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第2話 しゃぶりしゃぶられ


「あー、どうもどうも」

「おお、来たか」

 肩かいるは(9,712)店に入ってきたがらんどうにジョッキを掲げた。


「えーと、で、これはどういう状況?」

 スナックるいかに入ってきたがらんどう(19)はカウンターに突っ伏している寝ね子(68)を指す。


「ブクマが減ったんだと」

「あー、それで」

 がらんどう(19)は2つ空けて寝ね子(68)の隣に座った。


「ギギルコン読んでるぞ。めちゃくちゃだな、お前のやつ」

 肩かいる(9,712)は笑いながらビールをがらんどう(19)の前に置いた。


「ありがとう。最高の褒め言葉と受け取る」

「……ねえ。ブクマってどうしたら増えるの?」

 寝ね子(68)は突っ伏したまま言った。


「そりゃ、書いて更新すりゃ増えるだろ」

「はいはい、かいるの天才の天然は今いらないから。がらんどうはどうなの? 増えてるの? いまブクマいくつなの?」

「おれは、ちょっと待って。ええっと19かな」

「何話? 何文字?」

「今10話。3万ぐらいだと思う」

「ストックは?」

「6,000文字ぐらいかな。修正しながらやってるからすぐに出せる状態じゃないけど」


 うん、わかった。かいるは読んでるけど寝ね子は読んでないのね。がらんどう(19)は現状を把握した。


「正直に今の気持ちを言うよ。わたしちょっとほっとした、まだ抜かれなさそう」

「実際ブクマ50って超えられるきがしないよ。てか、おれ溺愛のやつ読んでるんだけどさ。優秀な女のDAIMYOUが死んだでしょ? あそこ不自然じゃないかなって。それじゃないの」

「あいつはね……」

 寝ね子(68)はわなわなと震えた。


「わたしのSYOGUNに近づきすぎたのよ。キャラクター設定的にしょうがないんだけど。だからムカついて殺した」

「ええ……。それが理由?」

 そりゃ、自分で作ってるから自分のSYOGUNではあるんだけど。だからと言って。がらんどう(19)は軽く引いた。


「とりあえず70台に戻したいの。なんかいい方法ない?」

「お前がブクマすりゃ返してくれんじゃねえの?」

 肩かいる(9,720)は自分のスマホを操作しながら言った。


「いや、かいる。あれだよ、相互みたいなのは基本だ」

「それは違う!」

 食い気味に寝ね子(68)は言った。


「相互の依頼がだめであって、たまたま、結果的に、そうなった場合は大丈夫だから」


 うわー、結構調べてる感がきついな。がらんどう(19)は曖昧に頷きつつ寝ね子を横目で見た。


「まあわたしは別にやらないし、やるつもりもないけど」

「ここで言ってたって進まねえだろ。自分からしゃぶりにいけよ。そしたら相手もしゃぶってくれるからよお」

「しゃぶ……? は? どういうこと?」


 おれは知らない。聞いてないし、見てない。こんなのはフィクション、創作上の出来事だ。単なる登場人物のセリフだ。おれは相互していない、いまじでやってない。がらんどう(19)は本当のことを呟いた。


「今探してたんだけどよ。こいつなんてどうだ? カクヨムのほうだけどフォローしてる小説1,257って。これ、全部追うのに毎日何時間読めばいいんだよ? レビューのポイントも出しまくってる。なろうでも載せてるからためしにやってみろよ」

「え、でも。そんな急に。だって」

「でもな。お前もブクマなり感想送るならちゃんと読め。最低数話ぐらいは読んで気に入ってからやれよ」


 いいこと言うなあ、それ普通の読者だよ。さすがトップランカー設定だなあ。がらんどう(19)はうんうんと頷く。


「うん。今、開く……」

 寝ね子(68)は送られてきたリンクを開いた。


 数分後、寝ね子(68)は半泣きになりながらスマホを置いた。


「ごめん。わたしできない……。好きでもない知らない人の作品はしゃぶれない……」

「だろうな。じゃあ今から帰って書けよ。それしかないだろ」

 肩かいる(9,722)はジョッキに残っていたビールを飲みほした。


 なにこの時間? どういう流れなの? がらんどう(19)は自分の小説のアクセス解析を確認しつつやり取りが終わるのを待った。


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