3 卒業パーティー②
国王陛下は軽く息を吐き、壇上のレイ殿下と向き合う。
「レイ、お前はこの国の王になると言っていたな…。
その為に、これまでお前は、一体何をしたのだ?」
「…⁈ぇ?」レイには即答できなかった。
学園生活でも、特にこれといって深く学んだ事もなく
気の合うメンバーで、気ままに過ごした記憶しかない。
陛下は続けて言う。
「先ほどの記録映像にあったクラス分けの話は、
入学前に宰相から対象者全員に説明をさせている。
王太子、その婚約者、側近候補は
最終学年では必ずAクラスであるようにと。」
「当たり前だろう…。国の全てを預かる立場なのだ。
自身の能力を高める努力をせず、王命での婚約者までも
蔑ろにする。お前の何を信用すれば良いのだ?」
会場は沈黙に包まれる。
レイ殿下も、反論する言葉が無いようで項垂れている。
「王命であったドレイク公爵令嬢との婚約についてだが、
レイ…。2ヶ月前、お前の有責で既に解消となっている。
お前の管理となっていた領地を、慰謝料として
引き渡し済みだ。管理はドレイク公爵令嬢に任せ、
放置していた様だがな…。
今後、ドレイク公爵令嬢の婚姻に関して、
王家が口を出す事はないと約束する。」
「そしてレイ…。お前の王位継承権は、剥奪とする。
このような公の場で、派手に騒いだのだ。
王族からの除名も、避けることは出来ん。」
「コレッティ男爵との話は、既に済んでいる。
お前の望むコレッティ男爵令嬢と結婚し、
すみやかに婿入りするように。」
一瞬、申し訳なさそうな目の陛下と、視線があう。
その時、レイが叫んだ!!
「私は第一王子!王太子です!国王になるんです!
至らない所があっても、愛する者や友と支えあえる!
それに!婚約解消はともかく、有責とは?」
国王陛下は静かに言う。
「監視の文官を2人付けた。1人はドレイク公爵令嬢だ。
もう1人はコレッティ男爵令嬢に付けていた。」
「これで分かるか?全てを把握されていたのだ。
そんな迂闊な者が王になれば、この国は滅びる。」
レイは、はっと目を見開く。
ナターシャに監視が付いていたのなら、
自分達の関係が筒抜けだったのだ…。
アリアに嵌められた!!
王位もナターシャも、手に入るはずだったのに!
全部!全部!!…あいつのせいだ!!!
ナターシャが、青い顔で腕にすがり付こうとするより早く、
レイは激昂し、アリアへ向かって、一直線に歩いて行く。
すぐに衛兵が動き、レイは捕獲された。
床に押さえ付けられたが、思い切り睨み上げた。
そして目を見張る。
アリアが兄の背に庇われ、先程の文官の1人に
肩を抱かれている姿を目にしたのだ。
レイは、醜く顔を歪めて笑いだす…
自分の事を棚に上げて、思いっきり罵った。
「ははっ…。アリア!!お前も不貞を働いているじゃないか?
同罪だ!お前もその男も、死刑だ!死刑!!」
王族の威厳も高貴さも何もかも失い…
笑いながら信じられない事を叫ぶ姿に、
会場が恐怖に包まれる。
「「「・・・・・・・」」」
その空気を吹き飛ばす、凛とした声が響いた。
「みな、そのまま動くな!静まれ!!」
陛下が場を制す。
「レイ。お前は、婚約中の不義密通により責を負った。
理解しているのか?それこそが、婚約解消の原因だ。」
「そして私の付けた文官の彼は、宰相の息子だ。
今回の件で縁ができ、先日婚約した。
もちろんお前達の様な、不誠実な行いなど一切ない。
私が証言する。
そしてお前にはもう、関係のない話だ!」
陛下は厳しい声で、言い放った。
「彼らへの暴言、許される事ではない!!」
「レイ、お前は北の塔にて生涯幽閉、
コレッティ男爵令嬢は、修道院へ送る事とする。
側近2人も、各家にて謹慎せよ。沙汰はおって言い渡す。」
レイ、ナターシャ、側近2人は衛兵に連行され、
パーティどころではなくなり、そのまま解散となった。
代わりに後日、
王宮にて、卒業生とその家族を招待する夜会が
開かれる事に決まり、
第一王子の廃嫡と、『第二王子を王太子とする』との
正式な発表があった。