bacon egg。with……?
「もう金輪際、あなたとはあわないから!」
「……はっ! それはコッチの台詞だ!!」
「ちょ……二人とも……。突然どうしたの? 何があったの??」
ツンとして苛立つふたりを取り持つようにして、彼はおどおどしてしまう。
いつもなら、まるで長年付き添った恋人のようにしては熟年の夫婦のようであり、その仲の良さは誰の目から見ても確かなモノであった。
だというのに……一触即発な雰囲気だけが辺りを支配してゆき、面持ちなら無い緊張感が増していったのだ。
最早、止めようもないのだろうか。
今も尚、飛び散る火花は燻り続ける。
平和主義の彼からしてみれば、それはあまりにも好ましくない状況であったのだろう。
観客の視線が気になっているせいでもあったが、楽しんで貰うのを信条としている彼はどうにかして穏便に済ませたかったのであろうか。
互いにそっぽを向いたままのふたりを宥めるように、頭のなかで整理して言葉を選ぶ。
「……一先ず……落ち着こうよ……?」
シンプルに口をついたのは唯の同情だったのか。
だが、その一言が更に彼等に火を着けてしまうとは。
「なんなの!? アンタ、さっきから……いったいどっちの味方なのよ!?」
「そうだ!! お前……大体、いっつもウマイこと纏めようとしやがって……!!」
「いや……そんなつもりは無いんだけど~……」
まさかいっぺんに突き付けられようとは思いもよらず引き下がってしまった。
彼からしてみれば真剣にふたりの仲を取り持つつもりだったのだが、矛先が自分に突き付けられようなどとは……。
しどろもどろになり戸惑うも状況は一切快方へと向かわず、遂に殺気すら感じ己の身すら危うい。
逃げてしまえば楽になるだろう。
しかし、ここは家族団らんの場なのである。
きらびやかな皿に盛られた彼等。
炒られたベーコンと卵を宥めようとするポン酢。
端から覗く醤油は塩コショウ達と決して自分達に関わらぬように、静観を極めていた。
麗らかな朝陽に照らされたテーブルの上で食材達は喧嘩紛いに言い争っていたのであった。
「どうなのよ? ねぇ!?」
「どっちが正しいのか……ハッキリさせろよ!!」
やがて静寂が訪れ、傍観者の胃袋に収まっても言い争いは続いていた。
数刻を経て、完全に消化されるまでは ──……。
御馳走様。
そのひとことに至るまでには、とても人間には想像も及ばない壮大な物語があったのかもしれない。
朝食は、しっかり摂りたいものである。