紡がれていく。
ヴィンセントとマリーの子らは、その志を継ぎ、さらに国を発展させた。彼らの血を引く者たちは、代々聖女の力と賢王の精神を受け継ぎ、人々のために尽くしたという。
伝承では、王と聖女の愛の物語が語り継がれている。
『王と聖女の誓いが、国に光をもたらした』
今もなお、この国の人々はその物語を胸に刻み、幸せな日々を過ごしている。
そして、どこかの泉では、今も二人が寄り添いながら微笑み合っているかのように、穏やかな水面がきらめいているのだった。
おわり
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
駆け足になったところ、つたないところ、誤字脱字など読みにくい点も大いにあったことかと思います。
それでもここまで読んでくださったことに最大限の感謝の意をお伝えしたく!!思います!!!
本当にありがとうございました。★★★★★評価などいただけると狂喜乱舞します。
またお会いできますように。ミズメ
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