こっち見んな
俺の名前はチェン。8才だ。職業は想像にお任せする。中国出身で仕事の都合上今は日本に来ている。
毎日欠かさず飯がもらえておまけに寝床まである、なんともありがたい待遇だ。
だがそのぶん仕事は辛い、何が辛いって精神的に辛い。考えてみてほしい。
毎日毎日飽きもせずやっくる日本人(たまに外国人もいるが)に物珍しいそうに好奇の視線にさらされる光景を。
しかしこの仕事をしているやつが他にもいる。最近知り合ったマインちゃんというブラジル出身の子だ。この子は気が荒く縄張り意識が高い。だが自分より上の立場のやつに対してはとても従順だ。他にもライオネルとサーシャがいる。こいつらはアフリカ出身で恋人同士だそうだ。いつも一緒にくっついている、こんな仕事場で女もちとはたいそうご身分のたかいことで。
他に同業者がいるおかげで何とか毎日過ごしている。でもこれが本来の俺たちの姿なのか疑問に思うことがある。
母国には父と母がいて毎日伸び伸びと暮らしていたのにいきなりつれてこられたかと思えば、こんな仕事をしている。別に金がもらえるわけではない。もとより必要ないがな。ただ会えなくなった父と母を思い出すと胸が苦しくて仕方ない。
チクショウ、こんなときでも笹の葉は苦いなんて。早く帰りてえよ。
「ママ、あのパンダさん泣いてるよ?」