第一章・森に紛れる半竜 5
互いに銃口を押し付けあう中、先に動いたのはドゥオの方だった。
ぴたりと頭を狙っていた視線を下へずらし、素早く引き金を引いた。
額めがけて飛んできた銃弾を首を振って回避し、PDWで応戦する。
翼で空気を叩き、後ろへ飛んで回避しながら、標的は忌々し気に舌打ちをした。
そのまま標的は着地し、その場で大きく回転する。その時、何かがこちらめがけて飛んできた。
銃弾で弾いたそれはあらぬ方向へと飛び、爆発した。
(例の小型爆弾か)
爆風によって、一時的に視界がくらむ。その隙に、標的は地面を蹴って接近する。
体勢を低くしたまま踏み込み、速度を乗せた右手の突き。左目を狙って、視界を完全に奪うつもりか。
(甘い)
左手の副武装で突きを弾くと同時に、左膝の蹴りを喰らわす。
標的の身体が派手に吹っ飛び、土まみれになりながら転がった。
銃撃したいところだったが、蹴りの直前に感じた右手の振動がそれを止めた。
PDWを見ると、銃身に穴が開いていた。
あの時、標的はわざわざ銃を左手に持ち替え、突きと同時に銃でPDWを撃ったのだ。もしかしたらそっちが本命だったのかもしれない。このまま撃てば、暴発してこっちが怪我をしただろう。
機能停止したPDWを放り出すのと同時、標的はのろのろと起き上がった。
(持ってきておいて良かった)
左手の副武装に右手を伸ばす。
PDWを持っていたために発揮できなかったその真価が、スラリという音と共に解放される。
幅3.5センチ、刀身は1.2メートルにも及ぶ剣・レイピア。
火器の発達と共に有効性を失い、戦場から消えた刀剣。
銃を相手にするのだから、当然ながらそれを選んだ理由がある。
剣を構え、走り出すのと同時、標的は再び眉間に照準を合わせ、引き金を引いた。
放たれた銃弾を、剣の刃で斬った。
刀身に沿って後方へ飛んだ銃弾の残骸を無視し、さらに踏み込む。
同時に、右手に持った剣で左側から斬り上げる。
斬撃を予知した標的は後ろへ飛んだが、その肉を切った感触を確かに得た。
「成程・・・。見えてる上にそんなものまで用意してるのか」
傷を気にせず、標的は空になったマガジンをリリースしながら左の袖口から替えのマガジンを片手で取り出し、素早く叩き込む。
「出し惜しみは無し。命の限りを尽くそう」
スライドを引き、こちらを見据える標的の眼の光が輝いたように感じた。