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場所を移して、わたしは新吾に連絡をした。
わたしの小学校及び中学校同窓生の甲木新吾は現在探偵社に勤めていた。
いくら妻から直接話を聞けたといっても、素人のわたしに郁恵の夫の愛人の詳しい情報が掴めるわけがない。
それを、わたしは新吾に頼っているのだった。
わたしに個人的な調査能力があれば、わたしは新吾の勤める探偵社のライバルとなったのだろうが、そうではないので共生関係となっていた。
新吾とは偶然再会してから懐かしさも手伝って数回寝たが、お互いそういう関係には発展しないと気づき、関係はビジネスライクなものに戻っていた。
「まだこんなことやってんの? もう三年になるよ。早く引退した方が良いいじゃない?」
開口一番、新吾はそう言って、わたしを煩がらせた。
そういうところは昔から何も変わっていない。
せっかく旧帝大系の大学を出て役所に勤めたのを一年もしないで辞めて、何の因果か他人の秘密を探る商売をする気になったのか、わたしは知らない。
当然それ相応の理由はあったのだろうが、新吾が話さないので、わたしも訊かない。
だが、彼はわたしの良きパートナーだった。
「じゃ、とにかくコンタクトしよう。事務所にする? それともいつものショットバー……」
「すぐ来れる?」
「温子さんの依頼だからね。それに今ちょうど空いているし……」
「じゃあ、ショットバーで」
「承知いたしました」
新吾が承諾して携帯が切れた。
わたしは深い溜息を吐いた。