柔道
女の子だった。男の子なら力も強いしもっと強くなれるのに……。
しかし!
テレビで見たオリンピック。日本対クルネ。クルネはニメートル超えの超人ばかり。日本はやはり小柄だ。日本が負ける。私はそう思った。だけど、小柄なのに強い! これだ! 私は柔道を極める!
まずはルールを知らないと! お父さんなら知ってるかなぁ?
「柔道? あぁ、外国人に奪われた日本の格闘技か。あんなものよりeスポーツにしなさい。習い事少なくできる」
私はカチンときて、テレビで見た柔道の技、えーとなんだっけ? 取り敢えず斧を振り下ろすようにお父さんを投げた! 私にもできた!
「今のが一本背負投よ。柔道の華ね」
お母さんは味方になってくれるかな?
「お母さん! 柔道習いたい!」
「んー、結構お金かかるのよね。今、日本の人口が一億人で、柔道やっているのが約三十人で平均年齢も三十代。はっきり言って日本ではやっている人はオタク扱いよ? それに【佳代】はまだ小学生じゃない」
佳代とは私の事。小学二年。
「で、でも、今の一本背負いはなかなかだったぞ? コーヒーカップ持ってて払えなかったとは言え、お父さんを投げるなんて。力だけじゃない。身体の使い方が巧かった。これはひょっとするぞ?」
コーヒーでびちゃびちゃのお父さんにまず謝り、どういうことか聞く。
「つまり、才能があるかも知れん」
「さいのー?」
「向いてるって事よ」
それから数年。私は柔道を辞めていた。
「どうしたの佳代?」
「ん? 何が?」話し掛けてきたのは中学までずっと一緒の【レベラ・T・倉間】、あだ名は【ベラちー】。
「なんかぼーっとしてたから」
「柔道が無くなってから二年かぁ……って思って」
「ああ、【柔術】になったんだよね? あれ、どこが違うの?」
「なんて言うか、柔よく剛を制すって感じじゃないんだよねぇ……」
なんと、柔道は無くなっていた! 小柄な佳代の隣には同じ制服を着ている背の高いハーフのベラちーがいた。二人は重力エレベーターに乗っていた。これがこの時代の登校である。無音でしかし早く、低層の住人を学校がある高い層へ運ぶ。
「ねぇ! 聞いた聞いた?!」学校へ着く早々と質問される二人。
「どうしたの?」
「イケメン先生が来るらしいよ!」キャーキャー! 猿かと言わんばかりに黄色の声。
「ってか、女子校に来る教師なんてロリコンでしょ」ベラちー、口がキツい。
「君が【マーダス・佳代】だね?」
「そういうおじさんはソラリス人かな?」