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14/16

3週目 土 拠点づくり

罠を製作し、ハプニングが起き、理想とは違う働きをしたが、まあ、なんとか、敵軍をさばけた日の翌日のことである


昨日の戦利品の続き

トラップのかいあって、矢が腐る程に集まった上に、弓も手作り満載、よりもずいぶんマシな奴も入手出来た


つまり、遠距離武器を手に入れた俺は、鬼に金棒状態、故に敵なし


と言うわけで、巨木の占拠、リベンジに向かう

前回は、たかだか、蜘蛛一匹にしてやられたが、今度は、恐らく大丈夫だろう

なんたって、弓を取得したのだ

安全圏から確実に射殺せばいい

ゲスイだなんて言わせない


さあ、それはさておき、どうやら蜘蛛は、真夜中の暗い時に、木にスポーンするらしく

高所になるにつれ、ザワザワと蔓延(はびこ)っている

まだまだ、夜は安全なんて、お世辞でも決して言えない


巨木を中継地点にしようとする俺にとって、蜘蛛を殲滅(せんめつ)しない限り、森への探索は不可能なのだ

だから、今回の目標は、巨木の占拠である


背中に鉄斧と弓を巻き付け、可能な限りの矢を携えて、巨木へと向かう

道中、ナスカの地上絵と化した落書きを横目で見ながら、相棒を漕ぐ


しばし後に目的地につき、安全確認のため木を(くま)なく観察する


ちょうど影となって、見えづらくはなっているが、既に蜘蛛が数体、目視できた


相手が俺の気配を感じ取られる前に、先制攻撃

放たれた矢は、華麗な曲線を描き、見事命中

ドサッと地に落ちる音がした


我ながら上手くなったものだ

静止しているものならば、百発百中と言っても過言なぐらい、面白いぐらいに命中する


地上から片付けられる敵は、粗方討伐し終え

今度は、鉄斧で蜘蛛の根城を殴り込みに行く


特に、危なっかしい戦闘になること無く

アレだけ武装してきたにもかかわらず、拍子抜けな程にいとも簡単に占領出来た


だが、これは今、昼だからであって、夜はどうなるか分からない


悠長(ゆうちょう)にできるわけでもないので、運搬(うんぱん)作業に入る

流石に何度も上り下りするのは、骨が折れるので、ロープを使うことにする


矢、もしくはボトルを束にして、ロープに巻きつける

後は、高所から手繰(たぐ)り寄せお目当てのものを運び上げる


順調に進み、飲料水の貯蔵、懐中電灯の設置、予備武器の設置を終えた


そうこうしている間に、日は沈み、辺りは静寂に包まれる


この距離から現世に帰るのは無謀だが、心配はいらない

もとより、帰還するつもりはない

この夜を無事に過ごせるか、テストする心積もりだったのだ


溢れんばかり、、、とは言えないが、水と武器が備わる制作時間たった4時間のツリーハウスを見て確信する

「勝った」と


ーーーーー


勝負とは最後まで終わらなければ、勝敗のゆくへは分からない訳で、観客が勝利を確信し応援を辞めるのは勝手だが、選手が勝ちを確信するのは、ただの傲慢である、、、


今、そんな場合でわない

絶賛死にかけ中

なんか、ああ、もう、敵が多い、多すぎる、、、もう意味わからん、、、


ーーーーーー


今から訳10分前ぐらいだろうか、辺りが完全に闇に包まれ、木の上からも目視できるほどに敵が湧き始め、ゾンビ、ゴブリン、オークと敵の種に関係なく、俺の気配を嗅ぎつけ、巨木に群がり始めた


弓持ちが、チクチクと矢を放つ

矢鱈(やたら)と精度の高い矢は、高低差などもろともせず、的確に俺を射殺そうと飛んでくる


足場の少ない枝の上でかわす


こちらも弓で対抗可能ではあったが、無限に湧く敵を相手にするのもばからしいと思い、矢をケチり、温存していた

だったのだが、後方、左方、右方からと、湧いた弓持ちが加勢に加わり、四方八方、360度、どこからともなく、矢が放たれる


・・・そんなの、ホント聞いてない、、、


流石に痺れを切らし、即興で盾「木の板」を制作し、こちらも弓で対抗した


盾は、矢を放つ際にどうしても生じる隙を、完全に防ぐためだ

まあ、そこまで詳細に語る必要はなかったかもしれないが、、、


無数の矢を盾で受け止め、合間に矢を放つ


互いに放った矢が、空中で掠め合う


そして、互いに目標を逸らして飛んでいく


かなり接戦

頭数は敵の方が圧倒的に多いとはいえ、高所を取っている点では、俺の方が有利である

ならば、飛び交う矢の本数に、気圧することなく、正確に、一体ずつ消し去っていけば勝てるはずだ

ふう

一息はいて、集中を高める

一体に狙いを絞る


スパッ


矢は、風を切るように飛び、見事命中

その要領で敵数を減らしていく


案の定、数が減るごとに、敵の勢力が衰え、一気に戦況を取り戻した

そのままの勢いで弓持ちを一掃し、完全にこっちのペースに持ち込んだ

ふう

今度は、安堵のため息をつく


少し矢の浪費が激しかったと反省し、飛び交う矢の多さに翻弄され無駄打ちをしすぎたことを反省する


反省を生かし、神経をとがらせ、弓持ちだけを、的確に、正確に、そして確実に、射殺す

そうやって、戦況を維持していた、いやむしろ押していた、、、のだが


ふと、思いとどまる 

やけに、地上にいる敵の数が変わらない

無尽蔵に湧いて群がり、一匹たりとも討伐していないにもかかわらず、数が一定なのだ


何だか、奇妙な感覚に陥る

どうも不思議で仕方がなく、幹に駆け寄ってみる


すれば、眼前に、アブラムシのようにビッシリと幹に張り付く群衆が広がる

それは、それは、もう集合体恐怖症になりそうな勢い

血に飢えた獣が、俺という恰好な獲物を狙い、懸命に登って来ているのだ

早い者なら、既にもう、目と鼻の先


あまりの驚愕に、頭がクラクラする


・・・ホント聞いてない


だが悠長にしてられず、頬を叩いては気合を入れ直し、駆除に向かう

俺の拠点に手を伸ばすゾンビに鉄斧をお見舞い


ガッ


いつものスッパとする心地いい音とは異なり、鈍い音が鳴る

足場が悪く、無暗に踏み込めない

それの意味するところは、地上で出せる力の半分しか力を伝えられないということだ


たった一匹にもかかわらず、討伐に手こずる

いっそのこと、撲殺するよりも突き落とす方が遥かにいい

そのことが気が付いてから、効率重視で落下死させていく


敵の中には、「我こそが、我こそが」と互いに道を譲らず、時に蹴落としあって、引っ張り合い、勝手に自分から死んでいく馬鹿どもがいて十分に、一人で回せていたのだが、、、


時間が経過するごとに敵の団結力が向上していく


なんか敵が学習してきおった

いつの間にか、順序よく律儀に列を作り、ラッシュをかけてきた


・・・ホント聞いてない


先程までの余裕は完全に消え、あらゆる方面から登ってくる敵を、幹をグルグル廻りながら、モグラ叩き感覚で突き落としていく

落としても落としても、尽きぬ敵の数に、思わず、地を見て後続を確認する


すれば、無限に湧いた敵が、巨木に(つど)い、地を埋め尽くし、それでも飽き足らず草原にかけて長蛇の列が出来ていた


もし、飛び降りて逃げようものなら、血に飢えた敵が俺を容赦なく袋叩きするだろう


軽くトラウマ植え付けられるレベル

何だか地獄に蜘蛛の糸でも垂らしてしまい、犯罪者に復活の機会でも与えてしまった気分


だが、殺人鬼や放火魔に対し、許しの機会を与える釈迦様同等の慈悲深い心など俺が持ち合わせるはずもなく

到達してきた敵を、情の欠片一つ無く、尽く突き落とし、落下死させた


それでも一進後退で、戦況は停滞

いや寧ろ、逃げ道の無い俺の方が、やや不利

どうしたものか、、、

何としてもここを(しの)がねば、後が無い

なにか手はないか、、、


と思案し始めた矢先、、、


バッ


黒い線が高速で視界を横切る


何事かと、放たれた先を確認すれば、弓持ちがいた


顔をそらした、ほんの刹那

最終防衛ラインが突破され、ゾンビ共が()い上がってきた

更に不幸なことに、上から蜘蛛まで参戦してきた


ーーーーーそして現在に至る


この現状をカオスと言わずして何と言う


現時点の認知済みのモブが勢揃いし、もみクシャになりながら、俺めがけて迫ってくる


防衛は無理だと判断した俺は、拠点を捨て

一段下の枝に飛び降りる


人間一人難なく通行出来るほどの大きさだとは言え、一本道

敵は、このルートを辿る以外に、他に道はない

ここで、迎え撃つ以外に策はない

まさに、背水の陣

腹をくくり、戦闘に出る


だが、、、

迫りくる敵を蹴落としては、矢が

弓持ちを射殺そうとしては、蜘蛛が

蜘蛛をはたき落とそうとしては、ゾンビ共が


どれ程、個人として強かろうと、多勢には敵わない

目が3つ以上ないと到底さばけない

完全に敵のペースである


ガムシャラに鉄斧を振り回しては、やけくそに矢を乱射する

まるで命綱なしで綱渡りをするようなもの

いつ、袋叩きにされてもおかしくない

そんな状況だった


だが、それでも、不幸は終わらない


ミシミシ、ミシ、、、ミシ


戦闘中でもはっきり聞こえる軋む音

背筋を振るい上がらせる程の嫌な予感


「ヤッ、ヤバい、、、折れる」


危機を即座に察知し、敵軍の中にも関わらず、幹へ目掛けて、駆け出した

それとほぼ同時、枝は押し寄せた敵の重みに耐えられず、バキッと虚しく音を響かせて、重力に従うままに落ちて行く


すんでの所で、ジャンプ、、、宙に舞って回避する

フワッと浮き上がり、目線を下にやる

枝が、ガッ、ガッと幹に貼り付く敵を巻添えにして、地に落ちていくのが見えた


ヒヤッと背筋に冷汗を感じながら、次段の枝に飛び乗る

スタッと華麗に着地し、即座に戦況確認に移る


数少ない足場が壊されたとは言え、片側を登る敵を一掃し、地で待ち侘びる者どもを下敷にしてくれた

此れは、寧ろ好機である


敵の大群が半壊した今、弓で蜘蛛を射殺していく

邪魔が入らなくなった今やほぼ確実


あっと言う間に、一匹残らず完全に全滅させ、弓持ちへと狙いを変える


もう上に対し、注意を割く必要がなくなったので、必然的に狙撃の精度も上がっていく


流れを完全に掴み直し、勝機が見えてきた

更に勝利の女神が後押しするかのように、眩い日差しが、辺りに注がれていく


恐怖や焦りといった感情は薄れ、ただひたすら、鉄斧を振り回し続けた


ーーーーー


・・・はあ〜、まだ、終わらないんですけど、、、


日はとっぷりと登り、正午になるにももうわずか

にも関わらず、未だに敵を殲滅できずにいる


・・・ホント聞いてない


日差しが出て、新たに敵が湧くことはない筈

つまり、単に残党が俺の想定を(ゆう)に超えているだけだろう


それでも、多すぎる


やっとのことで、地面でスタンバってる奴は消え、残るは、へばりつきながら、這い上がってくる奴だけとなった

やっつけ仕事感覚で、無慈悲なまでに、俺がいる拠点まで、辿り着いた敵たちを突き落としていく


そして、そして、待ちに待った最後の一人

フン、と今日の恨みと憎しみをふんだんに込めた一撃をお見舞いしてやった


ふう。

いや〜、やれやれ、やっと静かになった、、、


長い戦闘に、流石に疲れが押し寄せてきた

しばし休息を取ったのちに、巨木を降りる


なに、ちょっと散らかりまくった地を片付けようと思ったのだ


小樹が倒れたかと錯覚するほどの枝が、辺りに枝葉をぶち撒けて、転がっている

他にも、無慈悲なまでに落下死したモブ達の生きた証として、戦利品が巨木周りに点在していた

その数なんて、到底分からない

ゴミ山のように、武器による盛土が形成され、危うくそこに足を踏み入れようなら、体全体埋もれるレベル


やはり、命の危機にあい、過去最高難易度を乗り越えた甲斐あって、戦利品の集い具合が、これまでとは桁違い


薪木の消費に困らない日が来るのは、意外にもうすぐかもしれない


とにかく、戦闘の邪魔になりそうな、小樹を適当な大きさに切り分ける


戦利品はレアリティごとに分別、

そして、かなり打ち尽くした矢を補充した


粗方片付けを終え、食事を取りに帰路に着いた

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