少女と学園(2)
なんて広さなんでしょうか、この学園は……
私達が歩き出してから一時間ほどたっているのですが、まだ全ての教室に回れていません。
今のところ
・怪しそうな煙が出ている部屋
・薄着の男性達が固まって叫んでいる部屋
・本を読んで薄気味悪い笑みを浮かべている人が集まった部屋
・藁人形を作り続けている部屋
などなど
「ねぇ、ルージュ、ここって、騎士学園だよね?」
「う、うん多分そう」
「なんか、怖くなってきちゃった」
そんなことを言われたら、私だって怖くなりそうです。
「ねぇねぇ」
「ひあっ!」
「おっ、君可愛い反応するねぇ。今から僕とお茶でもどうだい?」
誰でしょうか、この優男は……
「そっちの紅い髪の子もさぁ、僕ん家伯爵家だからさぁ奢ってあげるよぉ?」
ほう、伯爵家ですか……
「すみませんがお断り致します。侯爵家として伯爵家に奢られる程落ちぶれてはおりませんので」
「なっ、侯爵家!?、これはこれはとんだご無礼を……」
「そういえば、貴方のお名前を聞いておりませんでしたね」
「僕の、いやっ、私の名前は」
「挨拶に行くために屋敷の場所も……」
「すいませんでした!!」
あら、行ってしまいました。
「ルージュって、ちょっと怖いとこあるね」
◇ ◇ ◇
嘘だ。
きっと嘘だ。
あの時のことを私は認めない。
一号も二号も三号も失敗したのに、どうして最後に目を覚ました四号が成功するの?
訳がわからない。
あの時、四号が失敗したら、私が一つ前だったら
棄てられることなんて無かった。
もっと暖かい、ゴミなんかじゃなく、美味しいご飯が食べれた。
生臭い路地で寝ることなんて無かった。
アイツさえいなければ、私は幸せになれた。
「どうして? 私は何もしてない! 悪いことも何にも!」
「どうしてだって? それはねぇ、君には無かったんだ。僕らを惹きつけられる魅力が、価値が、理由が、
全部無かったんだ」
「何しに来たの?」
私はお前らに棄てられた。
今更、私に用なんて無い筈だ。
「君を拾い直しに来たんだ」
「えっ」
何を言われたか分からなかった。拾い直す? 私を?
「そう、君を拾い直しに来た。君に魅力が、価値が、理由が生まれたんだ。さぁ、一緒に来てくれ。
君が望むことをさせてあげよう」
望むこと?
私は、
私は!
「四号を殺したい。アイツの周りをぐちゃぐちゃにしてやりたい!」
「君は、それを望むか……。いいよ! 四号を殺そう! 周りもぐちゃぐちゃにしてやろう!
だけど君は、力がない。だから、僕らがいる。君ならできる! 君なら耐えられるんだ! さぁおいで、
僕と一緒に」
私が、四号を殺す! 周りも全部!
◇ ◇ ◇
「ここが大広間かぁ」
「大きいですねぇ」
あそこに貼られているのが寮の部屋割ですかね。
「ユアン、あっちあっち」
「ルージュと一緒かなぁ?」
さて……
「「一緒ですね(だ)!」」
二人部屋ですか。
ユアンと二人っきり。
ふふ。
「どうしたの? ルージュ?」
「いえ、なにして遊ぼうか考えていただけです」
「そっかぁ」
「行きましょうか」
「うん!」
「やっと、見つけた、四号!」
◇ ◇ ◇
さてと、どう動くのかなぁ?
今は、派手に動くなとは言ったけど、五号が何するかわからないからなぁ。
まぁ、四号が一人になったときにしろって付けたから大丈夫だと思うけど、
「心配だなぁ」
「先生? どうしたんですか?」
「いやいや、なんでもないよ」
けれど、あの力があれば、五号が一つ段階進めてくれる筈だからいいか。
君には、君が思っているより力を入れたんだよ?
だから、
せいぜい足掻いてくれよ?
「不良品?」
二回人物が変更されて読みにくいかもしれませんが、とても書きたかった話なので、どうか許してください。
次回は、男の話なので、ちょっと暗いかもしれないです。