常連の少ない料理店
「…旨かったな。」
「旨いなんてちゃちな言葉でいっていいものじゃない。今回ばかりは自分の学のなさを恨みたいよ。」
「そこまでかよ(笑)、旨いもんは旨いで良いじゃねーか。絶対また来ような。」
「必ず、あの値段でこの味は絶対におかしい、これは人気が出てなかなか食べにこれなくなりそうだけどな。」
「今度帰ってきたらまたあの店行くんだ…」
「何か微妙なフラグだな、逆に死にそうだw」
何ていつも通りの会話をしながら、その日は家に帰った。
それから、仕事に出掛けた俺はあの肉は何だったのか確かめるように獲物を狩っては確かめていた。
ゴブリン系は臭くて食えたものじゃなかった。昆虫系は意外と旨かったがあの店の肉ではなかった。魚人系の敵は惜しかったように感じた。もしかしたら、魚人系の肉に独自の味付けをしたのかもしれない。俺は一人で思っていた。
友は沢山の薬草を見つけ、これで母もなんとかなると安心していた。
久々に来たあの店は、3人の野郎が並んでるだけでそれほど並んではいなかった。
「またあの肉が食えると思うと、生きててよかったと思うよ。」
「そうだな、今回も無事帰ってこれたことに乾杯。」
会話もそこそこに俺達は、食事を楽しんだ。
その知らせは突然やって来た。
「見つけた、早く家に戻ってください。お母さんが危ない!」
そう告げられた、友は状況を理解し始めたのか酒を飲んで赤かった顔も、次第に青くなっていた。
「何突っ立てんだ、早く行け。ここは俺に任せて先に行け。気にすんなここくらいなら俺でもなんとかなる。」
「すまない。」
簡単に礼を言った友は店を急いで出ていった。
「すいません、お騒がせして。お詫びといっちゃ何ですが皆さんおごらせてもらいますね。」
店のなかには、女性客と、先に並んでいた野郎達しかいなかったからそんな大口を叩けた。
友の母は友が駆けつけてから最後は安らかな顔で、亡くなったらしい。
土葬も済み友を慰めるためにまたあの店にやって来た。
誰も並んではいないのですぐに店に入れた。店のなかには一心不乱に肉を食べる女性と野郎しかいなかった。
相変わらず肉は旨かった。
友は涙を流しながら食べていた。食べ終わると立ち上がり店長のとこに行き何か話していた。時おり聞こえる怒号はどちらの声か判別がつかなっかた。
「どうしたんだよ、いきなり。さては、あまりに旨いから肉の正体を聞きに行っていたな?で何だって?」
「わかんなかったよ糞が。金はおいていく、やらなきゃいけないことができた。
悪いが先に帰る。」
それが俺と友との最後の会話だった。
次でラスト