表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/53

あたま山

「お、面白れーじゃねえか。お前みたいな面白い奴に会えて、嬉しいぜ。コテッ」

 最後にそう言い残すと、謎の行き倒れは力尽き、それ切り動かなくなった。

【座布団一枚獲得!総座布団数3】

「何だ、本当に死んじまったのか?俺じゃなくて良かった」

「何が俺じゃなくて良かったよ。自分が生きているか死んでいるかの区別もつかないの?」

「あっちの世界じゃ、長年生きた心地がしなかったからなあ」

 無理もない。幸せを感じたことがなければ、生の充実感は得られないのだ。

 それはそうと、もうここには用のない二人である。観音様に旅の無事を願ってから、少しブラブラすることに。

「何かこう、せっかく町に来たんだからな、面白いもんないかな。例えば見世物小屋とか」

「見世物小屋なんて、あんたの世界じゃもう絶滅してたでしょう。それより今夜泊まるところを探すのが先よ」

 単純な与太郎は、美女のキセガワと街歩きをするのが嬉しい。キョロキョロして、お、あいついい女連れてやがるな、なんて思って見てる人がいないかどうかと気になっている。が、そんな人もいないようで、そのうちに小高い丘の上に一本の桜の木が生えているところに出た。今が盛りと満開である。

「へ〜、立派なものね。綺麗だわ」

 感心して見上げるキセガワ。一方、花より団子の与太郎はつまらなさそうにしている。

「桜ってのはな〜。さくらんぼ付ける桜ならいいけど」

「花を愛でるのもいいものよ。あなたにももっと自然の美しさを感じる心を身に付けてほしいわ」

 うっとりと木の元に近寄っていくキセガワ。与太郎もしばらく眺めてはみたものの、興味を惹かれないものはどうしようもない。

(これがイチョウの木だったらな〜)

 どこかにぎんなんでも落ちていないかと下を見る与太郎であったが、無論のこと落ちてはいない。その代わり。

(おや?この地面、何か海藻みたいなもんが生えてるぞ)

 と、そのときである。

「うわおっ」

 ゴゴゴゴゴ…。地面が迫り上がってきて、与太郎はすってんころりん、仰向けに倒れてしまった。

 見上げると、桜の木の下に大きな人の顔があった。小高い丘だと思っていたのは巨人の頭で、なんとそこから桜の木が生えていたのだ。与太郎が海藻だと思ったのは巨人の髪の毛だった。

「キャー、助けてー!」

 キセガワは桜の木に抱きついて必死に落ちまいとしていた。

「キセガワさん!」

「グハハハ。さっきの勝負、見ておったでごんす。お主、面白い奴でごんす。今度はこの儂と勝負するでごんす」

 いきなり妖喜利バトルが始まってしまう。

「キャー、助けてー!」

「くっ、キセガワさん…!」

 妖精に変身して飛んでいけばいいのに、と思う与太郎であった。


【妖喜利バトル】

 キセガワよ。ちょっと動揺しただけよ!べ、別に、ボケてるわけじゃないからねっ(汗)。それより妖喜利バトル行くわよっ。良かったらコメント欄を使って楽しんでみてね。

(お題)

 二度と行きたくないお花見って?

(与太郎の回答)

 一枚花びらが散るたびに、一人ずつ人が消えていくお花見。

 …そして誰もいなくなった。って、ホラーよね。


※あたま山…頭から桜の木が生えてきたというナンセンスな噺。

※ぎんなん…ぎんなん拾いと言えば、笑点でお馴染み三遊亭小遊三師匠。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ